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休息→警報→大混戦!

今日、警察署の連中が急にバタバタし始めて、俺たち臨時雇いの連中は完全に放置された。だから、いつものようにギルドでサボって、人生を無駄に過ごしてるってわけ。

そういえば、この世界に来てから、妙な孤独感と、なんていうか……奇妙な楽しさが混ざった気持ちが心の中で交錯してる。感情を整理しようとすると、胸がズキズキ痛むんだ。

うわっ、俺、病気なんじゃないか? 明らかに楽しくて、友達もたくさんできたのに、この孤独感は何なんだよ? 息が詰まるようなこの感覚、なんなんだ?

チェリー果実酒を一口飲む。いや、マジで美味いな、これ。ヤバい、ちょっとハマっちゃいそう。恐ろしいことに、酒だぜ? 地球にいた頃は酒なんて飲まなかったのに、この世界に来てから酒に頼るようになってるなんて。

もしパパやママにこんな姿見られたら、間違いなく二人からのボコボコにされるだろうな。

それに、ここの料理もめっちゃ美味い。しかも安い! 地球だったら、こんなの高い西洋レストランでしか出てこないぜ。稼いでも気軽に行けないような場所だ。

明らかに幸せな日々を送ってるのに、この孤独感はなんなんだ? 息ができないくらい重いんだよ。

「ん? 涼介、どうしたんだ? なんかボーッとしてるぞ?」

カールスの心配そうな声に現実に引き戻された。本当はグチを吐きたかったけど、グッとこらえて適当に答えた。

「ん? いや、大丈夫だよ。ただボーっとしてただけ。こんな退屈で平凡な日じゃ、ボーッとするしかないだろ?」

カールスは「まあ、そうだな、確かにめっちゃ退屈だな〜」と笑って同意してくれた。

でも、考えれば考えるほどモヤモヤする。よし、黒崎のアニキに相談してみるか。医者なんだから、なんか分かるかもしれない。

ギルドの大広間は人で賑わってる。クエストを受ける奴、仲間と作戦を話し合う奴、豪快に酒を飲んで飯を食う奴。異世界感がハンパない。

牛肉入りの濃厚なスープを食べ終わって、カールスたちに挨拶してから、俺はそこを後にした。

落ち着く小さな小屋に戻って、床に寝転がりながら住宅情報を眺める。家を買うのも悪くないな。確かにこの改造馬小屋は社交的で、みんなとすぐ会えるけど、やっぱり自分の家の方が落ち着くよな。

頭を空っぽにして、面倒なことは全部放り投げようとしたその瞬間、突然、列塞尼亚の街全体に空気を切り裂くような緊急警報が鳴り響いた。

空から拡声魔法による緊急召集令が響く。

「列塞ニアの街にいるすべての冒険者! ただちに完全武装し、東門に集合してください! 繰り返します! 列塞ニアの街にいるすべての冒険者! ただちに完全武装し、東門に集合してください──!」

その声は雷鳴のようで、耳元で炸裂した。

俺は一瞬で放心状態から飛び起き、まるで氷水をかぶったように覚醒した。考える間もなく、部屋の隅に置いてあった鎧と二本の剣を引っつかみ、急いで装備してドアを押し開け、飛び出した!

通りはすでに大混乱。警報を聞いて慌てて走る冒険者や市民でごった返してる。道端で装備を整える奴、馬小屋に向かって魔獣に乗って集合場所へ急ぐ奴もいる。

途中でカールスたちとすれ違った。

「うわっ! 涼介! 状況見てきてくれ! 俺たちすぐ行くから!」

「了解!」と短く答えて、俺たちは別行動を取った。

東門に息を切らしてたどり着くと、すでに数百人の冒険者が集まっていて、人だかりでごった返してる。雰囲気はピリピリしてて、息が詰まるようだ。

人混みの隙間から、俺は城壁の外を見た。

そこには、まるで黒い潮のような密集した影が、整然と方陣を組んでいた。動かず、まるで人間の壁のよう。でも、それは人間じゃない。あれは……

「ゾンビ……?」

「うわ、なんだよ、このゾンビの数! 何するつもりだよ?」

「分かんねえけど、俺たちだけでこんなの防げるのかよ?」

不安のざわめきが冒険者たちの間で広がっていく。

ゾンビ、異常な出現、整然とした方陣……

「マジかよ! 魔王軍幹部のコスタイが来たんじゃねえか?!」

思わず口に出したら、周りの冒険者たちが一気にパニックに。

「マジかよ! 魔王軍幹部? 列塞ニアなんて初心者の街なのに、なんでこんなとこに来るんだよ!?」

「死霊術師とかじゃね? ハハハ……」

「それ、違いあんのかよ?」

恐怖が冒険者たちの間に広がる中、冒険者としての義務感が俺たちを城門の外へと踏み出させた。軽装のギルド職員が必死に情報を伝え、俺たちを鼓舞してくれる。

次々と武装を終えた冒険者たちが駆けつけ、カールスやユズハたちもやってきた。

ユズハが俺の袖をつかんで聞いてくる。

「何!? 涼介、何が起きてるの!?」

「あの日に会った魔王軍幹部だ。めっちゃヤバいぞ。」

言い終わる前に、ウナシャが礼剣を抜き、剣身に神聖な光をまとわせ、憤怒に満ちた声で叫んだ。

「あの腐臭を放つ不死者! 絶対に私をコケにした仇を討ってやる!」

「いや、ちょっと待て。あの時、アイツ本気でやってたんじゃない? 単にウナシャが強すぎただけじゃね?」

ウナシャの暴言を聞きながら、ゾンビを観察する。妙なことに、こいつら全員鎧を着てる。本体は腐り果ててるのに、鎧はピカピカだ。どこからこんな鎧手に入れたんだ?

長く見てると、精神がガリガリ削られそうだ。

「……さて、みなさん! 追加情報です!」汗だくのギルド職員が、怖がりながらも声を張り上げた。「資料によると、魔王軍幹部のコスタイに近づくほどゾンビの強さが上がります。特にコスタイの側近である『デスナイト』は非常に強力です! ただし、コスタイ本体は非常に弱い! だから、コスタイに近づいたら本体を集中攻撃してください! 皆さん、健闘を祈ります!」

職員はそう言うと、城門の後方へ下がった。

戦術を話し合ってる最中、遠くに八つの巨大な影に囲まれた小さな影が視界に現れた。

あの日のネズミ野郎だ。

しかも、その巨大な影は、ソウル系ゲームのボス級門番レベルだ。

勝てるのか?

