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祓魔師 The Exorcist

 数分後、倒れ伏したコングの体の上に乗って、切断した巨大な頭部を掲げるおタカさんの姿があった。

 

「アアアアアアアアアアアアー!」

 

 それは必ずやらないといけないのか。

 格闘ゲームにおける勝利ポーズみたいなものなのかもしれない。

「いやぁ、鬼神の如き戦いぶりでしたね」

 その様を見ながら利人が漏らす。俺は透明人間を齧るのに必死で見られなかったのだが、彼女は手斧と鉤爪という変則二刀流で空中乱舞を見せ、目と口と鼻を瞬間的に高速で滅多切りにしたらしい。鬼神というか鬼人だ、それは。

「鬼神、か――まあ『鬼』の語義は死者の魂とも言われてるし、怨霊であるおタカさんには当たらずとも遠からずだわなァ」

 マスターである寺生も得意気である。

 言われている当の本人はと言えば、手斧と鉤爪を脇に置いて、自分の移動手段に使われた俺の右腕を所定の場所に戻そうとしている。

 肩の切断面に、腕の切断面を合わせて強く押す。

 そんな折れた人形の部位を接着剤でくっつけるみたいに――と思ったが、不思議とそれでくっ付いてしまう。

 右腕も、普通に動かせる。

 俺が何か言おうとした瞬間、視界の隅で動きがあった。

 愛理だ。


「奪還デス!」


 大きな声でそう言って、おタカさんが横に置いておいた手斧と鉤爪を一緒に掴んでダッシュで戻る。

 手斧は如月の横に置き、鉤爪は瞬時に左手に装着する。


 「モー! オニーサン達それ次やったらマジで〝これ〟デスヨー!?」


 そう言って、右手で何かを抱きかかえ、その下から立てた鉤爪を高速で上下させる愛理。

 そのジェスチャーの意味は分からないが、とにかくとてつもなく恐ろしいことをされるらしい。

 一方の如月はと言えば、無言で拳を握りしめて地面を睨みつけている。

「……オメェは手斧拾わなくていいのか」

「こんなもの!」

 寺生の言葉に如月は激昂し、足元の手斧を横に蹴りつけ、スーツの懐から何かを取り出す。

「僕にはこれがある!」


 十字架だった。


 首から下げる小さな物ではなく、長い方が二〇センチほどもある、黒色で重厚感のあるかなり立派なものだ。

「僕は霊能力者ですよ! だったら、霊力勝負です!」

「は? オメェが直接おタカさんと戦うの? 祠、まだ沢山あンじゃねェか」

「いいんです。今の二戦で雑魚モンスターは当てにならないと分かった。結局信用できるのは自分の実力だけですからね! 言っておきますけど、僕に川町孝子の呪力――首切りは通用しませんよ! 貴方は馬鹿にするけど、僕だってれっきとした霊能力一族の代表者だ。何週間もかけて解析して、川町孝子の呪力を無効化できるようになったんです! 覚悟の準備をしておいて下さい!」

 息巻く如月の後ろで、愛理は地面に四つん這いになって裏の白い式紙にマジックで何か書いている。寺生に苦情入れていたくせに、自分も人の物盗って落書きしているようだ。

「……一つ提案があンだけどさ――もうやめねェか? 何でこんなことやってンだよ。そりゃオレらみたいに拉致られてゲームに強制参加させられて人間は生きて帰るために仕方なく戦ってるけど、オメェらはそうじゃねェだろ。鮫島の手下なんだから戦わずとも生還は約束されてンだろうし、祠モンスターに愛着もねェみてェだから()()()()が目的とも思えねェ。殺し合いなんて虚しいだろ」

「何言ってんデスカ! 最高じゃナイデスカ!」

 愛理が口を挟む。

「生身同士の戦い、イイジャナイデスカ! もちろん全力で抵抗シマスヨ! 爪で! あ、愛理からも提案があるんデスケド、愛理の可愛いとこ挙げてってクダサイヨ! ゼロなら首だけど、三個ならお腹、五個なら太もも、十個なら手足って感じで切り刻む箇所を変えてあげマス!」

