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第二話 予想外の悲劇 part1

「いたた……」

 体に傷はないが、あちらこちらが焼けるように痛い。

(俺は……そうだ。確かルクロにマグマを浴びせられて……その後のことは……思い出せれないな)

 記憶が飛んだのか、もしくは思い出さないようにしているのか。どちらにしても、ひどい目に遭った……。

 もうルクロを怒らせないと心に誓った。

 そう言えば、シロノは? あいつはどこ行った?

 辺りを見渡すと、彼は俺の隣でうなされながら寝ていた。

『うぅ……あつい……あついよぉ……』

 どうやら、シロノは夢の中でもルクロに襲われてるらしい。

 俺を刺そうとした罰だ、と思ったが、あまりに可哀想だったので起こしてあげた。

『おぉい、起きろぉ。もうルクロは寝たから大丈夫だぞ』

 体を揺さぶり、白目をむいたシロノを起こす。

 少ししてから、彼は生き返ったように勢いよく起きた。そのせいで俺の頭とシロノの頭がぶつかった。

 衝撃が強くて、めまいしたけど、それは生きていることを味合わせてくれた。

『イッ――――‼ きぃらぁあ、こわかったよぉ』

『ちょ……やめろ抱き着くな』

 自然と彼の左手に警戒がいく。(もちろん、何も握ってなかった)

 ここは脳内だから傷がないのは当たり前だし、死ぬことはない。外の世界じゃなくてよかったとしみじみ思う。

 ルクロが外の世界で同じことをしたら、きっと街の一つは潰れるだろう。……怖い想像はもう止そう。今はここに用があるんだ。

 意識を逸らすため、顔を上げて、目の前の建物を見た。

 それは――城だ。比喩ではなく城そのもの。五十メートルを超えていそうな城。

 屋根は蒼く壁が白く所々に窓のような穴がある。

 こんな印象が強い建物なら、忘れるわけがないんだけどなぁ……。

 どうして、ギルド前(ここ)にいるか分からない。

『……ねえ、キラ。ここ……どこ?』

『シロノも知らないのか』

 ま、さっき起きたもんな。知らなくて当然か。

 俺の発言に、目を開くシロノ。

『シロノもって、キラも分からないの?』

『うん、シロノが起きる少し前に俺も起きたんだけど、もうここに座ってた。……出入りしてる人たちは武装してるから、ギルドで間違いないみたいだぞ』

『じゃあ……まさかルクロが……』

 また空中で寝ているルクロを見て、確信した。

『いや、ないだろ』

『そうだね』


『ま、理由がどうであれ、よかったんじゃないの?』

 立ち上がり、城の前に立つ。

 改めてみると、圧倒する雰囲気が中から漏れ出している。それは熱気、殺気。いろんなものが入り混じった空気が開いた扉から出ている。

 俺たちは、これからこの人たちと同じ冒険者になるんだ。

『んじゃあ、行こうか』

 ゆっくり、数段ある階段を一段一段、踏みしめながらギルドの中に入る――


 いざ、入り口に立つと思う。

「なんでこんなに出入り口がデカいの?」

 と、呟いてしまうほどの大きさだ。五メートル以上はありそうな出入り口。

 内側には分厚い扉らしき茶色の木製の板に黒く丸いドアノブが付いているそれは、両壁に付けられた鎖に繋がれている。

「――でさぁ~、わっ!」

 唐突にドンと背中を押された。倒れまいと足を出したけど、緊張のせいで転んでしまった。

「い……てぇ」

「大丈夫⁉」

 その声に反応して、すぐに顔を上げる。横にはしゃがんだ女の人が居た。

「は、はい。大丈夫で――……」

 目線が低いせいで、視界にスカートの中が見え……見えそう……

『こらっ』

『――――ッ‼』

 シロノが頭を叩いてきた。割れたと思うほどの激痛が襲ってきた。

『な……なにするんだ‼』

『今、パンツ見ようとしたでしょ!』

『――っ。……してない』

 クッソ、ホントに心読まれてるんじゃないか、これ。

 彼はまだ俺を疑っているようで、「ホントに~?」と目を細めている。

 ……本当だって。さすがに見知らぬ人のパンツを見ようとは思わないって。まあ、見たかったけど。

「……本当に大丈夫?」

 その声に反応して、体を起こそうとした時、白いパンツが見えてしまった。

「〰〰〰〰ッ‼」

「…………?」

 顔が熱くなって、思わず緩んでしまう口元を手で覆い隠した。

「あっ……だ、だいじょうぶです!」

 必死に声が上ずるのを堪えた。彼女は「そっか」とほほ笑み返した。

 その純粋な表情に申し訳なさと恥ずかしさで、俺はその場を勢いよく外に飛び出した。


 どれだけ走っただろう。

 あの城は建物の間に見える。緊張から解放されて、近くのベンチに腰掛けた。

「はぁ……」

 息を吐き、上がった肩を下ろした。

 いやまさか、本当に見えるとは思わなかったな。あの白いパン――! 思い出すな! 気持ちが落ち着いたって言うのに、思い出したらまた振出しに戻るから……夜、思い出そッッダアァァァアアアア‼

 またあれだ。あの頭を割れるくらいの激痛。

『――だから何だ⁉』

 もちろん、シロノに頭を叩かれた。

 彼は目を細めて、

『夜に思い出すだって? 恥はないわけ?』

『…………恥は、ない、わけではない、かな……ってちょっと待って! もう頭叩かないで! 本当に割れるから! っていうか、力強すぎない? 遠慮がなさ過ぎてルクロみたい――嗚呼ッ! 今のなし! ホントにダメ! 近づいて……近づいてくんな! ごめん、ごめんなさい! ルクロみたいって思ったこと謝るからッ! ねっ? 許して?♡』


 この後、滅茶苦茶にされた。


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