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第1話 太陽が昇らない世界
神話の世界では、太陽は東から昇り西から沈むって言われてるらしいけど、俺はそんなの見た事が無い。
そもそも、太陽すらまともに見た記憶が無かった。
この世界は、
俺が生まれた時から太陽がなかった世界で、
これからも、そんな太陽を見る事は叶わないんだろう。
深淵の海に浮かんでいるこの世界、アーク・ライズには先がない。
それは……未来が存在しない、行き詰まった世界という意味だ。
なぜならこの世界は、蝕という化け物の脅威にさらされていて、人間が住める地域は日ごと小さくなっていっているのだから。
まだ平和だった時からみなおしてみると、それからどれくらいの人間が減っただろうか分かる。
その時の人類の総数の、十分の一すら生き残っていない。
だから俺達には、滅びゆく世界と運命を共にする道しか残されていないのだ。
それでも死ぬわけにはいかない。
俺達は、俺達が生きる事を許された小さな居場所を守りながら、懸命に生き続けていた。