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<--異世界観測媒体☆日本人☆ミューテーション-->(仮題)(旧題:魔王を倒してサヨウナラ)  作者: nanasino
序章 『 初見の異世界 』

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第24話 『 大好きな異世界 』




『…俺じゃん……』



ワタルリは確かに彼女らに召喚されていた。

 異世界召喚〜という割には何の演出的派手味の無い、ただ黒い人影が現れただけの瞬間だった。

 でもいつその人影が円陣の中に立ったのか解らなくて異様な余韻が空間に残り、何か時間に間が差し込まれたような━━━とでもいうような、問答無用の現象の怪異に魔法少女達は顔が凍りついたように無表情になっている。


 召喚されたワタルリが「あ…」と己の気づきを知らせる声を漏らすと、魔法少女達の顔顔に警戒の色が走った。

 3人の魔法少女はすでに繋いだ手を離して手足を微妙に構えている。



「アグロ下がって反撃 キンジは撤収魔法」

(召喚魔法か━━━ウチがこいつら守る)



「……?」

(…??なんて言ってるかわからん…)



「召喚魔法だったっすか…人間…かな?」

(ヤバイ魔法じゃなくてよかった…チャッキを落ち着かせるっす)


「アグロ下がって…」

(チャッキのいうこと聞けよマジで)



 3人の緊張が伝わってか生前ワタルリも動かず、4人は膠着状態となって暗闇で動かない。

 やがて黒髪のアグロが懐から出した小杖を構えつつそっと茶髪のチャッキの真後ろに立って囁いた。

「(人間のガキじゃないすか?いつでも殺せるから大丈夫っす)」

 チャッキという少女はアグロの言葉にいちいち答えず無言でいるが、その両手は袖の中に隠れており怪しげな動きをしている。

(初動を封じる…瞬間触手召喚。いつでもいける)

 チャッキはどうも物騒な生物をこの場に召喚して生前ワタルリを捕らえるつもりのような思考が見える。”触手”と言うとエロ漫画で見るようなアレだろう。そういうイメージも幽霊ワタルリには何となく伝わってきて分かる。だがそんなものでワタルリを縛っても誰も得しない。やられなくてよかった。

 金髪のキンジーは2人の後方で変なことをしている。足元に置いた派手な図柄のカードを右足で踏んで片足で立ち、両手は仲間2人のマントの裾を摘んでいる。

(神様!神様!)

 キンジーはとても怖がりのようで、祈る気持ちで2人の無事を彼女らの神という存在に願っているようだ。



『━━━━━………この子ら…ヤバイな……』



 これらの様相を眺めている幽霊ワタルリは彼女らの緊迫した様子に驚くやら感心するやら、何だか必死な感じがして申し訳なくなってきた。自分の登場でこんなに少女達が怯えているという絵面はショッキングである。

 というか、小さな少女達がこんなに命を危ぶんでいる様子というのはなんだか異様な感じだ。この少女達は本当に、何者なんだろう。この異世界でどう生きているんだろう。


 彼女らの姿を見ているのは面白い。

 しかし、ここまで見てきて分かったことに幽霊ワタルリは少なからずガッカリしている。

 どうも魔法少女達はワタルリを意図して召喚したわけではない様子なのだ。彼女らはもともと床に描かれていた魔法陣を触っただけということのようである。何か目的を持って異世界召喚を企てたとかそういう事ではないようであった。

 誰が何のために、どうやってワタルリを異世界召喚したかということは謎が深まってしまったのである。



『この子らが犯人じゃないなら、ここで見てても仕方ないんだけど…』



 幽霊ワタルリが求める情報、元の世界に帰ることにつながりそうな何かが無いのであれば他を見に行ったほうがいいだろう。

 ただ、彼女らの会話の中に気になる点があってワタルリは引っかかっている。



 ━━━━━魔王━━━━━━━━━━━魔王マンション?



