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恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
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涼子さんの気持ち

 授業が始まり、僕は授業に集中できない感じだった。東雲しののめさんの事で頭がいっぱいだった。でも僕にはもう涼子さんと言う素敵な女性がいる事を自分に言い聞かせて授業に励んだ。そうだ、いつまでも東雲さんの事を考えている場合じゃ無い。


 こうしているうちにも授業は始まって、涼子さんや斎藤さんに東雲さんが授業を真面目に受けているに違いない。そう思うと心に火がつくように勉強に集中した。今日は英語の小テストがあった。この問題なら簡単に解けると思って僕は小テストに集中した。


 今日もいつも通り給食があって、午後の授業も終わり、僕達は共に帰ることになった。僕達は自転車通学をしている。早速僕達四人は新聞配達の時間まで小説に没頭している。僕は東雲さんが気になり、東雲さんの事をチラチラと見ていた。


 それが見つかって僕は東雲さんに言われてしまった。


「どうしたの?長谷川君」


「いや、別に・・・」


 改めて名字で呼ばれるのは何か少しだけ心にトゲが刺さるかのように、応えた。

 するとそんな僕を看破したのか、涼子さんは僕の手を握って、首を傾けて笑顔を見せてくれた。そうだよ。僕には涼子さんがいるんだよ。勉強に集中しないと。


 そして新聞配達の時間になり僕達は配達所に向かった。今日は僕と涼子さんが組むことになり、後は東雲さんと斎藤さんが組むことになった。今日は緊張して仕事に挑むことは無くなった。


「あっ君、私は嬉しいよ。あっ君と付き合えて。私と付き合って絶対に後悔はさせないから」


 本当に西宮さんはいい人だ。何か西宮さんと付き合っていると何かと頼りになりそうな感じだった。そして僕の中で葛藤が始まる。僕は実を言うと奈々子さんが心配なのだ。いつもは東雲さんと読んでいるが、名字で呼ぶと何か違和感を感じてしまう。そして辛い。でも涼子さんと言う素敵な女性がいることを思うと僕は僕でいられる。


 実を言うと西宮さんの事はあまりよく知らないのだ。でもこれからゆっくりと知っていけば良い。西宮さんは僕の心を太陽の光のように包み込んでくれる。そんな存在だ。


 新聞配達をしている時、西宮さんとやっていると何か心が高揚して凄く楽しい。何か涼子さんとこうして一緒にいると遊園地にいるよりも楽しい感じがする。そして徐々に東雲さんの事を忘れさせてくれる存在となってくれた。


 本当に涼子さんと付き合えて僕は本当に良かったと思っている。東雲さんには悪いが、僕にはもう涼子さんという女性がいる。そして新聞配達の仕事は終わって、僕達は帰ることになった。僕と涼子さんの家に戻ると、光さんと桃子が料理を作りにやってきた。


 実を言うと僕は光さんと会うのはかなり気まずい状況に陥っていた。でも光さんはそんな事を受け入れたのか?いつものように優しく僕達に料理を提供している。


「あっ君、今は奈々子と付き合っているんじゃ無くて、西宮涼子さんと付き合っているんだね」


 そう言われて心臓が口から飛び出そうな程鼓動は高鳴った。


「そうですけれども、それが何か?」


「まあ、それも仕方の無い事だ。とりあえず奈々子は私が預かることにしたよ。奈々子凄い号泣をしていたけれどもね」


 と光さんは明るく言っているが、それは凄く深刻な事だ。


 そこで東雲さんは「止めてくださいよ、あたしはそんなに号泣なんてしていないですよ。いい加減な事を言わないでくださいよ」


「だって昨日はアツジが涼子に取られちゃったよって泣いていたじゃない」


「もう、光さん!」


 奈々子さんはご立腹だ。


 そうか、東雲さんは涼子さんに僕を取られて凄く泣いていたんだ。それは無理は無いことかもしれないが仕方が無いことかもしれない。僕の心は涼子さんに向いている。


「さあ、今日は光さんと桃子特製の、カレーライスよ」


 うお、凄いカレーライスが食べられるなんて。光さんと桃子のカレーはおいしいんだよな。

 そしてカレーライスを食べ終えると、光さんと桃子は図書館に向かっていった。


「私達も図書館に続くか!」


 西宮さんがそう言って、僕達は図書館に向かった。

 

