表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋人はライバル関係  作者: 柴田盟
108/207

付き合い始めた涼子とアツジ

 光さんは僕と西宮さんの関係をどう思っているのか?きっと呆れられたかもしれない。でも僕の気持ちはもう西宮さん、いや涼子さんに向いている。


 光さんは奈々子さんを見つけたらしい。どうやら奈々子さんはどこにも行くところが無く、光さんが司書のバイトを務める図書館にいたらしい。奈々子さんの悲しむ顔が僕の脳裏に焼き付けられることが想像出来て、僕はそれはそれで傷ついた。


「あっ君、これからは私の事だけを見ていてね。私があっ君を幸せにしてあげるから」


 そうかこれからは西宮さんの事だけを見つめていれば良いんだよね。でも何か複雑な気持ちだった。本当に僕は西宮さんと付き合って良いのだろうか?本当に奈々子さんはどうなってしまうのだろう。


「何、深刻そうな顔をしているの?奈々子の事なら大丈夫よ。あっ君は私と付き合うことになるだけで、これからは奈々子は友達兼ライバル同士でもあるのだから」


「本当にそういう気持ちで今まで通り、勉強が出来るの?」


「それは奈々子とあっ君の気持ち次第だよ」


 明日奈々子さんは新聞配達にやってくるだろうか?それと奈々子さんは僕と同じ絵の関係の美術学校の通信制に通うことになっているんだよな。西宮さんと付き合うことになって僕は色々と整理をつけなくてはいけなくなった。そうだ、僕は西宮さんの事も大好きなんだよな。


 もう今日は遅いので明日の新聞配達の仕事があるから、休まなくてはならない。すると、西宮さんは僕の家に泊まることになった。


「これからは奈々子と一緒に住むのでは無く私と一緒に暮らしましょ」


「施設の方は大丈夫なの?」


「大丈夫よ。施設は十八までしかいられなくなるから、本当は後三年で私は施設を出なければならないけれどもね」


「そうなんだ。じゃあこのまま奈々子さんは施設に送り込まれてしまうの?」


「奈々子だったら大丈夫よ」


 何だろう。涼子さんが言うと本当に大丈夫な気がしてきた。連絡が入ってきたが奈々子さんは光さんのうちにとりあえず泊まることになった。僕はそれを聞いてホッとした。


 僕と涼子さんは一緒の布団に眠って、涼子さんのぬくもりを感じて、奈々子さんと歩んできたこの数ヶ月の足跡が次第に消えていくのを感じてしまう。そうだ。僕はもう涼子さんとお付き合いをしているんだ。奈々子さんと付き合っている時の事を心の奥底に眠らせて置けば良いと思っている。


 


 次の日、三時に目が覚めて、僕は奈々子さんの事が気になり、あまり眠れなかった。


 今日は涼子さんが料理を作ってくれた。メニューはスクランブルエッグにトーストに焼いたベーコンにトマトサラダを作ってくれた。涼子さんにこんな特技があるなんて僕は思っても見なかった。


 それは本当においしいメニューであった。僕の心が涼子さんに染まっていくのを感じた。僕の心はまだ奈々子さんの面影が残っている。でもそれは奈々子さんを一人にしたら、奈々子さんは永遠の闇に消えてしまうんじゃ無いかと恐れる気持ちであった。


 そして新聞配達所に僕と涼子さんは向かった。するとそこには奈々子さんの姿と斎藤さんの姿があった。


「おはよう。長谷川君、涼子」


 と僕のことを名字で明るく振る舞ってきた。どうやら奈々子さんは、いや東雲しののめさんは僕と涼子さんの関係を受け入れてくれたみたいだ。それよりも僕は東雲さんが元気そうで良かったと思えた。


 今日も改めて新聞配達の勝負が始まる。


 奈々子さんは空元気なのかどうか分からないほど明るく振る舞っている。それはそれでショックを受けたが、僕には涼子さんという新しい彼女がいる。そう自分に言い聞かせて、新聞配達の勝負は始まる。


