第4話 体育の授業
ノーティーは、そのまま淡々と自己紹介を続けた。
「ノーティーです。よろしくお願いします── 」
「おいおい! 『変態』って何なんだ??」
「いちゃいちゃしてるなよ!!」
教室には楽しいヤジが飛んだ。
「── そんなんじゃないわよ!! 真剣なの!! 色々あるのよ!!」
金髪の美少女はヤジに答える。
(色々もねーだろ。お前が勘違いしたんだろ)
そして、ノーティーは校長との約束守ることにした。
「まず言わないといけないんですけど、オレは平民地区出身です」
「…………」
教室が一気に静かになった。
(まあ、こうなるよな。何で校長は、わざわざ言わせたんだよ── )
そして、誰も、ノーティーに声をかけるものはいなくなった。
貴族地区と平民地区に圧倒的格差がある。
教育、インフラ、財力、文化全てにおいて、平民地区は貴族地区に劣っている。
貴族地区の人々にとって、平民地区の人々は、野蛮であり、関わってはならないとされている。
貴族が、平民を利用することは許されるが、貴族地区に平民が入ること、平民と一緒に同じ授業を受けることは前代未聞の出来事なのだ。
「何で── この学校に?」
金髪の美少女は、ノーティーの方ではなく、担任のレイチェルに向かって話しかけた。
「校長の推薦だと聞いている」
「推薦って── 勉強とかできるんですか?」
「1次試験のテストの点はあまり良くなかったが、2次試験の実技ではうまく行って、総合点で受かったようだ」
「そんなの── コネじゃないですか!! ちょっと、何か言いなさいよ!」
(何でも決めつけやがって── まじで面倒だな。一応相手してやるか)
大人しくするという選択肢はノーティーにはなかった。
それが、余計、相手を逆上させることも、人と接する機会の少ない
「なんで、コネだと思い込むのですか?」
「編入試験の実技って、教師陣と戦闘するんでしょ? 平民が勝てるわけないでしょ??」
「別に、オレは弱くない。この学校の教師と戦って、この学校に入っただけです。だから実技で点数が入って合格した。それだけの事だと思いますけど?」
「ありえないは!! ここの先生達は貴族地域の中でも強い!
生徒の私たちが歯がたたないほど優秀な先生達よ!
平民出身のあなたが勝てるわけないでしょ?」
「そう言われても── 」
「大体、あんた何級魔法使いなの??」
「── 何級って── 何の話ですか?」
「ハア── 呆れた ── そんなことも知らないで。貴族地区には魔法使いにランクがあるの! みんな10級から始まって、1級まである。」
「じゃあ、受けたことないから── 10級ってことで── 」
「何それ!! 受けた事ないって── まあ、アルベルト校長はきっと何かお考えがあってあなたを推薦したのかもしれないけど、コネ入学は許せないは」
「何で、コネ入学と決めつけるんですか?」
「わからない?? 校長の推薦って言われれば、試験監督も手を抜かざるを得ないでしょ?」
「まあ── そんな考え方がないこともないですけど。 オレと戦えば、わかると思いますよ? か弱い女の子をボコる趣味はないですけど── 」
「ボコるって── 野蛮ね── そう言うとこよ!!」
「カナニもそこまでにしなさい。適正な手続きだ それに出身地区で決めつけるのは、よくはないぞ」
2人の会話を止めたのは、レイチェルだった。
「── す、すみません── ちょっとムキになってしまいました── 」
金髪美少女の名前は── カナニだった。
(カナニって── ちょっと言い間違えると、下ネタみたいな名前だな── 。そんな『エロエロネーム』つけられれば、性格もこんな感じにもなるか── )
「とりあえず── 座ってくれ── 」
「はい」
レイチェルは、小さな声で、ノーティーに「すまんな」と謝った。
ノーティーの席は、教室の一番後ろの端の席だった。
ノーティーがふと、隣を見ると、電車であったピンク髪の美少女がいた。
「同じ学校だったんだね!!── カナニがごめんね── 」
電車の時と同じく、天使のような笑顔で声をかけた
「私の名前は『スバル』! よろしくねノーティー君!!」
スバルは、周りの目などを気にせず、ノーティーに話しかけた
「よ、よろしく── 」
(本当にいい子だ)
授業は何事もなく始まった。
まずは、座学の授業だった。
教室では、すばるを除き、ノーティーに敵意の視線を向けるものしかいなかった。
勉強をほとんどした事ないノーティーにとっては、レイチェルの言っていることがよくわからなかった。
ただ、大人しく時間が過ぎるのを待つだけであった。
(学校ってクソつまらねーじゃねーか── )
そして、体育の授業の時間になった。
指定された体育着に着替え校庭に向かう
更衣室でも、誰もノーティーにかけるものはいなかった。
体育の授業もレイチェルが担当する。
広い土でできた校庭の上に、端と端に、コンクリートでできた正方形の陣地が2つできていた。
「とりあえず── 男女自由に3人グループを組んでくれ。あと、授業内容について説明する── 」
授業内容は、シンプルなものだった。
各チーム3人。
各チームには、長さは1メートルくらいある、重いクリスタルが配られ、それを
【先に壊した方の勝ち】というものだった。
陣地にクリスタルを置くスペースがあるが、自由に持って逃げることも許される
── と言う内容のものだった。
「── 魔法をうまく使って課題をクリアしてくれ!!
