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巨大な顎 Jaws

 俺はパニックになっていた。

 サメが襲ってくるのは分かる。

 古賀が出てきた時点でそれは予期していたし、奴自身が言ったようにいきなりサメを襲わせるような卑怯な真似はせず、ちゃんと宣言はしてくれた。だけど問題はそこじゃない。

「な、なんで如月を喰った!? 仲間じゃなかったのかよ!?」

「勘違いしないでほしいんだけどさ」

 鬼殺しをチュウチュウ飲みながら道化師姿の古賀は続ける。

「オイラたちはお互い仲間だなんて思ってないよ。利害が一致してたから一緒に行動してただけ」

「利害が一致していたなら積極的に殺すこともないですよね」

 利人が口を挟む。

「つまり、貴方にとって如月さんをサメに捕食させることが『利』になったということだ――もしかして、如月さんが『呪力無効』のスキルを得たと知ったから、ですか。古賀さん、そのスキルをくれよと仰いましたよね。そしてその直後にサメに食わせた。()()()()()()()()()()()()()――そういう特性が、貴方のサメにはある、と」

「眼鏡のお兄ちゃんは勘がいいねえ。正解。それがこのメグ――暴食鮫(グラトニー・シャーク)の特性だ。ま、それが分かったところで何だって話だけどねえっ!」

 ピエロが吠えたその瞬間、おタカさんが立っている地面に彼女を中心として丸く大きな影が落ちる。

「おタカさん、来るぞッ!」

 寺生が叫ぶのと同時に地面に大きな穴が開く。鋭い歯とピンク色の口腔が見えたかと思うと、バグッと鈍い音を立てて真上に向けて口が閉ざされ、そのまま真下に下がって地中に消える。

 さっき如月が食べられたのと同じだ。

 その直前、おタカさんは近くの式紙に飛び込んでギリギリ捕食を回避したようだけど……。

「……一応、出る寸前に影が出るって予備動作はあるみてェだが、ギリギリだな。式紙があるおタカさんだから何とかなったけど、東野やオレらじゃ気付いてから避けるのはムリだぞ」

「おタカさんだって近くに式紙が落ちてないと難しいですよ」

 眉間に皺を寄せる寺生に対して、利人も顔を歪ませて言う。

 と、言ってるそばから周りが不意に暗くなる。

 俺は利人の首根っこを掴んで精一杯横っ飛びする。

 いつの間にか傍にいたおタカさんも寺生の腕を掴んで前方に大跳躍。

 次の瞬間、俺たちがいた場所にサメの大顎が現れる。

「オラァッ!」

 寺生がずっと持ったままだった手斧を地中に沈む前のサメに投擲する。方角的に確実に当たると思われたが――外れた。

 手斧が当たりそうになった瞬間、五〇センチ程度までにサイズを小さくしたからだ。

 随分可愛くなった閉じた顎を真上に向けたサメはそのままスルスルと地中に姿を消していく。

「小さくなった⁉︎」

「寺生さん、あのサメはすでに複数のスキル待ちです。淡水で泳ぐ、捕食対象に向かって飛びかかる、地中移動、サイズ可変、瞬間移動――これらのスキルが祠を壊して出てきた時点で確認されています」

「ってことは、もうその時点でいくつかのモンスターを捕食してたってことじゃねえか! 古賀! ルール違反じゃねェのかそれ!」

 俺は何の疑問も持たずに『やたら色んなことができるチートなサメ』だと思っていたのだけど、それはゲーム開始時点で様々なモンスターを捕食し、スキルを奪った結果だったらしい。

 

「ゲーム開始前までに手持ちのモンスターを育てちゃいけないなんてルールはねえよバカヤロウ! これが管理人特権ってやつだよ!」

「……え、でも、俺らが見た時は祠に封印されてた筈なんですけど」

「別におかしかねえよ」答えたのは寺生だ。「祠壊して召喚して、捕食してスキル奪って、その後でまた祠に封印し直せばいい。すでに手持ちモンスターなら素直に言うこと聞くし、手順さえ覚えれば封印の作業自体はそんなに難しくない」

 モンスター封印というのは俺らが思っていたよりずっとカジュアルなモノだったらしい。

「……今の杉原の話からすると、淡水・飛びかかりは殺人ピラニア、地中移動はサンドワーム、サイズ可変はスライム、瞬間移動はメリーさんってところか」

 この山に封印されているモンスターを全て暗記している、こう見えてデータキャラの寺生がスラスラと捕食されたであろうスキルの主を挙げていく。

「それに如月の『呪力無効』も加わったってことかーー杉原、どうするよ?」

「……ここは一旦引きましょう。今はまだ何も打開策が思い浮かばない」

「そうか。なら二手に別れよう。オレはちょっと試してみたいことがある」

 そう言った次の瞬間、俺たちの足元に大きな影。

 さっきと同じように素早く真横に跳躍して地中から真上への捕食アタックを避ける。

 寺生とおタカさんはその場にとどまったが、俺は利人と共にかつて来た道を戻る。ついさっき上り切ったばかりの石段だ。さっきは濃霧でろくに先が見通せなかったが、今は霧が晴れ、逆に日が暮れかけているが夕闇の中でもはっきりと見える。

 見えた――のだけど。

 

「そんなに慌ててどこ行くんデス?」


 石段の影から飛び出てきた彼女は、見えなかった。

 俺たちが逃げ出すと分かっていて待ち構えていたのだろう。

 左手の鉤爪から、血が滴り落ちている。

 数瞬して――俺の首が、切れて落ちた。

ジョーズ(1975) 監督:スティーブン・スピルバーグ 主演:ロイ・シャイダー

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