 そう聞こえたはずだ。

 魔王といえば悪い奴に決まっているのである。この異世界には魔王がいるのか。じゃあやっぱり最低な世界だ。

 最低な世界にいる最悪な魔王。そいつならめちゃくちゃなことをするはずである。

 その魔王の根城みたいなのがここだと言うなら、ワタルリを異世界召喚させたのはその魔王ではないのか。



『どんな奴だ…あの蟹の悪魔みたいなのよりヤバイんかな…』



 暗澹たる気持ちになったワタルリはなんとなく部屋を見渡した。

 この部屋自体は素朴な作りだが、さっき大規模な戦場をも見てきた感じでは建物の規模はそう小さくはない。ちょっとした城廓に近い外観に見えたと思う。といってもワタルリは日本の大阪城くらいしかみたことがないから、まあ大きさ的に例えるなら県庁庁舎くらいの大きさといえようか。ここにバケモノみたいな魔王とかがたくさんいるという割には閑散とした印象があるが、どうなんだろう。


 魔王がいるという、この異世界が殺し合いしまくってるヤバすぎる世界だと言うことは色々見たから分かる。

 だが、それはワタルリの元いた世界でも人間達は凄まじい殺し合いをしているので同じだ。ワタルリは日本で生活していてそんな大勢が殺し合うなんて事態を見たことがないが、人間が人間を殺す殺し合いそのものは地球に毎秒発生しているだろう。

 残虐な殺し合いのある世界という意味では、この異世界が特殊というわけでもない。


 しかし魔王である。日本には中世、魔王を自称した織田信長という人間が実在した。他にも神社仏閣などを見ても魔王と名のつく存在は色々ある。それらは古代から中世にかけての異常な殺し合いが多かった時代の名残だろう。━━━とワタルリは思っている。

 つまり魔王がいるから世の中に異常に大規模な殺し合いが起こるのだ。日本からは消えた魔王が、この異世界には存在する━━━━━と。そう妄想するワタルリはなぜか段々ムカついてきている。



『ぜってぇ俺の召喚も魔王が犯人やろ。魔王が俺をなんのために…異世界人使って、何か悪いこと考えてるんか?…俺を使って…殺したり生き返らせたりして……ムカつくわぁ。どんなやつや?この城のどこか探せば…━━━━━━━━ん?』



 ━━━━━生き返らせて?


 そういえば俺の死体が2つあったってことは、一度生き返ってる


 いつ、どうやって生き返った?



 いまさらな疑問に気が付いたワタルリは目を点にして立っていたが、辺りにピンク色の煙が漂っているのに気づいてギョッとした。

 怪しげに輝くピンク色の煙━━━この状況は既視感がある。そういえばもう1人、というか1匹というか、この場にはまだ登場人物がいたのだ。



「ニャ〜オス」



 魔法少女達が呼んだ化け猫ニボシ。

 猫にしては大きめすぎるピンク色のそいつは二本足で立って魔法少女達に向き合い話している。



『そうだった。あのピンク色のネコ…』



 生前の様相がまさにそのまま繰り返されている。

 まさかもう一度目にするとは思わなかったが、なんとも太々(ふてぶて)しい風貌の猫だ。ピンク色のくせに偉そうなやつである。

 化け猫ニボシは生前のワタルリに近づいて睥睨すると契約を迫った。

 


『ニャム…この世界では其方の言葉は…そうさな、ほぼ通じぬ。故に、先々何かと不便があろう。吾輩と契約せよ。言葉を授けん』

 


 これは今見ていても契約する気持ちになんてならない。

 ただ、ワタルリは思うのだ。



 ━━━━━ここで、もしこの化け猫と契約してたら、どうなってたんだろ


 言葉がわかったら、この魔法少女と何か楽しげな異世界の冒険が始まったんじゃないか


 地下室で虐殺されることなんてなかったんじゃないか



 そう思うと、取り返しのつかない事をした気持ちが湧いてきてワタルリはめちゃくちゃ辛くなった。

 こんな記憶最悪だと思ってしまうのだ。

 見ていても嫌な気分になるだけで。


 この化け猫はなんのために存在するんだろう、何を考えているんだろう、と思って見ているワタルリは苦々しい気持ちでいるが、ここにも疑問がある。

 なぜか、化け猫ニボシの言葉の裏の思考や気持ちが読み取れないのだ。

 ワタルリは思い出した。この内面に蓋がされてるのを見るような感覚は、死神姉さんやネコミミくんとかと同じ違和感だ。

 幽霊でいるときのワタルリには生きた人間達の思考や内心がわかるというのに、魔獣っぽいヒステリックランドラーの心すら分かったというのに、彼らは何か存在感そのものが違う違和感がある。恐ろしくて、人間とは違う、線引きされた向こうに在る別の存在━━━━━価値観の違う、分かり合うことの出来ない心の隔絶を予感させるものが。



