無念
学校が始まり、僕は授業中にどんな誌を書けば良いのか悩んでいた。僕はどんな曲を作れば悲しみに沈んでいる人にエールを与えられるか考えていた。僕はノートに誌を書いていると先生に見つかって、頭を叩かれてしまった。先生は言っていた、いくら勉強が出来ても授業には参加しろと。
授業に集中しても僕には分かりすぎるくらい分かる問題ばかりであった。もう僕達の学力は中学校の範囲を網羅している。僕は考えた。僕も涼子さん達と同じ学校に行けば良いんじゃないかと。そうすればバンドを続けていられるかもしれない。それに高校に入ったら軽音楽部があるかもしれない。
僕が入ろうとしている学校は通信制で絵の勉強が出来るところだ。通信制になってしまうと学校は週一度でお金はかからないが、友達を作る機会がなくなってしまうかもしれない。そうなると何かつまらない様な気がしてきた。
バンドを組むことがこんなに楽しいなんて僕は思ってもいなかった。
そろそろ中間試験だ。それに僕達は三年生で勉強は出来るけれど、油断していたら、痛い目に遭うだろう。だから中間試験の範囲をちゃんと聞いて勉学に励むつもりだ。また僕が涼子さん達を追い抜いててっぺんを取ってやると思っている。
そして二週間が経って僕達のバンドの腕も上がり、今は中間の試験に向けて勉強している。テスト範囲はちゃんと授業を受けて、しかもそれ以上の知識を身につけているから、楽勝かもしれないが、しっかりと勉強しないと涼子さん達に追い抜かれてしまうだろう。
だから僕達は互いに熱を出し合って、中間試験に天辺を取ってやると思って僕達は燃えていた。それにバンドの練習も少しだけしている。楽器は少しでも怠るとせっかくここまで練習してきたのがダメになってしまう。だから中間試験の時だけ、自己練習は欠かせない。
僕達は本当に忙しい。遊んでいる暇などないが、勉強や新聞配達や今やっているバンドや中間試験などをやって楽しい。そうだよ。僕達はそうやって遊びよりも楽しいことをしている。本当にこの三人と出会って良かったと思えている。
中間試験も終わり、僕達は肩から力が抜けたように、ホッとしている。中間試験の結果を見てみると、僕は学年で二番だった、ちなみに涼子さんは一番で三番が奈々子さんで四番が斎藤さんだった。また僕達が試験で天辺を総なめしてしまった。
「やっと、中間試験が終わったね。これで気兼ねなくバンドの練習に励むことが出来るね」
僕が言うと、みんなも同じ気持ちであった。
それに後コンクールまで一ヶ月ある。そこで賞を取ってやろうとみんな躍起になっている。
僕達はこの一ヶ月間、バンドや勉強と小説と新聞配達の仕事でてんてこ舞いで、とにかく本当に一日が二十四時間しかないのは残念に思ってしまうぐらいだ。僕達の睡眠時間は一日四時間で、夜の十一時に寝て、夜中の三時に起きると言うハードなスケジュールをこなしている。
バンドのコンクールで曲を披露するには一曲であり、その一曲にみんなで魂を込めて僕達は演奏した。本当に僕は今が一番楽しい。ハードなスケジュールだけど、みんなも同じ気持ちであった。
そんな日々を過ごしていると、何か僕の中で、だるさが生じてきた。何なんだ?このだるさは?バンドをしている時の事だった、後コンクールまで一週間と来たときに、僕は過労で倒れてしまった。
気がついたとき、僕は僕と涼子さんが住むアパートで気がついた。
どうしてここにいるのか?僕は過労になりながらも、涼子さんの肩を借りてここまで来たみたいだ。僕は過労で、その記憶が飛んでいるような感じであった。
「ちょっとあっ君大丈夫?」
「コンクールまで後一週間しかないじゃないか、こんな所で眠っている場合じゃないよ」
「ダメよあっ君、そんなに無理しちゃ」
