新たな問題
「ありゃ。その反応を見るに、どうやら吾の勘違いみたいだ」
蘇芳さんは自分の予想が外れてしまったのが意外だったのか、目をぱちぱちさせてから、しょんぼりと残念そうに呟く。
その綺麗な顔立ちに悲壮感が漂っているのが、罪悪感を煽るようで。なんだか期待に添えなかったことが、申し訳ないようなきもちになってくる。
けれど、朱羅にはその手は効果がないようで、ムスッとした顔でそっぽを向きながら、ぼそりと言葉を落とす。
「余計なお世話だ」
「またまた〜!この間、吾がいないとどうしたらいいかわからないって言ってたの誰だっけな〜〜?!」
そっぽを向いた朱羅の頬を、蘇芳さんがにやにやとした笑みを浮かべながら、指先でツンツンとつつく。それをうっとうしそうに見つめた朱羅は、まるでその指に噛みつくかのようにグアっと口を大きく開けて威嚇した。
「ウワ!すっっごい遅いけど反抗期!?」
「ハァ……。蘇芳と話していると、話が進む気がしない」
「ありがとう!」
「褒めてないからな!!それで、何のようだ?」
少し疲れた表情で要件を問いただした朱羅に、何の用事で来たのか一瞬で忘れたらしい蘇芳さんは、視線を左右に泳がせて。そうして数秒後、ポンと手を叩いた。
「えーと……ああ!そうそう、そうだった!きみたちがいた神有村ね、いま大変なことになってるよ」
おちゃらけていた態度から一転して、蘇芳さんが真面目なトーンで言う。少し前に天邪鬼について聞いていた私は、途端に不安に駆られて。
「まさか天邪鬼ですか!?」
そう問いかけながら体を朱羅の膝から乗り出すと、朱羅は無言で落ちないように私を支えた。朱羅は安定した動きで私の体勢を固定すると、軽く背中をポンポンと叩いてきて。それは言葉に出さなくても、落ちないように気をつけろと言われているかのようだった。その様子を微笑ましそうに目を細めて見つめた蘇芳さんは、ゆるりと首を横に振る。
「それはもう朱羅が解決したよ。あっという間に一捻りさ」
それはそれで気になる話なのだけれど。
詳しいことはあとで朱羅に聞けばいいかな、と思い直す。その他に考えられる、村で起こり得る問題なんて雪ちゃんと利市さんが原因のものなんだろうくらいしか考えられなかったのだけれど。今度はどっちが問題を起こしたのかなあと辟易している私の耳に飛び込んできた言葉は、あまりにも予想外のものだった。
「だけど、今度の問題は人間ちゃん。きみだよ」




