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私は、人魚を見た。
上も下もわからない水の中。
もう口から吐き出す空気もないのに、ゆっくりとたゆたう髪には、小さな空気の粒が銀色に輝く。
どちらが上で、どちらが下かもわからない。
上も下も、もうないのかもしれない。
寒くもない。
熱くもない。
痺れた体に感覚はなく、私はもう半分海に溶けかけている。
もがくことすらできなくて、ぼんやりとかすむ意識。
瞬きすら出来ず開いたままの目に、ただ景色が写る。
少し濁った水。
私の髪。
銀のあぶく。
そして人魚。
長い黒髪をなびかせた人魚
空よりも濃く、海にとろけるような青い青い青い人魚。
ああ、綺麗。
とても、綺麗。