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利人 vs 現代妖怪

 両目のない状態で帰ってきたろくろ首を見て、利人はオールバックにした髪をかき上げ、眉を寄せる。

「……目玉がくり抜かれている以外に外傷はない。しかも、さっき見た限りだと彼女は首を三メートル近く上に伸ばした状態で索敵していた。そんな高所に到達して目玉だけをピンポイントで攻撃するなんて現実的には難しい。つまり、これは物理攻撃ではなく、呪力や妖力によるものと考えた方が正しいだろうな。恐ろしい能力だ。ここは相手の出方を伺おう!」

 一瞬で分析を済ませて自身が率いるゾンビモンスター集団に待てをかける。


 しかし、相手は向こうからやってきた。


 お猿の電車だ。

 先頭には大きなつばの帽子をかぶった巨大な女性、その後ろには六本腕で下半身が大蛇の巫女が乗っている。

 ネットで語られる現代妖怪たちだ。


 利人は警戒心をマックスにして矢継ぎ早に指示を始める。

「フランケンが前に出て壁になって! 相手が攻撃を始めそうになったらバックベアードが睨みを利かせて眩暈を起こさせて、メデューサの石化! そしたらオペラ座の怪人が蹴り倒して粉砕して。魔女は後方支援ね」

 さっき仲間になったばかりの西洋妖怪たちに役割を与える。そこで俺は初めて名前を知る。


 利人の指示が終わってすぐくらいに、お猿の電車から帽子の大女が飛び出してくる。

「バックベアード!」

 鋭く叫ぶ利人。

 指示通り大きな目玉を内包した黒い球体が前に出る――が、そのまま落下して、白目を剥いてしまう。

「……ぽぽぽぽぽ……」

 何かと思ったら、大女が何か白い布みたいなものを右手でぶんぶん振り回している。

「ヤバい、くねくねだ! あれを見ると発狂するから、絶対に見ないで!」

 そんな危険な代物を、そんな、湘南乃風みたいに。

 呆れと恐れ半分半分で見ていると、大女はそのくねくねを投げ飛ばし、それはフランケンの顔面にバチンとぶつかって落ちる。

 瞬間、泡を吹いて卒倒するフランケン。


 『何やってんの! 全員、突っ込んで!』


 利人の声。

 いや違う。

 今のは利人が言った言葉ではない。

 だけどみんなは気が付かない。

 怪人もメデューサも魔女も、ついでに愛理と口裂け女も敵方に突っ込んでしまう。


「は!? 違う違う! 今の指示は僕じゃない! 戻って!」


 慌てて利人が言うが、もう遅い。


「次は、えぐり出し~えぐり出し~」


 お猿電車のアナウンス。

 瞬間、突っ込んでいった面々の眼球が、一斉にポンと弾け飛ぶ。

 これだ。

 ろくろ首は、これにやられたのだ。


「うう、お猿さんのお目目ぐりぐり、凄いデス……」


 眼窩を空にされた愛理が呻く。結構余裕あるな。


『目がなくても攻撃出来るでしょ! どんどん攻撃して!』


 また、利人ではない利人の声。

 今、目の前にいる帽子の大女の口が動いたのが見えた。


「だから違う! 今のはこの大女――八尺様が、僕の声音を真似て言ったんだ! コイツは自由に声音を変える能力がある! 騙されないで!」


 利人が注意喚起するが、それも遅かった。

 目を失ったメデューサがそれでも一矢報いようと目の前の存在に対して石化攻撃を仕掛ける。

 だが、彼女の目の前にいたのは、二宮金次郎像。

 八尺様が突き出したそれは元々が石像で、つまり石化は通用しない。

「ぽぽぽぽぽ」

 逆に、金次郎像が手にした石の本で思い切り横っ面を叩かれ、ゾンビメデューサの首は千切れて飛んで転がる。

 続いて前に出たのは、魔女だ。

 目が見えないなりに何とか攻撃を通そうと、杖を突き出して高速で何やら詠唱している。


 だが、その杖を持つ右手が、吹き飛ばされる。


 魔女だけではない。

 愛理も口裂け女もオペラ座の怪人も、その時に前に出ていた全員の右腕か左腕が吹き飛ぶ。


 その後ろで、六本腕の大蛇巫女がゆらゆらと揺れている。


 コイツが、やったのか。


 おタカさんが首を捩じ切るように、この異形の巫女は目の前にいる存在の片腕を吹き飛ばす能力があるらしい。


「クソォ! 一体一体がおタカさん並みの呪力を持っているだとォ!? こんなの、どうやって攻略すりゃいいんだよォォォ!」


 利人が吼える。

 