「ゴホンゴホン! 愚かな人間ども、えっと……後ろは何だっけ?」

まだ台詞覚えてんのかよ!

「まぁいい、魔王軍の長遠な利益のため、このオレがこのしょぼい初心者街をぶっ潰してやる! 運良く防衛部隊を騙して引き離したから、お前ら雑魚どもは死を覚悟しろよ!」

ネズミ野郎がイキりまくってる中、ウナシャが剣を手に冒険者たちが開けた道を進み、コスタイの前に立ち、剣先を突きつけて、嫌悪感丸出しで叫んだ。

「この負け犬め! よくも私の前に現れたな! 今回こそぶった斬ってやる!」

「な、なんだこの女!? 負け犬だと? 自覚あんのかよ! 100歳の老人を不意打ちして武士道もねえのか! だいたい、前回は作りたてのゾンビでさえお前をボコボコにしただろうが!」

ネズミ野郎はどんどん調子に乗って、ウナシャの顔が真っ黒になるのも気づかずまくし立てる。

「オレには魔王様の加護がある! その加護は部下にも広がるんだ。お前のその三流の技でオレに楯突くなんて、生きるのに飽きたか?」

「ふん、加護があるのはお前だけだと思うなよ! 神の意志を冒涜する暗闇に蠢くクソくらえ! そのタダで付いてきたような目でよーく見な!」

激怒したウナシャは左手を高く掲げ、神聖な魔力が手のひらに集まる。

「『全属性強化』『祝福』『状態異常耐性』『属性保護』『女神の祝福』『神聖属性付与』!」

ウナシャの呪文が終わると、魔力が雨のように冒険者たちに降り注ぎ、身体がほのかに光る。こんな補助魔法をかけられたら、自信が湧いてくるってもんだ。みんな一気に煽りモードに突入。

めっちゃ汚い言葉で罵りまくり、コスタイは血管がブチ切れそうなほどキレてる。

「くそくらえ! 俺の部下ども、やり返せ!」

コスタイがゾンビたちに指示を出すけど、ゾンビたちは頑張ってこう返す。

「うぅぅぅ────」

「ガオオオオ────」

「ガガガガガ────」

SAN値削るような声以外、何のダメージも与えられなかった。

「マジかよ……まあ、声帯が腐りかけてるしな。」

コスタイが絶望した顔で呟く。

その時、ウナシャが俺を引っ張って耳元で囁いた。

「涼介お兄ちゃん、行ってよ! アイツをボコボコに罵って、私のストレス発散させて!」

……は?

「嫌だよ! なんで俺がめっちゃ罵れるって思ったんだよ?」

そう言うと、ウナシャはめっちゃ可愛い表情でこう言った。

「涼介お兄ちゃん、ねえ、助けてよ~」

「ダメ。」

「お願いだよ~」

「うっ、この女……」

ウナシャに耐えきれず、俺は仕方なく前に出た。

「おい! そこの便器シュポシュポみたいなネズミ野郎!」

俺はコスタイを指さして叫んだ。コスタイはショックを受けた顔で、怒り狂って叫び返す。

「……は? てめえ! この野郎、卑劣な不意打ち野郎が!」

「多人数でイキってる負け犬に、俺が紳士的に接してやる必要ねえだろ! 夢でも見てろよ、バーカ!」

コスタイが言い終わる前に即座に反撃したら、めっちゃキレて歯ぎしりしてる。

「それに、便器シュポシュポだと? どうやってそこに結びつけたんだ、クソくらえ!」

「は? 人とも鬼ともつかねえお前を罵るのに、外見から形容詞探す必要ねえだろ! 自覚しろよ、バーカ! ……ぷっ、てか、ネズミ野郎って言っても反応しねえの? まさか……ぷははははは!」

コスタイのキレた叫び声が冷たい空気に炸裂し、怒りが肺をぶち破りそうなくらいだ。

「もういい! 俺のゾンビ下僕ども、こいつらをぶっ潰せ!」

コスタイが枯れ枝みたいな腕を振り下ろすと、背後の死霊軍団が一気に動き出した。腐敗と死の臭いをまき散らし、汚れた静かな波のように城壁に向かって押し寄せる。突撃の叫び声じゃなく、鎧の擦れる不気味な音、腐った肉の引きずる音、空洞の眼窩に燃える不吉な光。

城壁の上では、弓兵たちが弓を引き絞り、弦が蜂の羽音のように震える。魔法使いたちは杖を掲げ、呪文の詠唱が唇の間で響く。次の瞬間、空が裂けた──燃える矢が流星のように降り注ぎ、氷の槍が冬の息吹のように唸り、派手な魔法のエフェクトがゾンビの群れで爆発する。

だが、凡人の兵士なら陣形を崩すような猛攻撃も、不死のクリーチャーにはほとんど効かない。最前列の数体が魔法で焼き尽くされたり、強力な魔法でバラバラにされただけ。ほとんどのゾンビは衝撃でよろめき、鎧がへこみ、腐った肉が飛び散るも、貫かれた矢や焼けた傷を無視して、黙々と城壁の根元に向かって進む。

遠距離攻撃が終わると、近接の俺たちが徐々に前進を始める。

「陣形を死守しろ!」城壁の下で、震えながら涙を流すギルド職員の咆哮が死霊の喧騒を圧した。最前列の盾職冒険者たちが盾で鋼の防壁を作り、槍使いが隙間から鋭く突き刺す。盗賊たちは狡猾な豹のように戦線の端をうろつき、腐臭を放つゾンビの群れの弱点を突こうとする。

剣の輝き、戦槌の鈍い音、叫び声とゾンビのうめき声が交錯し、城壁の下は一瞬で血と混沌の渦と化した。

俺は片手剣を鞘から抜く。カールスたちと視線を交わし、俺たちは楔のようになって戦場の右翼に突っ込んだ。

その瞬間、戦場に蒼白い雷鳴が響く──ウナシャだ。彼女の周囲は純粋で致命的な電光に包まれ、剣を振るうたびに雷が指先から迸る。神聖な力に触れたゾンビは悲鳴を上げる間もなく、白光の中で灰になり、支えを失った冷たい鎧が地面に重く落ち、空洞の音を響かせる。

めっちゃ強い! さすが女神だ。

だが、戦場に気を抜く暇はない。悪臭をまとった影が俺に飛びかかってきた! 錆びた爪が顔を狙う。俺は本能で剣を構え、「ガキン!」という耳障りな音とともに、衝撃で腕がしびれる。格挡の隙をついて、生存本能が全身の力を爆発させ、手首を返すと剣が銀の嵐となり、腐ったゾンビの首を切り裂いた!