 図書館に到着して、この図書館の本の匂いが僕は好きなんだよな。何かここにいるとあの頃を思い出す。いじめられて学校に行けなくなり、僕はテレビを見て図書館に行ったんだっけ。


 さて僕達も勉強しなければならない。図書館は僕にとって癒やしの場だ。桃子も光さんも勉強に熱が入っている。その熱を僕達はあやかり、勉強と小説に向けた。だんだん勉強のコツが分かってきた。勉強は短時間で終わらせることが出来て、小説と絵に時間を僕達は費やせるようになってきた。勉強は毎日の積み重ねが大事だ。


 奈々子さんは僕と同じ進路に行くと言っていたが、今ではどうなんだろう?ここで聞く勇気は僕には無かった。西宮さんと斎藤さんは安い進学校の都立に行く予定らしい。図書館の空気とみんなの熱が相乗効果で僕達をやる気にさせる。


 僕の夢は小説家兼絵師になることだ。東雲さんも同じ夢を持っていたが今はどう思っているのだろう?とにかく今は勉強と小説に没頭しなければならない。


 時間になり、図書館は九時に閉館だ。もっとみんなの熱とこの図書館の空気にあやかり勉強したいが今日はもうここまでだ。


 そこで光さんが「じゃあ、奈々子ちゃん私の家にお泊まりしようか?」


 そうか、東雲さんは光さんのお世話になっているんだっけ。光さんがついていれば大丈夫だろうが、何か心許ない気持ちになってしまう。


「じゃあ、あっ君、私達も帰ろうか?」


「そうだね。明日は新聞配達の仕事があるんだからね」


 東雲さんは僕のことを嫌いになろうとしている。それは東雲さんはいつもツンツンしていたが今では僕の前では優しく振る舞っている。東雲さんは嫌いな人に対して優しく対応する所があるからな。


 斎藤さんは施設に戻り、僕と涼子さんは僕達が住むこととなった家に向かう。涼子さんを見ると、いつも笑顔で僕に接してくる。このまま涼子さんと付き合っていれば、いずれ涼子さんの暗い過去を知ることになることを僕は恐れていた。


 涼子さんはいつも僕の前では燦然と咲き誇る綺麗なナデシコの様な笑顔だが、その笑顔の裏に何か悲しみを抱えているような気がするのはなぜだろうか。それも当然だろう。涼子さんは公衆便所で産み落とされて発見されて施設に行くことになったのだから。子供を産み落とすなんてとんでもないことをする輩がいると思うと僕は許せなくなってしまう。


 僕と涼子さんは家に戻り、それぞれ布団を敷いて、眠ることになった。


 そんな時である眠る前に涼子さんは「ねえ、あっ君、私今凄く幸せだけど、こんなに幸せになって良いのかしら?」


「何を言っているだい、涼子さん。僕はいつも涼子さんの幸せを願っているよ」


「本当に!?」


「本当だとも、涼子さんは強い人間だからね。僕はそんな涼子さんに幸せになって貰いたい」


「私が強い?何を言っているの?私はあっ君が思っているほど強い人間じゃ無いよ。時には自分の運命を呪ったりもしているよ。本当はすれ違う両親がいる子と代わりたいなんて思ったりもしているよ。あっ君には両親がいるんでしょ」


「いるけれど、僕のことを考えてはくれなかった。今はいつでも帰ってきて良いと言っているけれど、僕はそれは許せないと思っている。いじめに遭った時、僕はいじめ殺されてまで学校に行けという両親が許せなかった」


「両親は心配しているんじゃない?」


「それはしているけれども、僕は帰らない」


 そんな事を涼子さんに言う自分がなぜか子供のような感じで何とも言えなかった。

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