ただし、死に直結する行為は無しだ。危険とみなしたらすぐに中止する」
(グループかよ── 余りはなさそうだしどっかのグループには入れそうだからそれでいいか── )
どんどんとグループが作られていった。
浮いている、ノーティーに向かって、レイチェルが話かけた。
「── すまない。初めての学校なのに」
「別に ──大丈夫です──」
「実力を疑っているわけではないが── たかが授業といえども実力を見せてくれると嬉しい。そうすれば── この状況も変わるかもしれない」
「では、頑張ります── 」
(別に、オレはコイツらに認められなくても困らないんだけど……)
「そういえば、なんの魔法か聞いてもいいか──?」
「え──と──【肉体強化魔法】って感じです」
「そうか──なら、ぜひ、クリスタルを壊してくれ」
レイチェルは、ノーティーを平民地区関係なく、一生徒ととして扱った。
(なんか── 校長に似てるな)
スバルは、ノーティーに声をかけた
「一緒にチーム組まない??」
嬉しかったノーティーだが、これ以上迷惑を掛けられないと言う思いから断るとにした。
「気持ちは嬉しい── けど、これ以上迷惑はかけられないから気にしなくていいよ」
「そんなことないって! ノーティー君はどんな魔法なの?」
「【肉体強化魔法】って考えてくれると嬉しい── 」
「それって、パンチとかが規格外の力出るやつだよね?」
「── ま、そんな感じかな……」
「私の魔法はね【強化魔法】なの。私が今組もうとしている子も攻撃タイプの魔法使いじゃないの──
おせっかいとかじゃなくて、協力してほしいからグループ組まない?」
「オレはいいけど……」
(でも── もう一人のメンバーって── )
「そっか!じゃあ、ちょうどよかった! もう一人呼ぶね!」
スバルが連れてきたのは、カナニだった。
(── だよな── )
「ちょっと!! スバル!! なんで?
「だって、ノーティー君は【身体強化魔法】の使い手なんだよ?
それに今日の課題では、攻撃力必要なの
私たちじゃ、勝てないよ?」
「だからって── 」
「授業は── 授業でしょ?」
「わ、わかったわよ!!── 私の魔法は【治癒魔法】よ。
どんな怪我でも基本的には元通り。
能力は疲れるからあんまり使いたくない。だからあんたを治す気はないから!」
「わかりました。教えてくださりありがとうございました── 」
カナニは、ノーティーと距離をおいて、どこか遠くに行ってしまった。
(── 本当に攻撃力のない2人組だな。さて、どうやって勝つかな── 相手の情報もわからないし。オレ一人ならなんとかなるけど── )
ノーティーが悩んでいると、「相手チームの3人の魔法を知ってる?」とスバルは気を利かせてくれて概要をノーティーに説明した。
まず、身長183センチで体格のいいやつが── 『ジョン』
使う魔法は、【破壊光線】── 手や体から破壊光線を出せる。
飛距離こそないが、破壊力は、クラスで1番。
ジョンの 性格は単純で、何事にも熱血にのぞむ。
俗にいう── 『脳筋』だ。
もう一人の男── 『ケニー』
少し小柄で体も細めである。
魔法は【サイコキネシス】── 念動力で物や人を動かしたりすることができる。
近接格闘戦は弱く、遠距離で物を動かして戦うのが基本スタイル。
最後の女の子は、赤髪のポニーテールのギャル── 『エマ』
太すぎず、細すぎない、引き締まった体をしている。
魔法は、【創造】── 武器、魔道具等、 構造を理解していれば、具現化をすることができる。
そして、エマは、学園史上、最も『天才』と称された頭脳の持ち主であった。
格闘戦闘力は低いものの、記憶力、思考力等、頭脳に関しては、全ての数値が異常に高い人物だった。
スバルの説明を聞いて、ノーティーと2人で作戦を考えることにした。
「結構バランスにとれているチームだね──
特に、エマとケニーって人の相性がいいね。
エマが作った物をケニーが動かしたりできそうだね── 」
「そうだよね。特にケニーは、攻守どっちにも使える能力だし、今回の課題ではそれこそ、【サイコキネシス】でクリスタル動かせられたらアウトだし……」
「── 扱える距離制限とかあるとおもうけど、どのくらい?」
「正確ではないけど── 半径25メートルくらいが限界かな?」
(25メートルも扱えるなんて、結構な魔法使いだな)
「──ケニーって 、他に使える技とか見せてたことある?」
「── 技? 物を操るのしか見たことないよ? なにか気になることでもあるの?」
「いや── なんでもない。気にしないで」
(さすがに、考えすぎか──)
ノーティーは、思いつく中でのベストの作戦を考え、スバルに伝えた。
「でも── それは危険じゃない?」
「オレは── 大丈夫。じゃあ、カナニさんにも伝えておいて── 」
「了解!」
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