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冒険者ライフはギルド登録から!

広大な草原がどこまでも広がり、馬車が時折通り過ぎては砂ぼこりが顔にひらひら舞い上がる。


「うわあああ…どうしよう、聖剣が…それに頭が妙に重いんだけど…」

「はっはっはっは…帰、帰れないんだよ、ははは…あ、蹴らないで?頭痛いのは普通だから。転移のときに体に少し改造が入って、この世界の言葉を頭に“詰め込んだから”ね、ははは…」

「詰め込んだって言うな!」


俺とウナーシャさん(女神)は、大道の脇で頭を抱えてしゃがんでいた。まったく落ち着くわけないだろ!俺のターンが始まるはずだったのに…俺のロン毛傲天プランが!ハーレム&チート&大勝利の夢が!


「いやあああああああ―――!!」

「うわっ!? 何だ急に大声出して!?」


しばらくして少し落ち着くと、「まずは城に行って、状況を整理しようか」ということで意見が一致した。


「おおおっ!初めて見る文字なのに、読める!すごい新鮮な感じがする!変な感じ!」

俺と女神は城門の前に立ち、「レセニア」という町名の掲示を眺めていた。警備の衛兵二人は門のそばに座って、何やら雑談中。


「なあウナーシャ、衛兵めちゃだらけてね?座り込んでるし」

「魔王城から遠くて、新人が集まる街だから、守備ゆるめにするのが普通らしいよ」


そう言いながら、ウナーシャは悠々と城内に歩を進めた。俺は「出入りのチェックとか……ないのか?」という疑問を胸に抱きつつ後に続く。


城に入って目にしたのは――路灯だった。しかも石畳の道。人は歩道を歩き、馬車は車道を通る、と。


「おい、これって中世ヨーロッパじゃなくて、ほぼ現代じゃね?」

錯覚か…?


「ねえねえ、涼介!見て見て!焼き鳥屋だよ!」

「ほんとだ、金たまったら絶対行こう。こっちの焼き鳥ってどうなんだろう?」

「私もわかんない。初めてだし」


道すがら、俺は町並みと通りを行き交う人をキョロキョロ見て回った。

「見て見て!あっちに獣耳娘がいる!おお、これが異世界のリアル獣耳娘か!新鮮すぎる!」


「見た感じ、冒険者っぽいな。装備から前衛かな?」


獣耳娘が本当にいるとは…!すげえ!地球の雑貨屋とかと同じようなのもあるし、100円ショップもあるし。


「おい、そんなに震えながらニヤニヤするなよ…選ばれし転生者あるあるだけどさ」

「ご、ごめん……でもマジで興奮しちゃって……で、次はやっぱり冒険者ギルド行くんだよね?」


俺たちは「レセニア」って名前の町をゆったりと探索しながら、テンション上がりすぎて叫び出したくなっていた。本当に、異世界って実在するんだな!最高かよ!


「そういえばウナーシャ、冒険者ギルドってどうやって行くの?」

「俺も知らんし。初めてだし」


仕方ないので町の冒険者に道を聞くことに。心配なのは、俺が日本語で話しても通じるのか……ってこと。


そして冒険者らしき皮甲姿の人に近づいた。


「おい兄さん、初めまして。俺、佐藤涼介って言う者です。今来たばかりで…すみません、冒険者ギルドってどこですか?」

「おお、新入りか?高いポール見える?あの下にギルドがあるぜ。兄さん、金入ったらビールおごれよな!じゃあな、俺はリアンだ」


話終えるとまたポケットに手を突っ込み、去っていった。


「え…すげえ社交的だな、こいつ」


俺は心の中でそう思ったが、「一杯おごる」義理を背負った俺は苦笑い。


「このギルド、普通に豪邸レベルだな」

「実は二階建てだけどね。なんで驚かなくなったの?」

「関係ねぇよ」


大きな扉を押し開くと――もう圧倒された。中はサッカー場並みに広く、受付、活動エリア、レストランに分かれている。今はランチタイムだろうか。大勢の人が食事中で、何人かが受付で受付中。