剣先が腐った皮と筋肉を切り裂き、骨に深く食い込む。腐り果てたゾンビはまだ突進してくる! 俺は歯を食いしばり、全力で剣を押し下げる! 歯ぎしりするような骨の砕ける音とともに、汚れた首が胴体から離れ、血まみれの泥に重く転がった。

首のない体はまだ本能で俺に迫るが、数歩でバランスを崩し倒れた。

「はぁ──」俺は荒々しく息をつき、腐臭に満ちた空気が喉を焼く。初めて人型生物の首を切り落とした戦慄と血の匂いが、心に重くのしかかる。

ユズハは人群れを縫うように動き、「灼熱の槍」でゾンビの鎧を軽々と貫き、焼き尽くす。

カールスは攻勢を耐え抜き、ランサー、ミエス、リンが彼をサポートしてる!

くそっ! 数が多すぎる!

俺たちの何倍もの数だろ?

戦場の中央は完全にウナシャの独壇場だ。神聖な魔法陣が敵陣で輝き、ゾンビたちは悲鳴を上げる間もなく浄化される。まるで無双ゲームのようだ。

とにかく、側翼以外は順調で、側翼よりも早く進んでる。

戦線が押し進むのを見て、俺たちの士気が高まり、勝利の歓声が上がる。

めっちゃヤバいな、右翼は戦線を維持するだけで精一杯だ。左翼の状況はまだ分からない……

この問題に気づいたのか、ギルド職員が必死に調整し、側翼の人数を補充してくれた。

「くそっ! やっぱりダメか!」

人数は増えたけど、押し込めず防戦一方の状況だ。

その時、ゾンビが咆哮を上げ、混沌の隙間から俺に飛びかかってきた! 腐った爪が喉を狙う! 危機一髪、俺は剣を握り直し、全力で振り下ろし、顎を叩き割った。

骨の砕ける音が響き、剣先が腐った顔の骨に深く食い込む。剣が骨に引っかかる感覚をはっきり感じる。ためらわず、俺は低くうなり、腰の力を込めて剣を上へ引き抜く! 肉と腱の裂ける粘つく音と汚れた血が飛び散り、剣が抜けると同時に、致命的な弧を描いてゾンビの黒ずんだ喉を切り裂いた!

気管が裂け、黒い血が噴き出し、粘液にまみれた白い頸椎が露わになる。首のない体は痙攣しながら前進し、俺は腐臭をこらえ、半歩後退して足場を確保し、剣の角度を調整。体がぶつかる直前、力を込めた横斬りが銀の閃光のように走る!

鋭い剣が頸椎を切り裂き、死にきった首が泥の上を転がる。

息つく暇もなく、次の影が煙の中から現れる。俺は汚れた剣を握り直し、冷たい視線で次のゾンビを睨みつけた。

そいつはすぐそこまで来ていて、口を開け、黒い歯茎をむき出し、腐った皮膚が剥がれ落ち、臭いがすさまじい。

「噛みつこうなんて思うなよ、クソ骨!」

歯を食いしばり、ゾンビが飛びかかる直前、俺は全力で腹に蹴りを叩き込む! 体が大きく揺れ、よろめきながら後退。俺は横から突進し、剣の角度を調整し、全力で振り下ろす!

剣が頭蓋骨を割り、歯ぎしりするような音が響く。ゾンビは目が白くなり、ぐったり倒れた。

「ちっ……くそっ、どんだけ出てくんだよ!」

汗が額を流れ、俺は一瞬の隙に周囲を見回す。ウナシャの戦線は……ちょっと足踏みしてる。進む速度がさっきより遅い。

「……マズいな。」

「涼介! 気をつけろ!」

ランサーの叫び声で思考が引き戻される。俺は咄嗟に頭を下げ、矢が頭皮をかすめて鋭い音を立て、後ろで俺を襲おうとしたゾンビの喉を貫いた。

「うわああ! ビビったじゃねえか!」

ゾンビは喉を射抜かれて倒れ、別の冒険者が剣でトドメを刺す。

俺は急いでランサーたちの近くに寄る。彼らも汗だくで、明らかに体力の限界だ。

「うわ、涼介、大丈夫か!?」

ランサーが息を切らし、額の汗を拭いながら心配そうに聞いてくる。

「大丈夫じゃねえよ! お前の矢で死ぬかと思ったぞ! 助けてくれたのは感謝するけど、次はもうちょっとビビらせないでくれ! 補助魔法あっても耐えきれねえよ。」

軽く冗談めかして言うけど、心臓はまだバクバクだ。

呼吸を整え、俺たちは再び肩を並べて戦場に飛び込む。ゾンビの弱点を少しずつ掴んできたのか、状況が上向いてきた。ゾンビの数が目に見えて減り、腐った死体が地面に散乱し、冒険者たちの叫び声に希望が混じる。

だが──

まさに全てが順調に終わると思ったその瞬間。

「エリートモンスターが湧いてきたか?」って感覚が心にガツンと響いた。

ウナシャの方から、悲鳴と驚きの声が一斉に上がる。

「なんだ……?」

心臓が締め付けられ、振り返ると──すぐに原因が分かった。

重い鉄の鎧に覆われたゾンビたちが戦場に踏み込み、地面が低く震える。目が赤く光り、かつて冒険者のものだった武器を握り、巨大な戦槌を持つ奴までいる。めっちゃヤバい。

「なあ、今すぐこの戦線放棄しようぜ。」

戦線がやっと安定した瞬間、俺はポロっとそんなことを口にした。

空気が一瞬凍りつき、ミエスたちが一斉に「は!?」って顔で俺を見る。

「「「は!? 何!?」」」

「うわ、三重のエコー、めっちゃ揃ってるな。」

俺はため息をつき、手を振って落ち着かせた。

「いやいや、誤解すんなよ。逃げて家でパーティー開こうって話じゃねえよ。戦術的撤退だよ。後ろから敵の頭を叩くんだ。」

俺は戦場の向こうを指す。板金鎧をまとい、怨念に包まれた鉄ゾンビが壁のように立ち塞がるけど、そいつらがまだ本格的に動いてないことに気づいた。まるで何かの合図を待ってるみたいだ。