 そう言ってさっきから書いていた落書きを見せる。

 そこには棒人間の身体の至る所に点線が引かれていて、それぞれにハートと数字が併記されている。いいねの数で切り取る箇所を決めるXの絵師か。

「……とまあ、このイカレ女みたいに純粋に人体破壊が趣味って訳でもねェんだよな?」

「当たり前でしょうが!」

 これまでで一番の大声を出す若手霊能力者。曲がりなりにも仲間だろ、と思ったが言われた愛理は更に落書きを続けている。

「何を描いているんだ?」思わず尋ねるが、彼女からの返答はない。「――何を描いてるんだ!?」

「これデス」

 彼女が見せた絵――さっきの点線で分断された棒人間の周りに、三人のバラバラ死体が描かれている。かなり簡略化されているが、それは俺と利人と寺生の三人に違いがなかった。

「えっと、僕たちはなんでバラバラにされてるの?」

 利人が至極当然の疑問を口にする。

「そうだったらいいなって」

「ふーん、君は絵が上手いね」

 流した!

 まあ、ここは流すのが正解なのだろう。


 一方で、霊能者同士の小競り合いは続いている。

「僕はね! アンタが執心してるこの怨霊を完膚なきまでに叩きのめして灰燼に帰させて、それでアンタが泣き叫んで白目向いて横転して顔がなくなってる様が見たかったんだ! その上でアンタを嬲り殺しにする予定だった! もう少しでうまくいくと思ったのに! 何もかもうまくいかない! もう、アンタを直接()るしかないだろ!」

「……如月、オレはさ」

 真っ赤になって怒鳴り散らす如月に対し、寺生は静かに語り始める。

「こう見えても、オメェのことは高く評価してたンだよ。まあやり方の違いで対立はしてるし、こんな性格だから意地の悪いことは色々と言うけどサ、それでもオメェ個人のことはそれほど悪く思っていなかった。だから時間をかけてお互い妥協点を擦り合わせて、和解ってか、寺生家と如月家で協力する未来もアリかなと思ってたんだけど……そうか」

 頭をボリボリとかきながら、寺生は如月に一歩近づく。

 咄嗟に、体の前に十字架を構える如月。

「ち、近寄るな!」

「ひでェな……悲しいじゃん。そんなにオレが憎いか? そんなにオレを殺したい? 何で? オレが寺生の人間だから? そんな憎悪と殺意マシマシで向かってこられたらサ、オレだって友好的って訳にはいかねェよ」


 もう殺すしかなくなっちゃったよ。


 数瞬前まで振った女に泣いて縋るヘタレ男みたいな顔をしていたのが一転、冷酷な極道のような顔つきに変わる。

 

「う……うわあああああああああああああああ!」


 十字架を構える如月の腕に力が入る。


 パァン。


 乾いた発砲音が響く。

 銃声!?

 何で!?

 よく見ると、如月が構える十字架の先端には銃口が空いていて、そこから煙が上がっている。

 さらに、如月の手元部分にはトリガーのようなものが見える。

「十字架型の仕込み銃か」

 利人が、ポツリと呟く。


 ガクリと、寺生が膝をついた。 

エクソシスト(1973) 監督:ウィリアム・フリードキン 主演:リンダ・ブレア


#お前それ次やったらマジで〝これ〟だからな

#ワザップジョルノ(覚悟の準備をしておいてください)

#拳で抵抗する21歳

#いいねRT切り取り線

#無言のアナキンを見て笑顔が消えるパドメ「……どんな絵を描いているの!?」

#「そうだったらいいなって」「ふーん、きみは絵がうまい!」

#白目・横転・顔ない(Xで頻出の強調表現)

#さよならプロポーズのユウ君(俺が○○だから?)

#龍が如く0の佐川司(殺すしかなくなっちゃったよ)

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