武帝6 皇太子の成長は
和嶠と武帝さま、かなり仲良し。
ところで武帝さま最大の悩み事といえば、
皇太子、司馬衷の凡愚っぷり。
こいつ本当に大丈夫なのかって、
武帝さま自らテストしたこともあった。
そんな武帝さま、和嶠にある日、言う。
「そろそろ、衷もマシになってきた
……んじゃないかな。どうだろう。
確認してきてはもらえんか?」
なにせ、アレですよ。
司馬衷を皇太子に指名したのは、
他ならぬ武帝さまです。
てことは、司馬衷が皇太子の器じゃない、
と認めるのは、武帝さまの見識が
疑われちまうことにもなり。
そんな確認、ホイホイ変なヤツに
任せらんない訳です。
なので和嶠、司馬衷の様子を確認。
帰ってくる。
「ど、どうだった?」
「だめです」
和嶠為武帝所親重,語嶠曰:「東宮頃似更成進,卿試往看。」還問「何如?」答云:「皇太子聖質如初。」
和嶠の武帝に親重せらる所と為るに、嶠に語りて曰く:「東宮は頃に更に成進せるに似たり、卿は試みに往きて看るべし」と。還ぜるに「何如?」と問わば、答えて云えらく:「皇太子の聖質は初の如し」と。
(方正9)
司馬衷(「崔浩先生」より)
司馬炎の息子。どうしようもない暗愚な人であったが、この人の子(司馬遹)が聡明であったため、つなぎとして皇帝にしておこう、という事になった。軽いな、帝位。しかし朝廷内のいざこざによって司馬遹は殺され、あれっそしたらなんでこの人皇帝になってんの? 状態になる。宙ぶらりんな皇統に付け入る隙ができ、楽しい楽しい八王の乱が勃発するわけである。八王の乱中、彼は都合のいい旗頭として振り回されっぱなしであったが、さて、それにどこまでストレスを抱えていたのやら。
あぁ、この人を紹介する時の定型文よろしい名台詞があるな。紹介しておこう。戦乱、凶作によって穀物が失われ、民が飢えていると聞きつけ、かれは「穀物がなければ肉粥を食べれば?」と放言したと言われる。マリー・アントワネットのアレは創作だが、こちらは史書に乗っている。しかし史書そのものが創作バリバリであるため、こちらも割と怪しいのは否めぬ。
司馬炎の発言の、「更に成進せるに似たり」から漂う自信のなさが切なくてヤバい。「成長してる、っぽいよね?」って陛下、そこは頑張って言い切りましょうよ。