「考えてもみろよ。あの魔王軍幹部の性格、聞いたことあるだろ? 自信満々でボス気取りの奴ほど、最後にド派手なことやってくるんだよ。」

俺は声を低くして、まるで怪談でも語るように真剣に言ったけど、環境音がうるさすぎて、ビンタくらってから普通の声に戻した。

「俺の予想だと、アイツは最後にあの巨人の鉄缶どもを動かして、圧倒的な力で俺たちを潰そうとする。でも、自信過剰な瞬間こそ、アイツの隙ができる時だ。」

そう言って、俺は首を切るジェスチャーをした。

「後ろに回って、でかい石か木の陰に隠れる。アイツが『行け、俺の親衛隊!』とか叫び始めたら、そこで後ろから突っ込んでアイツを仕留める。」

もう一回首切りジェスチャーをして、指を二本立てる。

「仕留められなくてもいい。一人一発蹴り入れて、俺たちの後方陣地にぶっ飛ばす。前にアイツと少しやり合ったけど、正直、本体は大したことねえ。アイツが鉄ゾンビを指揮できなきゃ、勝ち目はある。」

計画を一気にまくし立てると、みんなしばらく考え込んだ。

「なんか……めっちゃ理にかなってる気がする。」

「だろ? 俺だって頭使う冒険者だぜ?」

「……いつもサボってるイメージしかないけどな。」

「それ、戦術的釣り戦法って言うんだよ。」

短い作戦会議の後、すぐに行動開始。

カールスも連れて、ついでに暇そうな盗賊を何人か引き込んだ。奴らの身のこなしは軽快で、スキルも派手で、潜行術とかめっちゃ使える。こんな時、最高の仲間だ。

盗賊のスキルでコソコソと回り込み、遠距離のランサーとリンは岩の後ろに隠れ、ランサーは軽い笑顔で「OK」のサイン。なんか頼りなさそうに見えるけど、まあ頼りになるはず。リンは杖を握り、ランサーと何か耳打ちしてる。

俺とカールスは斜面の陰に隠れ、半分だけ頭を出して状況を窺う。

「なんか、臭くね? この辺。」

「そりゃそうだろ、さっきゾンビいたとこだぞ。香水でもかけてると思ったか? でも、俺が選んだ場所は綺麗だから安心しろ、四弟。」

疑うカールスが地面を確認し、膿や腐った液体がないことを確認してホッとした。

戦況を冷静に観察するけど、便器シュポシュポ……じゃなくて、ネズミ野郎はまだガッチリ守られてる。もう少し待つしかない。

「シュシュシュ、ソーセージ食うか? 朝買ったばっかだぞ。」

一緒の盗賊の兄貴が牛脂紙に包まれたソーセージを取り出し、四本出して俺たちに振ってみせる。

「おお、ありがと!」

「ソーセージ! 遠征以来だな、ありがとな、兄貴。」

「マジ気前いいな、兄貴。」

礼を言って一本ずつ受け取り、盗賊の兄貴は「へへ」と笑って頭をかく。

「兄貴って呼ばれたら、もう何も言えねえよ。食えよ。」

ソーセージ食いながら戦況見ても進展なし。相変わらずエフェクトが派手に飛び交ってる。

「ゴクゴクゴク。」

カールスが腰の水袋を外して一口飲む。

「俺にも一口くれ。」

ミエスが水袋を奪って飲む。

「全然進まねえな。」

遠くの戦場を見ると、色とりどりのエフェクトが飛び交ってる。

まあ、もう少し待つか。

「ヒマワリの種、食うか?」

カールスがポケットから大量のヒマワリの種を取り出し、聞いてくる。礼を言って少しもらってかじり始める。なんか、良心が少し痛むな。

「そういえば、なんでヒマワリって太陽の方にいつも向くんだ? 不思議だよな。」盗賊の兄貴が急に話題を振ってくる。

「知らねえな。言われてみりゃ、確かに不思議だな。」ミエスが種の殻を草地に吐き出し、真剣に考え込む。

「たぶん……植物の向日性ってやつじゃね?」俺も種をかじりながら、モゴモゴ答える。

そんな感じで、ヒマワリから月、果ては魔物がヒマワリみたいに光魔法使いを追いかけるか、なんて話で盛り上がる。

話がいい感じになってきた瞬間、戦場から変な怪獣の叫び声みたいなのが聞こえてきた。直後、全装備の冒険者が砲弾みたいに飛んできて、俺たちの前の斜面に「ドカン!」と人型の大穴を空けた。土煙が空に舞う。

頭を出して見ると、遠くの戦場で八体のデスナイトが戦場に踏み込み、黒い重鎧が火と光の中で冷たく輝く。武器はキンキンに冷えた刃。そしてその後ろで、俺たちが狙うネズミ野郎が両手を腰に当てて狂ったように笑ってる。天地が分からないくらいイキってる。

デスナイトが戦場に参戦し、ネズミ野郎が一人で笑ってる。チャンスだ!

ランサーに合図を送り、盗賊の兄貴の援護でネズミ野郎に近づく。

十分な距離まで来たら、ランサーにサインを送る。ランサーたちが攻撃開始。

氷柱が飛んできてネズミ野郎の頭に命中、ランサーの二本の矢が膝裏に正確に刺さり、跪かせる。事が急すぎて、ネズミ野郎は状況を把握できてない。

「『<束縛>』!」

盗賊の兄貴が中二全開のポーズで叫び、目がキラキラ光る。まるでBGMが流れてるみたいに、スキルを発動──瞬間、生きてるようなロープがネズミ野郎をガッチリ縛り上げる。ニヘヘヘ、来たぜ!