「おや、新顔のお二人ですね。どうされましたか?」

制服姿の受付のお姉さんが笑顔で近づいてきた。

「えっと、冒険者になりたいのですが…」

「そうですか。それではこちらへどうぞ」


俺たちは案内されてカウンターへ。


「ジョアンナ、こちらの二人が登録希望だそうです」

「先輩、わかりました。こんにちは!私はレセニアギルド職員のジョアンナです。登録ですね?」

先輩は笑顔のまま離れ、ジョアンナが対応してくれる。


ウナーシャはキョロキョロ。


「はい、冒険者登録したいです」

「かしこまりました。登録料はお一人50ルカです」

「え、持ってます?」

「持ってますけど…使えるか?」


ウナーシャはスカートのポケットから大量のユーロ紙幣を出した。

「………そりゃだめだろ!」

俺、思わずつっこんだ。


「えっと、現地通貨はないんですけど…」

「大丈夫ですよ。冒険者の登録ってお金がない人多いので、報酬から後払いでOKです」

「そうなんですか!じゃ、お願いします!」


人に優しい世界だなと思った。ジョアンナは用紙を渡し、いくつか基本事項を書くように頼んできた。


「初めてなのに文字書けるとかすごいですね!」

俺たちはほぼ無意識に書いてしまう。文字が体に入ってるという感じだ。


書き終えると、ジョアンナは何か機械を取り出した。


「書いていただきありがとうございます。では、こちらに手を置いてください」

ジョアンナは精巧なカードを機械に置き、俺たちに手を当てさせた。


「うわっ!光った!」

手を押しつけると、機械内部の構造がカード上にエンボスされるように見えて……暫くして光が消えた。


取り出したカードには自分の情報とステータスが記されている。右側には「スキル欄」と書かれ、スキルポイントが2と表示されている。でも、「職業を選んでください」と書いてある。


まるでゲームのUIみたいだ……。


ウナーシャが手を置くと、彼女のは金色に光った。

「え、俺の白い……なんでだ……」


「お聞きしますけど、涼介さん、このステータス、平均値超えてる項目が少ないですよ」

「え?」

「涼介さん、知力と魔力量以外、平均以下ですね。器用さ、体力、耐久力などが問題です…。正直、ほとんどの職業に向かないかも」

「マジか…。じゃあ何ができるんです?」

「ありますよ。いわゆる“橋渡し”的な中間職、『冒険者』です。これは誰でもなれる職業で、全職業のスキルが学べます。ただし、スキル獲得に通常の2倍ポイント必要で、レベルも遅いです。ただ、ある程度育ってから転職すれば、スキルがポイントに還元されて有利になります」

なるほど……俺これ選ぶしかないな、と。


「ウナーシャはどの職選ぶの?」

「私?私は“大牧師”よ。女神だし、教会系っぽいじゃん」


さすが女神、即大牧師だ。俺、感心。


「ウナーシャさんって“聖裁のアンビル教団”信者なの?」

ジョアンナが唐突に聞く。

「え?あ、はい、そうです」

「ありがとうございます」


カウンターを離れて食堂に移動。ふたりで次の計画を話しながら座る。


「ねえウナーシャ、『聖裁のアンビル教団』って何なの?それにあなたが女神って言うけど…」

「やめてよ…私はその教団の信仰対象なの。もし『私はその女神です』って言ったら信じてもらえるかな?逮捕されるかもしれないけど」

頬を赤らめながら、


「何でそんな怖い名前なの?」

「子どもたちが『神は対象を裁く、信者はアンビル(鉄床)のように中立で、裁きのときに神の力が爆発する。戦争は神が世界を叩く鍛造だ』って言い出して…。本当は単純に、忙しくて祈り返せなかっただけなのに」


ウナーシャが顔を真っ赤にして、小声で言いながらうつむく。最後は手で顔を隠してうずくまる。


怖すぎる…教団が本気で知ったら俺死ぬかも。


心臓の裏あたりがゾワゾワした。


「で、これからどうする?ウナーシャ?」

「すやすや…」


ウナーシャはこてん、と寝てしまった。


起き上がらずにウナーシャを背負い、俺はギルドを後にした。どうやら無銭冒険者のための廃馬小屋があるらしいと聞いていた俺は、そこに向かうことに。


着くと、それは思っていたより立派だった。複数の区画があり、男女別、そしてカップル部屋まである。馬小屋とは呼べないほど立派で、他の冒険者が住みやすいよう自発的に改装していたのだろう。


誰かの荷物や「使用中」札がある中、俺たちは「空き部屋」を「使用中」に裏返して、その一室に入った。


部屋には窓しかなく、家具は一切なし、完全に床寝なのが正直キツい。


それでも、頭が重くてどうしようもない俺は――決めた。


「もういい。今すぐ寝る!」


そう言って、俺は文字通り床に寝転がったのであった。

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