 今日は社長から僕と東雲さん、涼子さんと斎藤さんで組むことになった。

 社長は意地悪をしているのか?僕と東雲さんを一緒にやるのはかなり気まずい。


「奈々子さん、じゃなくて東雲さん。今日はよろしく」


「うん」


 と東雲さんは気まずそうな顔をいっさい見せずに、僕に返事をする。こう思うと女って分からないなと僕は思っている。東雲さんはいったい何を考えているのか何か気まずい。でも東雲さんはそう言った雰囲気を見せずに新聞配達の仕事をソツなくやっている。


 新聞配達の仕事が終わって帰ってみると、僕と東雲さんが先にゴールをしていた。


「やったね長谷川君あたし達が今日は勝ったみたいだよ!」


 明るく振る舞う東雲さん。そう言えば東雲さんは大嫌いな人に対して優しく声をかける性格であった。彼女は本心を心を開いた人で無ければさらさらない。


 僕は思わず大きなため息をついてしまった。


「どうしたの長谷川君、そんなに大きなため息なんてついちゃって!」


「い、いや別に・・・」


 そして涼子さんと斎藤さんは共にやってきて凄く悔しそうな顔をしていた。


 なぜか僕は喜べなかった。


 東雲さんは苦しくないのか?辛くないのか?僕はそれを期待していたのか?そうだったら僕は最低な人間だ。


 そしていつも通り、斎藤さんと涼子さんにそれぞれジュースをおごってもらうことにした。

 それから僕達四人は僕と西宮さんのうちになった家へ向かうことになった。


 僕はチラチラと東雲さんの顔を伺いながら見ていると、東雲さんと視線が合って、東雲さんは僕に爽やかな笑顔を見せてくれた。


 東雲さんはどうやら僕のことを本気で嫌いになってしまったのだろうか。でも僕には涼子さんがいるし、それに東雲さんも今まで通り、勉強に熱を入れて頑張ると言っていた。


 そして僕と涼子さんの部屋に入り、僕達は勉強を進めた。何だろう。この違和感は?あまり勉強に集中できない。でも奈々子さんじゃなくて東雲さんは勉強に熱を入れていた。そう思うと僕は負けていられない。そうだ。東雲さんは僕の彼女じゃ無くなって進路はどうするのだろう?僕は美術学校の通信制に通うつもりだが、その点はどうするのだろう?


 直接東雲さんに聞いてみようと思ったが勇気が無くて聞けなかった。どうしてこんな大事なことを聞けないのか?それは僕が聞く勇気を持つ事が出来なかったからだ。どうやら僕の心の中にはまだ東雲さんの想いが残っているみたいだ。


 東雲さんは僕に優しく振る舞っている。それは東雲さんが嫌いな人に対しての行動だったのを僕は知っている。


 想えば東雲さんはいつもツンツンしていたが本当は優しい人だった事を思い出される。でも良いんだ。これからは涼子さんと共に想い出を作っていきたい。そうだ。それで良いんだ。そうは想っても、きっと僕の心の整理をつけるには時間が必要だろう。そう想うと少しばかり東雲さんとは距離を置いて接した方が良いかもしれない。


 学校に行くと、どこでそんな噂を聞きつけたのか知らないが安井が僕に迫ってきた。


「お前、西宮と付き合っているらしいじゃん」


「そうだけど、それがどうかしたのかよ!」


 僕は喧嘩になることを覚悟で安井に言い聞かせた。


「それってお前俺への当てつけかよ」


「違うよ。僕達の間に色々な事があって僕は涼子さんと付き合うことになった訳だよ!」


 安井は舌打ちをして、僕の側から消えていった。


 そうだよ。僕には涼子さんという素敵な女性がいるんだよ。だから安井お前に涼子さんの事を渡すわけにはいかないんだよ。


 そう言えば、安井のラブレターから始まったんだよな、この話。


 そんな因果関係があって、僕と涼子さんは付き合う事になった。


 でもこれは運命なのかもしれない。まだ僕は西宮さんの心の奥底にある何かを知らない。涼子さんは生まれたときに公衆便所で見つかって、施設に入ったという。これは衝撃的な事だ。にもかかわらず涼子さんはそれを糧にいじけたりはしない。僕はこれから涼子さんの事を知っていけば良いのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