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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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納得のいかない二人

 お昼になり、図書館に隣接する公園で待つこと十五分、光さんは友達が務めるパン屋で失敗したパンを貰ってきた。


 僕と奈々子さんは小説の事でもめ事を起こしたが、光さんに優しく窘められて、とりあえず落ち着いた。


「どう?二人とも落ち着いた?」


 僕は納得いかないので黙っていて、それは奈々子さんも同じ気持ちなのか黙っている。


 本当に奈々子さんの小説は僕の小説を凌駕するほどのものだと言う事なのに、奈々子さんは自分の小説よりも僕の小説の方が面白いと言っていたことに、僕はやはり納得できなかった。


「奈々子さんの小説の方が面白いよ」


「いやいやアツジの小説の方が面白いよ。もしかしてあたしに気を使ってそんな事を言っているんじゃないでしょうね!」


 そういって奈々子さんは僕に手をあげるつもりでいた。


 そこで光さんが「ちょっと奈々子ちゃん、だからって暴力はいけないよ」


「アツジ、本当の事を言いなさいよ、あたしに気を使っているって」


「そんな訳ないじゃないか!奈々子さんの小説の方がとてもリアルに表現されていて、まるで映写機のように文章が読み取れたよ」


「それはあたしのセリフだよ。アツジの小説、多少の誤字脱字はあったけれど、本当に面白かったよ。それであたしはアツジの事に対して嫉妬してしまったんだから」


「嫉妬したのは僕の方だよ」


 そこで光さんが僕達の話に入ってきて「はいはい。二人とも落ち着いて」と言って僕と奈々子さんの口にパンを押し入れた。


 僕は納得がいかなかった。


 どうして奈々子さんは僕の小説よりもすごい小説を書いているのに、奈々子さんは僕の小説の方が面白いと言っている。


 そんな事を考えている僕に光さんは「お互いの小説を読んでお互いに良いと思えることはどうやら二人とも上手に小説が書けたみたいだね」


「そうなんですか?僕は奈々子さんが気を使っているとしか思えないんだけど?」


「だから気を使っていないって何度言わせるのよ」


 しまいには奈々子さんのビンタを喰らってしまった。


「ちょっと奈々子ちゃん暴力はいけないよ」


 と奈々子さんは光さんに叱られる。


「だって・・・」


「じゃあ、こうしましょう。今度はあっ君と奈々子ちゃんの小説を私が読んで見るのはどうかな?」


「光さんも気を使うんじゃないの?」


 僕が言うと光さんは、


「私は正直な感想しか言わないよ。それに私だって小説を何回か書いたことがあるって以前話したよね。それに私は図書館の司書よ。まだバイトだけれども」


「じゃあ、奈々子さん光さんに小説を読んでもらって、どちらが面白いか勝負しよう」


「ちょっと待ってあっ君、そういった物は勝負の対象にはならないわ。もし小説で勝負をするなら、ネット小説に投稿してポイントが高い方で競った方が良いわ」


「ネット小説ってそんなのがあるんですか?」


「そうそれで読者がどう反応するのか見て、勝負すると良いわ」


「じゃあ、奈々子さん僕達の小説をネットで投稿してどれだけ点数が高いか勝負しよう」


「それは良いわね。あたし思ったんだけど、本当にアツジが気を使っていないかわかるから」


 そこで光さんが「その前に、あっ君に奈々子ちゃん」


「「何ですか」」


「二人の小説をネットに投稿する前に私にその二人の小説を見せてよ」


「分かりました」「はい」


 と僕と奈々子さんは返事をする。


 光さんに僕達の小説を見てもらうのか?それは本当に緊張してしまう。

 でも光さんの事だから僕達に気を使うかもしれない。

 だからいっその事、そのネット小説に投稿してみてはどうだろうか僕は考えた。

 でも小説が出来上がったら、まず最初に見せるのは光さんか奈々子さんって約束したもんな。


 それと考えてみれば奈々子さんと僕は違う人間だ。

 しかもお互いにあまり気を使ったりしない恋人兼ライバル同士だ。


 お昼ご飯は終わって僕と奈々子さんは互いに書いた小説のノートを手渡した。


「じゃあ、明日までに二人の小説を読んでおくね」


 そういって光さんは僕と奈々子さんがそれぞれ書いた小説のノートを手渡した。


 光さんは僕達の小説を見てどんな感想を述べるのだろうか?


