春の受験生
今日もいつも通り、学校が終わって新聞配達の仕事が終わり、僕達は昨日と同じように錦糸町で弾き語りをする事になった。事の発端は涼子さんと斎藤さんがどうしてもギターを弾けるようにしたいと言うことだった。今日は勉強をしようと言ったが、二人は聞いてくれなかった。
涼子さんと斎藤さんはだんだんうまくなっている。手がはけているにも関わらず、コードを押さえて弾いているんだもんな。僕も奈々子さんも負けていられない。だからコードの難しい長渕剛の歌を歌ったりして新しいコードの練習をした。
「翔子、今日こそはセカオワのRPGを歌うわよ」
と涼子さんは必死になっている。そして涼子さんと斎藤さんはセカオワのRPGを歌い出した。本当に二日目でこの人達歌えるようになってしまった。僕と奈々子さんも負けてはいられない。
さすがは涼子さんだ。僕の彼女がそんな頑張り屋さんな所が僕は好きなんだよな。不幸な状況にあっても涼子さんも斎藤さんも果敢に挑む姿は美しい。でも僕達は今年受験だ。こんな事をしている場合じゃ無いかもしれない。
そうだ。受験で思い出したが、奈々子さんは進路はどうするのか聞いていなかった。でもなぜだろう?聞くのが怖かった。それは以前僕と一緒の絵に関する通信制の学校に行くって言っていたからだ。僕は今は涼子さんと付き合っている。以前奈々子さんと付き合っていた頃は何をしても一緒だった。
だから僕は勇気を振り絞って聞いてみた。
「奈々子さんはどこの学校に行くの?」
と。
「そうね。アツジと付き合っていた頃はアツジと同じ、学校に行くつもりだったけれども、あたしはもうアツジの彼女じゃ無いから、どこか安い都立の進学校に行くつもりだよ」
それって涼子さんと斎藤さんと同じ所に行くつもりなのか?
まあ、ここは東京だ。都立の進学校はありとあらゆる所がある。もし涼子さんと斎藤さんと同じ都立の進学校に行ってしまったら、何か僕だけ独りぼっちになってしまうかもしれないからだ。
何か切ない感じがした。僕だけがのけ者にされているような気がしたが、進路はそれぞれが決めることだから、それは仕方が無いことだ。仲良しなのは良いことなのかもしれないが僕は涼子さん斎藤さん奈々子さんと同じ所に行くつもりは無い。
人生は自分で切り開いて行く物だから、僕は絵に関する通信制の学校に行く決意を曲げたりしない。僕の夢は小説家兼絵師だ。その事には変わりは無い。
とにかく今は今を楽しもうと、僕は涼子さんと斎藤さんが歌っているのを参加してセカオワのドラゴンナイトを歌った。歌っていると気持ちが良い。こうして四人でバカをやっていられるのは後一年だと言うことに僕は切なくなってしまう。
そして弾き語りもお開きになって、僕達は僕と涼子さんの家に戻り、少しだけ、勉強と小説を頑張った。
「僕は思うんだけど、とにかくギターなんてやっている暇なんてないよ。だから三人は都立の進学校に行くんでしょ。だから遊んでいる場合じゃ無いよ」
「そうだね。確かにあっ君の言うとおりだね」
「そうだよ。今は勉強とたまに小説を書こう」
「そうだ。昨日出した小説のアクセス回数を見てみようよ」
それぞれ僕達の小説のアクセス回数を見てみると、僕が二千で、涼子さんが千二百で、奈々子さんが千百で、斎藤さんは二千だった。僅差だが今日は僕は斎藤さんに勝つことが出来た。何か嬉しかった。
そうだ。明日、光さんは図書館に四人でいらっしゃいと言っていた。それに明日は日曜日なので新聞配達の仕事も無くもちろん学校も無い。だから明日は四人で図書館に向かうことにした。
そして次の日、朝になると三時に目が覚めた。目覚めると、斎藤さんと涼子さんはギターの練習をしていた。
「ちょっと何をやっているの二人共、僕達は受験生でそんな事をしている場合じゃ無いでしょ」
「あっ君、その事なら大丈夫よ。私と翔子はオール五なんだから」
「だからってこんな夜中にギターを弾くと近所迷惑になるよ」
「それもそうか」
と言って二人は外に出て近くの公園で弾き語りをしていた。
受験生だと言うのに、ギターなんかにかまけて良いのだろうか?