 理解できない存在。

 理解できない世界。

 何も知らない自分。

 ワタルリは世界に突き放された気分になった。



『……………………』



 それから幽霊ワタルリは記憶世界を見ているのかいないのか、黙っているだけだった。

 記憶の世界は過去の様相をそのままなぞって再現され、部屋には生前ワタルリと幽霊ワタルリの実質異世界ぼっちになった。


 魔法少女達は化け猫が去ってから自分たちが逃げ去るまでの間にぺちゃくちゃと騒がしく話し合っていて、今の最悪な気分のワタルリには全部耳障りなだけだった。彼女らは何か色々なことを言っていたが全然頭に入ってこなかった。

 てっきり魔法少女達がワタルリを異世界召喚した犯人で、全てを知っていると思っていたのに。

 


『結局、これ…意味なかったな。…こいつを見てても意味ないし…』



 幽霊ワタルリが見ていると、部屋に残った生前ワタルリは手燭の灯りを取って通路へ出てゆく。

 あのままあいつは殺されに行くのだ。

 それなのに生前ワタルリはダンジョンでも探検するかのようにちょっとワクワクしている。チープなスリルに身を委ねてテンションが上がっている。怖いけど楽しいのだ。それは幽霊として見ているワタルリにも改めてわかるからムカついてくる。

情けない、頼りない、ムカつく気持ち。あんなのが自分なのか。ただのアホやん。

 生前のワタルリについて行ってまた悪夢を見る意味はないし嫌だ。



『バイバイ俺』



 幽霊ワタルリは生前ワタルリの背を追うのを止めた。

 生前ワタルリは1人、暗い通路を手燭で仄かに照らして恐る恐る歩いて行って、やがて見えなくなった。


 幽霊ワタルリはすすり泣いた。

 自分を見捨てた気持ちがすごい生々しい実感があって辛かったのだ。

 自分自身とお別れした気持ちになって、なんだか本当に自分は死んだんだなと実感が湧いてきた。

 幽霊になるってこういう意味なのかもなと思う。



『こいよ、お迎え…今がいいタイミングだろうが……あの世…連れてけ………』



 死を深く自覚した幽霊に本当の”お迎え”が来るとしたら今じゃないのか。

 あんな蟹の悪魔みたいな化け物とは違う、ワタルリにふさわしい”お迎え”がくるはずだろう。

 ワタルリは蹲って涙をこぼしながら、周りをチラチラ見ている。

 けど誰もこない。

 ”縁のあるお迎え”というのは結局、ワタルリには来なかったのだ。

 ワタルリは本当にこの異世界でボッチだった。


 それはそうかもしれない。

 ワタルリはうすうす分かっていた。

 魂をあの世に連れて行ってくれるほどの”縁あるお迎え”なんて、そんなに縁のある誰かなんて、異世界に来たばかりのワタルリには1人もいないのだ。


 元の地球世界とも隔絶しているから自分の先祖だかジジイやババアが迎えにくる事も出来ないだろう。てゆうかそんな本当に死んでしまうのは嫌だ。

 ワタルリはまだ17歳、映えあるセブンティーンである自分がセックスもせずに死ぬなんて考えられない。

 まだ何ほども人生を楽しんでいない。

 

 ワタルリはこの異世界に来て何ほども生きていない。

 なんの冒険もしてない。

 仲間なんて1人もいない。

 何も知らない。この異世界のことを。

 来てすぐ虐殺されただけで。


 この異世界はなんて冷たい世界なんだろう。

 なんて異世界人に悪辣な世界なんだろう。


 最低な世界だ。

 こんな異世界は嫌いだ。



『異世界は…俺の知ってる異世界物語はすげーおもしれーんだ………こんな…こんな最悪なことばっかりは違う。こんなのつまんねーよ。異世界なら、俺をもっと面白くしろよ……異世界…俺が本当に異世界に来たのなら………もう一回やり直させてくれ━━━━━』



もしかしたら辞めるかもなんでw

そんときはお元気で!

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