 だが、次の瞬間、その顔が満面の笑みへと変わる。


「な~んてね」


 無言で腕を振る。

 すると、後ろで控えていた猩々と河童、雪女、桃や半魚人と言った面々が前に出て、一斉に飛び散った眼球や片腕を拾い集めてそれを失ったモンスターにあてがってやる。

 それで、一度は失われた体の機能は、回復する。

「君たちは誰を相手にしていると思ってるんだい!? 僕らはねェ、ゾンビなんだよ! 何度でも蘇るさ! もういい! 全員前に出ろ! 総動員だ!」

 GOをかける利人。

 そこからは混戦だった。

 現代妖怪軍は強力な呪力で何度も体の一部を弾き飛ばしたり意識を失わせたりするが、すぐに後ろのゾンビモンスターが簡単に治癒をして代わりに前に出る。

 文字通りのゾンビアタックだ。

 目を瞑った猩々がくねくねを引き千切り、復活したフランケンが金次郎像を殴って粉砕する。

「ぽぽぽー!」

 少年好きらしい八尺様は憤慨し、フランケンに跳び膝蹴りをかまして着地と同時に長い右足を伸ばして回転して足払い、からの帽子を手で押さえながらのローリングソバット。猩々とフランケン共々何メートルも先に蹴り飛ばす。大柄な二人だが、八尺様は更に大きい。二メートル半はあるのではないだろうか。それに加えて足技を主体にした徒手空拳も強いのだから、これはおタカさんの上位互換と言っても過言ではないだろう。

 後ろから桃が生首杏子を投擲するが、それを八尺様はハイキックで蹴り返す。

 が、蹴った後の一瞬の隙に鬼の首が飛んできて、八尺様を大きな帽子の上から咬みつく。

「ぽ――」

 次の瞬間、どこかから小さな木箱が飛んできて八尺様を咬む鬼の首に当たる。

 落ちた木の箱からどす黒いオーラが巻き起こり、鬼の首は血反吐を吐き出してその場に落下する。

 見ると、向こうで六本腕の巫女が投擲のポーズをしている。

 この木箱を投げたのは彼女らしい。

「それ、コトリバコ! 最強の呪物だから近付かないで!」

 利人の言葉。

 後ろでは復活した愛理がオペラ座の怪人から何やらいくつもの武器を受け取っている。

 何本ものナイフだ。

 彼女はそれを斜め上に、一斉に投擲する。


「誰かの体に刺さるカナ!」


 誰かの心に刺さるかなみたいに言うな。

 でもそれは実際に八尺様と巫女に刺さり、僅かに怯む。

 そこに飛び込む半魚人。

「次は、ひき肉、ひき肉です~」

 お猿電車のアナウンスに、半魚人は空中でミンチにされる。

 だがバラバラに崩れる半魚人の背後から白い旋風が巻き起こり、お猿電車は凍結する。

 雪女が吐いた息を天狗が葉団扇で仰いで増幅させたのだ。

 口裂け女は一瞬の隙をついて八尺様の懐に入り込んで喉元を掻き切る。

 続いて河童に体丸ごと投擲された愛理は空中できりもみ回転しながら巫女に何度も爪攻撃を炸裂させ、六本の腕全てを切り落とす。


「――君、暗い女だねェ……」


 いつの間に移動したのか、腕を切り落とされた巫女の背後に利人が立っている。

 巫女の目玉がぐりん、と動く。

 初めて見せた、怯えの表情。

 体が動かないらしい。

 背後では杖を前に突き出した魔女ゾンビ。動きを止める魔法をかけたのか。

「だけど、暗い女はいい女だよっ!」

 そう叫び、巫女の首を絞める。

 ずっと狙っていたんだろう。

 すぐに顔が鬱血してむくみ、泡を吹いて意識を失う。


 あんなに強かった現代妖怪軍を、連携とゾンビアタックで倒してしまった。

 もちろん、倒した後のモンスターを咬むのも忘れない。

 お猿電車や二宮金次郎像、呪物の類は咬みようがないようだけど。


「いやぁ、強い強い。流石ですね」


 パチパチと拍手しながら、能天気な声が響く。


 鮫島村長が現れたのだ。

貞子vs伽椰子(2016) 監督:白石晃士 主演:七海エリー


#容態急変(成人音声作品のため詳細は割愛)

#何度でも蘇るさ

#誰かの心に刺さるかな

#ひき肉です

#マツコとadoの会話(暗い女はいい女よ)



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