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気のいいおにいさんがヤンデレになるとは聞いてない!  作者: 夜星 灯
おにいさん、ヤンデレの片鱗が見えてます
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じゃれあいと新たな釣り…?

 

「……?」


 なんとなく視線を感じて、意識が浮上した。ふわふわとした眠気がまとわりつくのを振り払うように、ぱちりぱちりとまばたきを繰り返す。そうすると、視界の真ん中にキラキラと輝いている光が見えた。その光はまるで水面に夕焼けが反射しているかのような、少しだけ赤みのある黄金色で。不思議と視線が吸い寄せられるような、妖しい魅力を持っていた。その綺麗な光に惹かれるがまま手を伸ばす。もう少しで手が届く、そう思ったときそっと手が優しい力で掴まれた。掴まれた手は導かれるようにして、何かにぺたりと触れる。そのほのかに温かく滑らかな感触を掌で感じて、あれ?と疑問に思ったところで、ゆっくりと穏やかな声が問いかけてきた。


「どうした、寝ぼけているのか?」


 その言葉の後、くつくつと喉の奥で笑うような声が聞こえてきて。ようやく視界からの情報を脳が処理し始めた。キラキラと輝いている光は朱羅の瞳で、ぺたりと触れたのは朱羅の頬。温かくて少しだけ硬さのある、私とは違う絶妙な手触りの頬に触れている。それがわかった途端、慌てて手を離そうとしたのに。朱羅の手はそれを許してはくれなくて。


「おはよう、朱羅。えーと…その、手をね、離してくれると嬉しいんだけど……」

「華から触れてきたのに?」

「それはそ……ん?えっ、朱羅が触らせたんだよね?」

「なんだ、気がついていたのか」


 それはそうなんだけど、と頷きかけて、何かがおかしいと言葉を途中で止める。その理由を考えようとする前に、触れあう手の温かさのおかげで、手を優しく引かれた感触を思い出して。私から触れたわけではないとはっきり思い出して、慌てて否定する。朱羅は始めからからかうつもりだったらしくて、笑いながら私の目元をくすぐるように撫でた。


「流石にあれだけ泣いて冷やさなかったら腫れるな。冷やせるものを持ってこよう。まあ、そういう顔も可愛くていいと思うが」

「またそうやってからかう〜!!!」

「からかってるつもりはないんだがな。それと、俺の前以外ではあんなに泣くなよ。嫉妬する」


 さらりと衝撃的なことを告げた朱羅は、言葉の通り冷やすものを取りに行ってくれたらしい。衝撃に固まる私をよそに、サッと襖を開けて部屋から出て行って。私が冷静な思考を取り戻す前に戻ってきた。


「は、やいね?」

「式がいるからな」


 動揺したまま声をかけると、朱羅はひとつ頷いて。冷えすぎないようにタオルで包んだ氷嚢を差し出してくれた。受け取ったそれを目元に当てると、腫れているせいでまだかすかに熱を持っていたまぶたがひんやりと冷やされていくのが心地よくて、ほうっと息を吐く。


「きもちよさそうだな」

「ちょうどいい感じの温度だから、すごいきもちいいよ。ありがとう」

「どういたしまして」


 冷やしているせいで暗い視界の中、朱羅が近くに来る気配を感じたのだけれど、それが思ったよりも近くて。そう感じるのは、目が塞がれているせいかな、なんて思っていたのだけれど。そっと目元から布をずらすと、呼吸すら感じられるような距離で私を見ている朱羅と目があった。


「近くない?」

「そうだな」


 離れてくれと言外に伝えたのに、朱羅は言葉にしていない部分をわざと受け取ってくれなくて。ならばと私がずりずり後ろに下がると、そのぶん朱羅が詰めてくる。


「なになになに?」

「華に逃げられると追いたくなる」

「ひぇ。だって綺麗な顔が近いんだもん」


 動揺のあまり声に出したきもちは、しっかりと朱羅に届いて。朱羅は私が動揺しているのがわかっているのに、さらに追い詰めるようなことを言って、嗜虐的な笑みを浮かべてさらに距離を詰めてくる。


「ここまででストップ!終わり!」


 耐えきれなくなってそう叫ぶと、朱羅は渋々私から退いてはくれたのだけれど。それはそうとして、私の心臓は静まってはくれなくて。


「えーと、とりあえず今日は何する?!」

「釣りでもしに行くか?川の用意が整ったから、釣りはできるようになった。ただいつもの川じゃないから、華の見たことのない魔魚が釣れる」

「まぎょ」

「ああ、魔魚だ」


 魔魚、魔魚とは?混乱している私をよそに、朱羅は今日は釣りをする気分になったようで。いそいそと支度を始めていく。いつも使っている釣り竿ともう一本見たことのない釣り竿が荷物に追加されたのが最後で、準備はすべて終わったらしい。手を繋いで、廊下から外へと歩き出した。


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