関口 陽(ひなた) (2)
まぁ、確かに、今までの戦い方じゃ、「観」えないヤツには何が起きてるか判んないよな。
私は武器であるハンマーを手にし……うわっ⁉
次の瞬間、相手は間合を詰め、片手持ちした錫杖を横に振る。素人のような動き……だが、物凄い風切り音。
目にも止まらぬとは、この事だ。何とか後に飛び去って避けたが……追撃。
動きは単純……。相手の足の速さも、腕を振る速度も……こちらが目で追えないほどじゃない。なのに、錫杖の攻撃だけが見えない。
風切り音だけを頼りに攻撃を回避し続けるが……。マズい……相手の攻撃の動作より、私が回避する動作の方が大きい。
攻撃を避け続けても、先にスタミナ切れになるのは私だ……。
更に謎の攻撃の合間に「気弾」を撃たれる。……これも何とか防ぎ続けているが……。
気・魔力・霊力の類を感じられるのは……相手の「気弾」と……どうやら、私を「観」ている客席などに居るらしい同業者だけ。
つまり、この目にも止まらぬ攻撃は、魔法・呪術に依るモノじゃない。物理的な技だ。
クソ、ついさっきまで、試合の主導権を握ったと思ってたのに、早くも立場が逆転。
「ごめん、私が連れて来た撮影のバイトを、すぐに無線に出して」
私は、そう無線連絡。
『えっ?』
「早くッ‼」
まだ謎の攻撃は当たってないが……こっちはどんどんジリ貧になっていく。
『はい』
「おい、お前なら判るだろ、あの錫杖の正体は何だ? お前なら、どう戦う?」
『時間が無いんで、敬語抜きで手短に言うぞ……私なら、1〜2発被弾するのを覚悟の上で、相手の懐に飛び込む』
聞くんじゃなかった……何故、その手が有効なのかは判んないが……あいつみたいな命知らずじゃなきゃ無理な戦法……くそ、もうヤケだ。
私は、守護尊である金剛蔵王権現の「種子」を頭の中で思い浮かべる。
そして……「火事場の馬鹿力」を引き出す呪法が発動。
「おりゃあああああッッッッッ‼」
相手との距離を詰めるが、もちろん、相手の攻撃を被弾……って、あれ?
思ったより痛くない。
ほんの一瞬だが、相手の動きが止まる。
そうか……「速度」と「重さ」の違いは有っても……私のハンマーと同じく、「先端ほど威力が有る」武器だったのか……。
判ってみれば単純だ……。
相手は杖術や棒術の使い手じゃなくて、鞭か鎖分銅の使い手だと思って戦えば良かっただけか……。
もっとも、その「だけ」が結構難しいが、でも、カラクリが判ってるのと判ってないのとでは大違いだ。
私は、相手の武器である……錫杖に見せ掛けた多節鞭を掴んだ。




