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スイッチ Freaky PM7:00

 絶叫はいつまでも続いていたかのように感じたが、実際には一瞬だったのだろう。

 目の前でキャパオーバーの合成鮫が盛大に弾け、古賀は慟哭の声を上げた。


 めぐみ――と、彼は振り絞るように叫んだ。


 サメの名はメグだった筈。

 怪訝に思う俺たちの前に、一人の男が姿を現す。


「残念でしたね」


 高級スーツを身に纏った狐顔の男・鮫島村長だ。

「テ、テメエ、祠の陰に隠れて見てやがったのか……」

 メグに渾身の霊力を叩きこんだ寺生は、その場で膝を付いて喘ぐような声を出す。

 全ての霊力を使い切ったのだろう。よく見ると髪も白髪混じりになっている。

「当たり前じゃないですか。特等席での観戦は主催者の特権ですよ? 私はね、常に自分が捕食者で狩る側だと己惚(うぬぼ)れているサイコパス達の情けない姿が見たいんです。烏滸(おこ)がましいじゃないですか、人間じゃないくせに人間みたいに振舞って。自分が強く賢くスマートで特別な存在なのだと驕り高ぶった連中が無様に散り逝く様を垣間見るのは、どんな快楽も及びません。セックスよりもドラッグよりも気持ちのいいエクスタシーが、そこにあるんですよ」

「今すぐ動物園に行ってチンパンジーに会ってこい。その時チンパンジーは初めて『外道』と話すだろうヨ」

 寺生の罵倒にも、村長は肩を竦めるだけ。何を言っても無駄だ。

「めぐみって、誰ですか」

 利人がついさっき皆が思った疑問を代表して口にする。

「ああ、それはこの古賀さんの娘の名ですよ」

 何でもないことのように口にする。

 かつて古賀には離れて暮らす恵美という愛娘がいて、不慮の水難事故で亡くしたこと。

 その事故に追いやったのが映研の先輩たちで、その連中が下衆な外道だと知ったこと。

 真実を明らかにしようとしたが上手くいかず、酒に溺れて、精神の均衡を失ったこと。

 ついにはその先輩連中をピエロ姿で皆殺し、この山まで逃れて行き倒れになったこと。

 介抱した鮫島村長の提案で祠の管理人になり、その後で暴食鮫と引き合わされたこと。

 かつてサメ映画を偏愛していた娘を暴食鮫と同一視して、カスタムに励んでいたこと。

 それらのことを必要最低限の言葉で簡潔に説明する。

「だから、彼にとっては二度娘さんを亡くしたことになるんでしょうねえ……可哀想に」

 全く感情のこもらない声で村長は言う。

 悲しきピエロは慟哭の声も絶えて無言でその場に蹲っている。

 そんな彼に、村長は肩に手をかけ、語りかける。

「貴方の苦労をずっと見ていましたよ。本当によく頑張りましたね? だけど、貴方は負けた。これまでの苦労は全て水の泡です。唯一の希望であった暴食鮫はもういないのです。でもね――世界中が貴方を否定しても私だけは貴方を承認します。散々苦しんだんです、もう楽になりましょうよ」


 全て――壊してしまいましょう。


「もういいでしょう。こんな世界、どうなっても。あなたが執着したモノはなくなってしまったんです。いえ、壊されてしまったんです。目の前の彼らによって。もうどうでもいいじゃないですか。貴方も、貴方を取り巻く全ても、壊れて無くなるべきです。いいですか。私の合図で、そこの祠を壊してください。そして現れた者にこう命じるのです。『全部壊せ』と――」


 何を。


 何を言ってるんだ、この男は。


 とんでもないことを言っているのは、愚鈍な俺にだってよく分かる。


 イカれ女と評されたあの月宮愛理だって、巨大コングに祠群には近寄らないように釘を刺していたのだ。


 それを、この男は。


「うう、ああ……」

 すぐ止めないと。

 だけど、身体は強張ってうまく動かないし、舌も縺れてうまく喋れない。

 伸ばした手の先で、古賀は立ち上がり。


「ア ハ ハ ハ ハ !」


 狂ったような馬鹿笑い。


「アハハハハ! ハハ! ハハハハハハ! ア! 流れ星! みんな死にますように! ハハハハハ! オイラはサメ人間! 正義の執行者! アハハハハ!」

 完全に気が違ってしまった。

 村長がスイッチを押したのだ。

 そして。

 世界も自分も分からなくなった悲しきピエロは指定の祠を、破壊した。

ザ・スイッチ(2020) 監督:クリストファー・B・ランドン 主演:ヴィンス・ヴォーン


#〇〇の情けない写真ください

#『地面師たち』よりハリソン山中語録②

#山田ボールペン構文

#ゴールドタイガー

#オタク敬具②(あ、流れ星 全員死にますように)

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