俺とカールスは目を見合わせ、両側から飛び出す。俺はジャンプしてネズミ野郎の上半身を熊ハグ、カールスは腰をロック。「ニヘヘヘ」と低く唸る。

俺は格闘技の技で首を締め上げ、ネズミ野郎は恐怖で俺をチラ見。俺とカールスは「優しい」笑顔で耳元で悪魔の囁き。

「サプライズ~! 驚いたか~? 予想外だろ? ニヘヘヘヘ~」

「ウェルカム・トゥ・ヘル! 意味分かんねえけど……ニヘヘヘ。」

「や、やめてくれ! そんなことやめてくれ! 近づくなよ!」

ネズミ野郎の声が裏返り、震えまくり。まだ何もしてねえのにこんな慌てるとか、俺たち悪魔じゃねえよ。

「よし! ミエス、やれ!」

「イーヒャハハハハ!」

ミエスが狂ったように笑いながら槍を握り、突進してくる。俺とカールスはジャンプして空中で180度回転、華麗に着地。

うん、満点。観客は拍手していいぞ。

槍の先が容赦なくネズミ野郎の尻に突き刺さり、絶叫の中、ミエスがそいつをぶち上げる。

この絵面、マジでヤバい。笑い死にしそう。

ちょっと苦しそうなミエスが槍を握ってバランスを取る。

「カールス! 涼介! 盗賊の兄貴、助けて!」

「「「来た!」」」

「お前! 何する気だ! バカども! 早く助けろ! やめろよ!」

ネズミ野郎が空中で手足をバタバタさせ、顔が崩壊してる。

俺たちが前に出て、槍の柄を握り、俺たちの後方陣地に向けて軽く振る。声を揃えて!

「「「「3!2!1! 行け!」」」」

最後に力を合わせてネズミ野郎をぶん投げ、そいつの絶叫と鼻水と涙が空中で混ざり合い、完璧な放物線を描く。

うん、ナイス。

「よし! 俺たちも逃げるぞ! あのデカブツが顔に貼りつきそうな距離だぞ!」

ランサーとリンの削り攻撃の援護で、俺たちは這う這うの体で後方陣地に逃げ帰った。

「くそ! みっともねえ! 死ぬかと思った!」

「ハァハァハァ! うわあああ! 家に帰りたい! うわああ! 楽にさせてくれ! うぐぐぐ! やあああ! 近づくなよ!」

逃げ切った俺たちは地面に座って息を整え、ネズミ野郎が剣で斬られ、聖水を頭からかけられ、経文を唱えられながら神聖魔法でボコボコにされてるのを見る。あまりの悲鳴に、聖職者たちが興奮して、叫べば叫ぶほどニヤニヤして怖い笑顔を浮かべる。なんだこれ、めっちゃ残酷じゃん。拷問かよ。

遠くでは、ゾンビの動きが鈍くなり、反応した冒険者たちに追われ、冷たい死体が温かい経験値に変わる。

追いかけてきたデスナイトも、ウナシャの手で首なし死体に。彼女の斬首アクションはまるで高難度の技を披露してるみたいで、いつものウナシャじゃない!

──全然別人だ! これ、人間か!? 覚醒したのか?

残りのゾンビは泥みたいにボコボコにされ、動かなくなった。

最後、ケツに聖水の瓶を突っ込まれたまま地面に突っ伏してるネズミ野郎を放置して、情報を確認し合う。

ウナシャは後方で負傷者の治療と死者の復活をしてる。さすが女神だ。

冒険者たちは経験値稼ぎに喜び、レベルアップした奴も多い。

あれ? ユズハがあそこで突っ立って何やってんだ? 地面に円描いてる?

「ユズハ! こっち来いよ!」

ユズハに手を振ると、彼女はこっちを見て手を振り返し、すぐ来ると言う。何やってんだ、まったく。

「それでは、冒険者の皆様、ご協力ありがとうございました! 討伐報酬をお渡しします! 楽しみにしてください!」

ギルド職員が興奮して言う。こいつ、今日寝れねえな。大手柄だもんな。

ちょっと安心した。

俺は冒険者カードを見て、ポイントが結構溜まってるのに気づく。

「新しいスキルでも覚えるか。」

そんな気分で、助けてくれた盗賊の兄貴に相談。快く教えてくれるってさ。

まず「『<警戒感知>』」。敵意や魔物の気配を感知できる、めっちゃ使える情報スキル。10ポイントと高い。

次に「『<潜行>』」。存在感を消して半透明になるスキル。開けた場所じゃ使えないけど、偵察に便利。こいつも10ポイント。

残りのポイントで「『<狙撃>』」と「『<弓術>』」を覚えて、8ポイント消費。ポイントゼロだよ……

ポイント0を見ると、なんか切ない。俺、なんのポジションだ? 近接? 偵察? 遠距離? 補助? いっそオールラウンダー目指すか?

「まあ、帰ってゆっくり考えるか。」そう思って、カードをポケットにしまう。

突然、背筋が凍るような視線を感じた。まるで冷たい針が背骨に刺さるみたいで、寒気がする。夜道で誰もいないのに、耳元で誰かが息をしてるような感覚。

ゆっくり視線を向けると、案の定、俺だけじゃない。盗賊たちも動きを止め、猫の耳みたいにピクピクしながら同じ方向を睨む。

「なんだ? あそこ、腐生の主とかいう奴のとこじゃね?」

その通り。魔王軍幹部がこんなザコなわけない。後出しの何かがあるはず。

不安を周りに伝えると、遠くから変な音が聞こえてくる。ネズミ野郎の体が妙な動きで膨らみ、縄を破り、どんどん巨大化してる。

慌てた盗賊たちが『<束縛>』を連発するけど、巨大化の速度を遅らせるだけ。魔法使い、弓兵、聖職者が全力で攻撃。ユズハもその中にいる。

雷鳴のような攻撃がネズミ野郎に浴せられる。普通の生物や不死者なら灰すら残らないはず。

煙が晴れると、巨漢のシルエットが現れる。やっぱり! クソくらえの「煙無傷の法則」だ! ふざけんな、この世界!

常識外の光景に、冒険者たちは人生を疑うレベル。吐き出す奴もいる。

「ウハハハハハ! バカども! ボスが二段階目で無敵なの知らねえのか! 見ず知らずの田舎者ども! ハハハハ!」

煙が晴れ、筋肉ムキムキ、輝くような健康的な男が現れる。そして……

「てめえ! なんで二段階目でそんなイケメンになってんだよ! ふざけんな、バーカ!」

あまりのギャップに俺はブチ切れ、指さして罵った。

突っ込むつもりだったけど、誰も止めに来ないから、原地で吠えることにした。

俺を見て、コスタイは少し驚き、狂ったように笑い、体を見せびらかす。

「フフフ、絶対的な筋肉、無比の力……震えな! 恐怖で震えな、蟻ども! この『力』の前では、お前らの『勇気』も『努力』も無意味だ!」

その声は銅鐘を叩く鉄槌のようで、耳が痛い。ムカつくほどイキってる。

中二病全開のコスタイに、冒険者たちが集火するけど、拳で軽く弾くだけで全部防がれる!