僕が起き上がろうとすると涼子さんはそれを止めるように僕の体を押さえつけた。
「コンクールはバンドはどうなるの?」
「もう私達はバンドはやっていない、あっ君が眠っている間はそうしようとみんなで決めたの。実を言うと私も翔子も奈々子も過労気味なの。一日に勉強や小説に新聞配達までして、それにバンドなんてしているんだよ。それは体を壊すに決まっているわ」
「そうなの?じゃあ僕のせいだね。僕が躍起になってみんなを無理させてしまったことに」
「あっ君のせいじゃないわ。私達だって無理をしていたんだから」
「じゃあ、コンクールは諦めちゃうの?」
「そうするしかないわ、みんなもうヘトヘトだもん」
「あんなに練習したんだよ。コンクールに出ないなんてもったいないよ」
「ここは耐えて、これ以上無理したら、体を本当に壊しちゃうんだから。あっ君の熱を測ったら37.8度まであったんだから」
そうか、これ以上無理したら、病院に入院状態になりまた無駄なお金がかかってしまう。でもあんなに練習したのに・・・無念だ。
「あっ君バンドなんていつだって出来るじゃない。だから落ち込むことはないよ」
そうだよな、僕達がその気になれば、またバンドを再開することが出来る。でもコンクールに出れなかったことは本当に無念だ。
「じゃあ私は新聞配達の仕事に出かけてくるけれど、とにかく安静にしていなさいよ」
「新聞配達の仕事なら僕もやるよ」
僕が起きようとすると体が鉛のように重く感じた。これじゃあ、新聞配達の仕事どころじゃないそれに、涼子さんは僕を抱きしめて、「大丈夫だよ」と言ってくれた。
涼子さんは新聞配達の仕事に出かけていって、僕は部屋で独りぼっちになってしまった。バンドの練習、あんなに必死にやったのに無念にも程があると僕は情けないながらも涙が止まらなかった。
「畜生、畜生!」
今まで楽しくて疲れを凌駕する程、活動してきたんだもんな。やはり体がついて行けなかったのは残念で無念でならない。涙が止まらない、今頃涼子さん達三人は僕の分まで新聞配達の仕事をしているんだろう。何なんだよこの体。この自分の貧弱な体が憎らしかった。僕が倒れなければ、コンクールに出ることだって出来たし、新聞配達の仕事を四人分の仕事を涼子さん達三人に任せてしまっている。
涙が止まらない。そんな時である。図書館の女神様事光さんとそれと桃子がやってきた。
「あっ君、体の調子はどう?」
何だろう、光さんを見ると、こんな情けない姿を見られることに恥じらいを感じた。そして涙がドバドバと流れてきた。
「光さん僕は・・・」
すると光さんは僕を抱きしめてくれた。
「ゴメンね、あっ君、私がバンドなんてやろうと言わなければ、こんな事にはならなかったのに」
光さんの暖かい抱擁に僕は光さんの胸元を涙でぬらしてしまった。こんな所を涼子さんに見られたら、大変な事になってしまうが、今はそんな事を言っていられない。バンドが出来なくなり、僕は体調を崩して、コンクールに出れなかったことのこのぽっかりと空いた胸の穴をどのようにして埋められるのか分からなかった。
「光さんのせいじゃありませんよ。元はと言えばこの体が悪いんですよ。この体さえ動いてくれれば、僕はバンドも出来るようになったのにそれに勉強も小説も絵も出来るはずだったんですよ」
「あっ君、そうやって自分を責めるのはダメだよ。それに無理をさせてしまった私にも問題があるのだから」
「光さんのせいじゃありませんよ」
そこで桃子が「もうお兄ちゃんはいつもそうやって全部自分で背負おうとするんだから。これは仕方がないことでしょ」
そうだ。本当に仕方のないことだ。この貧弱な体をもっと強くしなければならないと思い知らされる。