まあ、二人は本当に勉強をしているからな、ギターはそのウォーミングアップなのかもしれない。今日は僕が朝ご飯を作ることになった。
奈々子さんも起き出して、近くの公園でギターを弾いている二人に朝ご飯が出来た事を伝える。
「涼子さんに斎藤さん。朝ご飯が出来たよ」
「私が作るつもりだったのに・・・」
と涼子さん。
とりあえず二人を呼んで、四人で朝ご飯を食べることになった。
食卓を囲み食べていると、こうしてみんなと食べるのは後どれぐらいだろうと切なくなってしまった。
でも僕達がバラバラになっても、こうしていつもの四人で食べていたいと思っている。それに僕は涼子さんと付き合っているんだ。だから違う学校に行っても、その気持ちを変えたりはしないと僕は思っている。
そうだ僕と涼子さんは付き合っているんだ。僕は結婚を前提に付き合っていると思っている。だから大丈夫だ。高校に入ってからでも僕達はまたこの四人で勉強や小説や絵など、そして涼子さんと斎藤さんが今夢中になっているギターなんかを弾き語りをしたりして楽しむことが出来る。
そう言えば今日は光さんが働く図書館に向かうんだった。図書館が開くのは午前九時だから僕達はそれまで涼子さんと付き合うように、ギターの練習をしていた。勉強は図書館ですれば良いと思っている。とにかく今日も三人の熱にあやかりながら勉強に勤しんでいたいと思っている。
図書館に向かう時間になり、涼子さんと斎藤さんはギターを抱えて図書館に行くつもりだ。
「ちょっと涼子さん。勉強しに行くんでしょ。ギターは置いていって」
「だって私と翔子、凄くギターにハマちゃったんだもん」
ため息が一つこぼれ落ちた。
まあとにかく二人がやる気なのは間違いない。でもそんなにギターにはまってしまっているならいっそ、ミュージシャンにでもなったら良いと僕は思った。ミュージシャンか悪くないな、でも僕達は受験生だ。でも受験生は受験生でも僕達は勉強のコツを覚えて今では短時間で問題を把握する事が得意になっている。
図書館に行くと光さんから久しぶりに課題を出された。その課題の範囲は進学校の入試問題だった。何だ?こんな問題楽にこなせることが出来た。英語も数学も国語も歴史も理科もすべて楽々こなすことが出来た。どうやら僕達は進学校に行ける能力を持っているのかもしれない。
そうと分かったら僕達は涼子さん達と図書館に隣接する公園で弾き語りをした。
別に受験生だからと言って、僕達はいつの間にか進学校に行ける力を持ってしまったみたいだ。
「あっ君、私とギターをしよ」
進学校の問題を楽々クリアーしたんだから、文句ないと言わんばかりに涼子さんは弾き語りに僕を誘った。
奈々子さんと斎藤さんも弾き語りを僕達に負けないように練習する。
とにかく勉強は毎日三十分くらいして置けば良いかもしれない。後は中学校のおさらいだけだからだ。
本当にセカオワのRPGのような感じだ。そんな気持ちで涼子さんが弾くギターに合わせて僕は歌う。それにギターは二本しかないから、もう一本は斎藤さんと奈々子さんで使っている。本当に歌っていると清々しい気持ちになってくる。
すると光さんが僕達の所にやってきて、「あなた達、バンド組んでみない?」