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄! ハハハ! 頂点に立つ者だけが知る絶対の力! この絶望を味わえ!」

コスタイが右手を掲げ、ウナシャに倒されたゾンビたちが復活。互いに近づき、肩と肩、骨と肉が溶け合い、瞬時に醜い肉塊が形成される。もはや『怪物』じゃなく、名状しがたい恐怖の集合体だ。

この光景は常識を完全に超え、絶望が広がる。女冒険者たちは視覚的衝撃に耐えきれず、吐きながら倒れる。

俺もマジでヤバい。ゲームで似たようなクリーチャー見たことあるけど、現実で見ると本能的な恐怖がやばい。冷や汗が止まらず、心臓が飛び出しそう。

腐臭が漂い、吐き気がますます強くなる。

ユズハも耐えきれず、地面に手をついて吐いてる。クソ、精神攻撃かよ! 畜生すぎる!

悪口を吐き、剣を握り直すけど、マジで精神汚染だ!

コスタイは俺たちの混乱を見て、完全にイカれたように笑う。

「Wryyyyyyyyyyy! この力! 今までにない感覚だ! ハハハ! 今、歌でも歌いたい気分だ! 不死者になってからこんな気分初めてだ! 蟻を踏み潰す快感か!? めっちゃハイだぜ、ハハハハ!」

コスタイが急に落ち着き、アゴを撫でて考える。

「うむ、『成長』した俺の新しい眷属、なんて呼ぼうか? かっこいい名前がいいな……うーん……」

いい名前を思いついたように大げさに動く。

「よし、『ヒルサゴール(Xyrr’thagor)』だ! いい名前だな! ヒルサゴール、こいつらを殺せ。」

無表情で俺たちを指さす。

その名状しがたい肉塊が一気にこちらに蠢き出す!

俺たちは即座に逃げ出した。俺たちの実力じゃ勝てないと分かってる。場で不死者に一番ダメージを与えられるウナシャは今いない。

逃げる途中、ユズハが立ち尽くして迷ってる。俺は彼女を掴んで城門に引っ張る。

引っ張られたユズハが急に焦る。

「ちょ、待って!」

「待ってじゃねえ! 今はウナシャを探すしかない!」

城門に着くと、人群れが道を空け、ウナシャが現れる。彼女の顔は冷たく、青筋が浮き、青紫の瞳が光り、短い髪が揺れ、神聖な光に包まれる。右手に握る礼剣も神聖な光を放つ。

光が他の冒険者に広がり、触れた冒険者たちが自分の体を見る。

今、ウナシャは完全に女神だ。あとは光輪と翼があれば完璧だ。

そういえば、不死者は天使の宿敵。相容れない存在で、仇敵同士の戦いだ。死ぬまで終わらない戦いか?

そう思う中、ウナシャは力強い足取りで俺の横に来て、微笑む。彼女は視線の中心に立ち、風さえ退ける威厳を放つ。

「よく聞きなさい! 私はあなたたち全員に最強の補助魔法と神聖属性の加護をかけた!」

その声は鐘のように響き、心が熱くなる。

「今のあなたたちは最高の状態! 神を冒涜する者を全て斬り伏せる力がある!」

ウナシャは礼剣を掲げ、コスタイを指す。

「その魔王軍幹部は私が相手する! あなたたちは全力で戦いなさい! 列塞ニアの冒険者でも魔王軍幹部を倒せることを証明して!」

ウナシャの言葉に、冒険者たちは呆然。今日の出来事で心がジェットコースター状態だ。

ウナシャはゆっくりコスタイに向かう。

コスタイは「自ら死にに来る」行為に、軽蔑して言う。

「おお、ホホ、面白い、面白い! 逃げずに腐生の主コスタイに突っ込んでくるとは、死にに来たか!」

「近づかなきゃ、ぶん殴ってクソをひり出させられないだろ。」

ウナシャが殺意を込めて冷たく言う。コスタイに近づき、コスタイも軽蔑しながら近づく。

「おお、もっと近くに来いよ。」

お前ら何する気だよ!

くそ! このままじゃダメだ! あの名状しがたい肉塊は、見た目はまだ精神汚染だけど、さっきの感じは薄れてる。

「み、みんな! 聞いてくれ! えっと……とにかく、突っ込むぞ! 逃げたら一生笑いものだぞ!」

俺何言ってんだ!? 緊張してカッコいい言葉が出てこねえ!

「よく言った! 逃げたら顔向けできねえ! この街は俺たちを助けてくれた! 恩を返さず逃げるなんてありえねえ! 死んでも戦うぜ!」

人群れから叫び声が上がり、火花が油に落ちたように雰囲気が燃え上がる。

「そうだ! この街は俺たちを助けてくれた! 見捨てて逃げるなんてありえねえ!」

「くそくらえ! やるしかねえ!」

男の冒険者たちの目が一気に燃え上がり、殺気と熱血で空気が熱くなる。カールスたちもリン以外、みんな叫んでる。

……あれ? 待て、なんで? みんなくそ叫んでるぞ?

やべ、男の中で俺だけ叫んでねえ、めっちゃダサい……まあいい、適当に叫んで誤魔化すか!

