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君が僕を見つけた。  作者: 長月
11/18

夏休み〈4〉



 フードコートへと着くと夏休み中とあってか家族連れも多く、そこそこ席も混んでいる。


「二条院は何が食べたい?」

「そうだな……ハンバーガーとか」

「じゃあハンバーガーにしよっか」


 あっさりとメニューが決まり、某チェーン店であるハンバーガー店へと並ぶ。2人で注文を終え、空いている席を見つけると、トレイを置いて席に腰掛けた。


「じゃあいただきます」

「いただきます」


 ガブリ、と2人でかぶりつく。こういう物を食べるとはなんとなく二条院のイメージからは思いつかなかった。


「二条院、ハンバーガー好きだったんだね」

「あぁ。たまに食べたくなる時ってあるでしょ」

「わかるー」


 そんななんでもない会話をしながら食べ進める。


「これ食べ終わったらどうする?二条院はどこかもう1度見たいところとかあった?」

「あぁ、ある。鷹司の家行くのに手土産買いたい」

「手土産なんて別にいいのに」

「そういうわけにはいかない」

「そう?」


 首を傾げながらそう言うと、二条院がこくりと頷きながら、


「何かご家族が好きなものがいいんだけど、何が好き?」

「そうだなぁ……うちは好き嫌いないから何でも食べるよ。そしたらお土産屋さんでも行ってみてみようか」

「あぁ」


 午後の予定も決まったところで、会話しながら食べ進めているとどこからか視線を感じた。キョロキョロと見回すと、真横にある2つ横の席に座る僕たちと同い年くらいの女の子2人組が僕たちを見てコソコソと話している。そっと耳を澄ますと会話が聞こえてきた。


「ねぇねぇ、あそこの2人超かっこよくない?」

「どれ?……うわ、まじかっこいいんだけど、やば」

「どうする?声かけてみる?」

「えー、どうする?」


 という黄色い声が聞こえてきてげんなりする。手元から視線を上げると、二条院も会話を聞いていたのか無言でこくりと頷いた。アイコンタクトをとり、


「そろそろ行こうか」

「そうだね」

「あ……」


 ガタリ、と席から立ち上がりトレイを持ってゴミ箱へと向かう。女の子たちの声が聞こえてきたけれど、聞こえないふりをして僕たちはその場をそそくさと後にした。


「はぁ、ああいうのってどうしたらいいのか困るよね」

「相手なんてしなくていいよ、面倒だし」


 本当にめんどくさそうに言う二条院は若干冷たく感じるが、僕も同じことを思っていた。


「そうだよね。変に期待持たせても可哀想だしね」


 頷きながら、先ほど話していたお土産さんへ向かう。お土産さんへと着くと、洋菓子の並ぶコーナーへと立った。


「うちは割と洋菓子とか好きかも。バームクーヘンとか」

「なるほど」


 僕の言葉に頷いて、二条院が真剣な表情でお菓子を覗いていく。やがてバームクーヘンを見つけると、手に取って顔の高さに持ち上げた。


「じゃあこれにする、買ってくるよ」

「わかった」


 二条院が会計をしている後ろ姿を眺める。やがて会計を終えると、僕のところに戻ってきた。


「買ってきた、ありがと」

「ありがとうは僕んちの台詞(せりふ)だよ」


 と笑い合う。


「さて、じゃあ鷹司は他に何か見たいところとかある?」

「あ、じゃあ僕さっき見たお店で欲しい服あったんだよね。買ってきてもいい?」

「いいよ、行こう」


 ということで今度は僕の気に入った服を買いに向かう。お店に着くと、店員さんに勧められてサイズを確かめるため一応試着をしてみることになった。試着室で服を着替え、シャッとカーテンを開ける。すると目の前の壁に寄りかかって腕を組んでいた二条院は、腕を解くと


「いいんじゃない。鷹司に似合ってるよ」

「そう?じゃあ買おうかな」


 目を細めてそう言う二条院に思わず頭をかく。面と向かって似合っていると言われると照れるものがあった。再度私服に着替えて試着室を出る。


「お疲れ様」

「ありがとう。……じゃあ会計お願いします」

「かしこまりましたー」


 僕たちの側でずっとニコニコと様子を伺っていた女性店員にそう言って、服を手渡す。そのままレジに通され、会計を行った。 

 服を受け取って側で立って待っていた二条院のところに駆け寄り、


「ありがと。いいのが買えたよ。二条院は他にまだ見たいところある?」

「俺はもうない」

「僕もないな。……じゃあそろそろ僕の家に行く?」

「そうしようか」


 ということで、今度こそ僕の家へと招待するためショッピングモールを出て再度駅へと向かう。道すがら、買った紙袋をガサガサ言わせながらこんな話をしていた。


「今日お家にいるのはお母様だけ?」

「そうだよ」

「そっか」

「何で?」

「いや、なんか緊張してきた」

 

 緊張しているという二条院の横顔をじっと見る。確かに無表情ながら少し表情が強張っている気がした。


「そんな気を張るような母さんじゃないから大丈夫だよ。むしろうるさくいろいろ聞かれると思うけど、ごめんね」

「そうなの」

「うん。僕あんまり樹以外の友達の話ってしたことないから、母さん二条院に興味津々みたいだったし」

「なるほど」


 と頷いた二条院に、ふと気づいたことがあった。


「……そういえば今ふと気づいたんだけどさ、僕ずっと二条院って呼んでたけど、これからは楓って呼んでもいい……?」


 おずおずと話しかけた僕に目を瞬かせた二条院はふっ、と笑って、


「もちろんいいよ」

「やった!じゃあ僕も円って呼んで!」

「わかった、よろしく円」

「よろしく楓」


 ふふっと笑い合う。そんなことを話し合いながら、駅へと着いて僕たちは再び電車に乗った。






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