 何か、そう思うだけで何か緊張して、しまいには怖くなったりもする。


 これから僕達は光さんが作ってくれた問題集をやる。


 今日、光さんが出してきたのはto不定詞であり、僕はto不定詞勉強済みなので今日なら奈々子さんに勝てると思って、僕と奈々子さんは光さんの問題集to不定詞をやることになった。


 To不定詞は要点だけまとめれば簡単に出来てしまう。


 英語だから百点まではいかないかもしれないけれど、奈々子さんに勝つ自信はあった。


 英語の問題集をやり遂げて光さんに採点してもらう。


 僕は奈々子さんにニヤリとした笑みを浮かべた。


「何ドヤ顔しているのよ」


「今日の勝負、僕の勝ちだね」


「それはわからないわよ」


 と今度は奈々子さんがドヤ顔してきた。


 何かムカつく。


 採点を待っている間、僕と奈々子さんは共に絵を描いていた。


 本当に図書館は良いな、光さんにテレビで招待され僕の人生は大きく変わった。


 実を言うと僕の小説は僕と光さんとの出会いをテーマに考えた小説を書いたのだ。

 僕は光さんには結ばれなかったけれど、僕にはライバル兼恋人関係の奈々子さんと出会い付き合うようになるのであった。

 奈々子さんは僕の小説を読んできっと僕の気持ちを知ったに違いない。

 実を言うと奈々子さんも自分をテーマにした小説を描いていたことを僕は気が付かされる。

 奈々子さんの小説は本当に面白かった。

 読みやすい文章で僕の頭にすらすらと映写機のように映し出されて、とても文章がきれいであった。

 でも奈々子さんは僕の小説の方が自分の小説よりも面白いと言っている。

 そして僕は気が付いた。

 奈々子さんは僕に気を使ったりしない、奈々子さんは本気で僕の小説の方が面白いと思っている。

 でも不思議だ。

 僕よりも優れている奈々子さんの小説を読んで奈々子さんの小説の方が面白いなんて言うなんて。それで奈々子さんは僕の小説を読んで奈々子さん自身の小説よりも面白いなんて思うなんて。

 そんな事を考えながら僕は絵を描いていた。

 今回の絵はアニメチックに奈々子さんの笑っている姿を描いた。

 やっぱり奈々子さんは笑っていた方が良い。


 すると奈々子さんは僕の絵を見て「相変わらずにうまいわね」


「奈々子さんは何を描いているの?」


「あたし!?」


 すると奈々子さんもアニメチックにデザインした僕の笑顔を描いていた。


「うまいね、奈々子さん」


「またあたしに気を使っているの?」


「使っていないよ。僕思うんだけど、僕も奈々子さんもお互いに小説の事を気を使ったわけじゃないことが分かったよ」


「アツジの小説の方が面白いじゃない」


「ありがとう。僕も奈々子さんの小説が僕の小説よりも面白いと思うよ」


「懲りずにまたあたしに気を使っているの?」


「使ってないよ。奈々子さんも使っていない。お互いにそんな事を気を使うなんて恋人同士失格だと思うんだ」


「アツジ・・・」


「奈々子さんの絵は確かにうまいけれど、僕の方がまだ数段上だよ。でも奈々子さんの努力次第で、僕何て油断していたらすぐに追い越されてしまうよ。それに絵も小説も人それぞれうまいとか面白いとか、人によっては違うかもしれない。面白いと思う人もいれば面白くないと思う人もいると思うんだ。

 今回の小説はお互いにツボにはまったのかもしれないね」


「じゃあ、光さんはあたし達の小説を読んでどう思うんだろうね?」


「それは明日になってみなければ分からないよ。光さん忙しいのに僕達の小説を読んでくれるって約束してくれたからね」


 そこで光さんが採点が終わったのか僕と奈々子さんの元へと帰ってきた。


「二人ともお待たせ、あっ君が九十点で、奈々子ちゃんが九十二点だったよ。この勝負奈々子ちゃんの勝ちだね」


「やったー」


「うわーマジで悔しい」


「今日は何をおごってもらおうかな?」


 テストの点数は点数を見れば一目瞭然に勝ちか負けかを判断できる。でも小説や絵は芸術関係の事に関しては点数など付けられない。つまり人それぞれだから、一概に言えないのかもしれない。

 だから今度は絵も小説もネットに投稿して、全世界の人に評価を貰い、どう反応するのか見てみないと奈々子さんと僕は分からない。

 光さんが僕達の小説を読んでどう思うのか?

 読んで貰ったら早速ネット小説に投稿しようと僕達は思うのだ。


 そしてそろそろ僕達は新聞配達の仕事に出かけに行かなければならない。


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