「うわ! 涼介! なんでお前も──って、なんで!? 何この状況! 誰か説明してくれ!」

ユズハが混乱して叫ぶけど、誰も相手にしない。

突然、女冒険者の中で、女戦士が何か感じたように頬を赤らめ、目を燃やして叫ぶ。

「うあああ! その通りだ! この街は俺たちがどん底の時に受け入れてくれた! 助けてくれた! こんな時に逃げるなんてありえねえ!」

その叫びで女冒険者たちが反応し、決意の表情で叫び出す。

「な!? なんでだよ! どういう意味だよ! 私も叫ばなきゃダメ!?」

ユズハの声は混乱の中でかき消される。

俺がげなかったのを見て、ユズハが意外そうに聞いてくる。

「どうして一緒に走らないの?」

「ん?どうして僕が一緒に走るって勘違いしたの?」


逆に聞くと、ユズハはちょっと驚いた顔。

「お前も叫んでたじゃん?」

「叫んだからって、アイツらの意味分かってるわけじゃねえよ。マジで何言ってるか分かんねえ。」

ユズハは「ふぁ」と呟き、俺の服を引っ張って目を見ながら言う。

「じゃあ、私たちも行くぞ。ウナシャに全部持ってかれちゃダメだろ!」

俺は一瞬固まり、ユズハの目を見て「うん、そだな! でないと、俺たちがオマケ扱いされちまう! 行くぞ!」と答えた。

俺とユズハは飛び出した。

冒険者たちが潮のように肉塊を囲み、剣光、矢、魔法が交錯し、爆発と咆哮が響く。熱と血の匂いが戦場に満ちる。

攻撃は命を投げ出す勢い。魔力を全て使い切る者、目が血走って斧を振るう者。

肉塊はひび割れ、焦げ、粘液が飛び散りながらも、寒気を誘う低いうめき声を上げて蠢く。

「な! ユズハ、炎を吹くスキル持ってるか?」

触手を切りながら、背後のユズハに叫ぶ。

彼女は目をパチパチさせて答える。「あるよ? どうした? でもあの魔法、反動がめっちゃ強くて抑えられないんだよね!」

「それでいい! 俺が支える! 最大出力でアイツを灰にしろ!」

ユズハが頷く。俺はリズムを伝え、前方の冒険者に叫ぶ。「どけ! 大技出すぞ!」

人群れが潮が引くように分かれ、肉塊が隙を見つけて奇妙な叫びを上げ、触手を振り回して突進してくる!

俺とユズハは背中合わせでしゃがみ、彼女は杖を地面に突き刺す。魔力が一気に高まる。

ユズハが目を閉じ、急いで詠唱する──

「『<ドラゴンブレス>』!!!」

次の瞬間、杖の先から軍用火炎放射器のような炎が噴き出し、鋭い爆音とともに怪物に襲いかかる。炎は怪物の正面を飲み込み、まるで地獄だ。

熱波が押し寄せ、地面が熱で柔らかくなる。反動で体が後ろに押される!

「な! ユズハ! そっち大丈夫か!? 俺の足、地面削ってるぞ!!」

「もう少し! ちょっと耐えて!」

炎の中で、怪物の外殻が炭化し、ひび割れ、液体が蒸発して白い蒸気が出る。怪物は狂ったように暴れ、轟音を上げる。

やっと動きが鈍くなり、ユズハが魔法を解除し、次の戦点に急ぐ。

同じ戦法を何度も繰り返し、炎が戦場の闇を切り裂く。

最後、ユズハは汗でびしょ濡れ、息を切らして俺の後ろに。

「魔力、どれくらい残ってる?」と聞く。

「……ほとんどない……火銃なら数発……」

めっちゃ魔力持ってるな。今まで持つなんて、天才だろ。

ユズハは力尽きて、俺に寄りかかる。俺は彼女を岩に座らせて休ませる。

視線を他に──ウナシャとコスタイが激突してる!

「無駄無駄無駄無駄! 弱すぎる! これだけか!」

コスタイは防御しながら反撃、動きが速すぎて残像になる! すげえ!

「くそくらえ! くらえ!」

怒ったウナシャが跳び上がり、剣を振り下ろす! 鋼の衝突音が響き、コスタイが右腕で防ぐが、次の瞬間、右腕が飛んだ──完全に切り落とされた!

腕が空中で回転し、ウナシャが冷笑して剣を振る。聖光が瞬き、腕が炎に包まれ灰になる!

「な⁉」

コスタイの瞳が縮こまり、断口を押さえて驚きから恐怖に変わる。

「ふん、再生できないだろ? 断口は私の剣の神聖魔法で焼かれてる。痛いだろ?」

ウナシャの冷たい笑みにゾッとする。

コスタイは断口を押さえ、顔を歪めるが、すぐに冷笑を取り戻す。

「ふん……ならこうだ。」

左手を掲げ、指をナイフのようにする。

俺の瞳が縮む。「マジかよ──」

言い終わる前に、彼は振り下ろす! ガキッ!

右腕の肘を自ら切り、血が噴く。だが、傷口の肉が蠢き、縫合し、一瞬で新品の腕が生える!

「何──! くそくらえ!」

ウナシャの殺気が爆発し、剣を振って突進!

「無駄無駄無駄! 全部無駄!」

コスタイは笑いながら防御し、滑らかに後退。剣の衝突音が響き、火花が散る。

ユズハが無事なのを確認し、俺はウナシャを助けに突進。

戦局は膠着し、ウナシャの剣は嵐のようだが、コスタイを押し返す。だが、剣の動きが一瞬止まった瞬間──

コスタイの目が冷たく光り、一歩踏み出し、左拳を振り上げる!

「ウナシャ! 危ない──!」

警告が間に合わず、拳がウナシャの脇腹に直撃! 衝撃音が銅鐘を叩くよう──ウナシャが吹っ飛ぶ!

「うわ! ウナシャ!」

俺は両腕を広げて受け止めようとするが、衝撃が強すぎてトラックに轢かれたみたいに一緒に倒れる!

「くそ、痛え!」

息を整え、ウナシャを見ると、彼女は気絶してる。胸がゆっくり上下し、愛用の礼剣は折れて半分になってる。

コスタイを見ると、攻撃した腕が手から上腕まで真っ二つ。だが、さっきと違い、再生しない。変だ、絶対変だ。普通ならすぐ再生するはず。再生を阻む何かがあるのか?

今はウナシャを退避させるのが先だ!

俺は折れた礼剣を拾い、消防士の担ぎ方でウナシャを肩に担ぎ、後方へ急ぐ!

「何!?」

殺意を帯びた何かが猛スピードで迫る! 警鈴が鳴り響く! くそ、避ける暇がない! 剣を抜いて振り向き、攻撃を防ぐ!

「ガン!」と一撃、腕がしびれ、剣が飛びそうになる。攻撃してきたのは、切り落とされた腕!? 何この力!

コスタイを一瞥し、迷わずウナシャを担いで逃げる。

勝てるのか!?

安全な場所でウナシャを聖職者に預け、前線に戻ると、コスタイが冒険者たちを一方的に蹂躙してる。

呆然とする中、コスタイが一瞬で冒険者の前に現れ、首を掴んで持ち上げる。冒険者は足をバタバタさせ、コスタイの手首を掴む。

助けにいく前に異変──冒険者の体が硬直し、背中がピンと張り、絶叫する!

数秒後、四肢が力を失い、ぐったり。コスタイは無表情でゴミのようにつまんで地面に投げる。悲しいことに、意識を失った。

周りの冒険者がコスタイから離れる。コスタイの左腕が芽を出し、肉が蠢き、縫合し、一瞬で再生!

なるほど! だからさっき再生しなかったんだ! 再生には「消費」が必要で、さっきは「必要なエネルギー」を吸収してなかった。さっきの冒険者の「エネルギー」を吸って再生した! でも「必要なエネルギー」って何だ? 生命力? 魔力? それとも何か変なもん?

「無駄無駄無駄無駄! 無駄!」

コスタイの咆哮が雷鳴のように響き、残像となって突進!

目的は明白──俺たちを殺す気だ!

考える暇なく、俺は構え、感覚を研ぎ澄ます。頭に浮かぶのは一つの思い──賭ける! 死んでもいい! 一回死んだことあるし!

「涼介! てめえ、頭おかしいか!」

カールスの怒声が横から聞こえるが、誰かに引き止められる。

逃げたいけど、足が地面に縫い付けられたみたいに動かない! くそ!

──来る!

ソウル系のボス戦みたいに、一瞬のガードを決めれば──生き残れる!

警鈴が頭の中で狂ったように鳴る。

コスタイの姿が視界で急拡大、足音が心臓を踏むよう。

目の前に来た瞬間、警報が限界を突破、全身で叫ぶ──極端な危険! 次の一瞬で死ぬ!

咄嗟に剣を調整、本能で振り上げる!

「──!」

鋼の衝突音が剣と柄を伝い、腕が裂けるように痛む!

衝撃で後ろに吹っ飛び、視界がぐるぐる! 目が真っ暗!

気がつくと地面に倒れてる。よろよろ起き上がるが、足がガクガクで跪く。剣を地面に突こうとしたら空振りして転ぶ。体を起こし、剣を見ると、折れてる。

コスタイを見ると、俺を攻撃した手から前腕まで肉が削がれてる。

まあ、悪くないな、へへ。

「お前!」

コスタイが俺の首を掴んで持ち上げる。まさか……

「代償を払え!」

言葉と同時に、魔力が猛烈な勢いで吸い取られる!

「うわああああああ!」

くそ、めっちゃキツい! 血が一気に抜かれる感覚!

「涼介!」

怒号が響き、コスタイの腕が切り落とされ、自身も吹っ飛ぶ!

「涼介! 大丈夫か!?」

ウナシャが心配そうに見る。俺はOKサインで安心させる。

もう少し遅かったら、さっきの冒険者みたいに吸い尽くされてたか?

「分かった! コスタイに魔力を吸らせなきゃ、再生能力を封じられる!」

周りに叫ぶと、みんな後退し、ウナシャが頷き、俺を支えて後方へ。

ユズハが杖を振って叫ぶ。

「こっち来て!」

仲間を信じ、ユズハの元へ。ウナシャの戦力で他の冒険者もついてくる。

ユズハの所に着き、折れた剣を鞘に収め、布で包んだ予備の剣を出す。ダブルソードを試したかったけど、忘れてた。さっき転ばなきゃ思い出さなかったな。

へへ。

「くそ! 白毛のガキ! てめえ何者だ!? 最強のあのクソ密会の教皇だってこんなタフじゃねえぞ!」

マジか! 地雷踏みまくりだ!

ゆっくりウナシャをチラ見。やべ、顔が青ざめ、額の青筋がピクピク、目が赤く燃え、コスタイを睨む。拳の指が白くなり、恐ろしい音。胸が激しく上下し、獣のような唸り声。

「は? てめえ、もう一回言ってみろ?」

コスタイは死にたがりみたいに続ける。

「は? まだガキの分際で、どこにそんな力があるんだよ?」

「てめえの母ちゃん食らえ! ぶっ殺してやる! 生皮剥いでやる!」

ウナシャが飛び出すが、ユズハに腰をガッチリ抱かれる。

「ダメだ! 涼介、助けて!」

「言われなくても分かってる!」

俺はウナシャをロック! くそ、めっちゃ力強い!

「ホホ、動かないならこっちから行くぜ!」

コスタイが地面を蹴って「飛んで」くる!

近づいた瞬間、ユズハが指をさして宣言。

「コスタイ! 周囲半径20メートルは私の魔法陣で覆われてる!」

「何⁉」

コスタイが驚き、急ブレーキ!

「半径20メートルの魔法陣攻撃、くらえ!」

「バカか! 攻撃範囲教えるなよ!」

思わず突っ込むと、ユズハが赤くなり、コスタイが笑って後ろに跳ぶ。

「フフ、確かに! 20メートル外に逃げた! 愚かだ──ブッ!」

火銃が顔に当たり、空中で回転。

さらに火魔法がコスタイを襲い、焼かれながら絶叫。

「フフフ、愚かだと? 誰が愚かなんだ? 20メートルって言ったら20メートルだと思うか? 愚か者!」

ユズハがポーズを決め、自信満々に言う。俺をチラッと見て「それと、お前も……」と呟く。

聞こえたぞ。

「な、早く行け。もう持たない。終わらせろ。」

ユズハが力尽きて倒れる。魔力切れか。

俺はウナシャを放すと、彼女は矢のようにコスタイに突進。俺も続く。

接近して、ずっと言いたかった台詞を叫ぶ!

「くらえ! 俺たちの熱血コンビネーションだ!」

「中二すぎるけど、まあそんな感じ! くらえ!」

ウナシャが剣を振り、コスタイの防御を粉砕し、隙を作る。

俺の剣が続き、燃える肌を切り裂く。瞬間、剣から緑、黄、青の眩い炎が迸り、体を切り裂く!

「何!? 何だこの力!?」

腰を斬られたコスタイが信じられない顔で、よろめきながら後退。

緑の炎を見て、俺も一瞬呆然。

……これ、どうやって消すんだ?

「涼介! ボーッとするな! 早くトドメ刺せ!」

ユズハの声で我に返り、ウナシャとコスタイに近づく。

追い詰められたコスタイが絶叫。

「近づくな!!!」

だがウナシャは容赦なく、連続突きでコスタイを蜂の巣にし、倒れる!

「涼介! 早く終わらせろ! 私の剣じゃ殺せない!」

俺は前に出て、首を狙い、剣を振り上げる!

「腐生の主の俺が! 新人に負けるはずがない! 不公平だ!」

悲憤に満ちたコスタイが俺を見る。うん、これが遺言だ!

「死んでも一人道連れだ!」

全力で剣を振り下ろす瞬間、視界が後ろに飛び、地面に落ちる。

変だ、下半身が感じない。首が痛い。

喋れない、痛い、目が暗い……まさか、俺……

視界が暗くなり、意識が消えた……

最近ちょっと忙しくて更新できませんでした!本当に申し訳ありません!ごめんなさい!この投稿のあと、すぐに更新します!

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