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世説新語 on なろう  作者: ヘツポツ斎
名士編 竹林七賢

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625/846

阮籍5  母を弔う2   

阮籍げんせきの母の葬式でのことである。


ときのセレブリティ、裴楷はいかい

弔問にやってきた。


見れば喪主のはずの阮籍、

べろんべろんに酔っ払い、

ざんばら髪で、床に足を投げ出し、

全く慟哭する様子もない。


すると裴楷もまた床に膝つき、

死者への哭礼、喪主への挨拶をし、

退出した。


この様子を見て不思議に思った人が、

裴楷に質問した。


「葬式のマナーといえば、

 喪主が慟哭し、弔問客が

 礼儀を尽くす、というものでしょう。


 喪主でなく、弔問客のあなたが

 慟哭する、というのでは、

 しきたりに適っていないのでは?」


すると裴楷、こう答える。


「阮どのを我々の尺度に

 はめてどうするのかね。


 かれはかれなりのスタンスで

 母上を弔っている。


 だが、われわれ俗人は、かれとは違い、

 しきたりに従うしかないのだよ」


この返答を受け、当時の人々は

なるほど、阮籍と裴楷、どちらもが

死者を深く悼んでいたのだな、

と感嘆するのだった。




阮步兵喪母,裴令公往弔之。阮方醉,散髮坐床,箕踞不哭。裴至,下席於地,哭弔喭畢,便去。或問裴:「凡弔,主人哭,客乃為禮。阮既不哭,君何為哭?」裴曰:「阮方外之人,故不崇禮制;我輩俗中人,故以儀軌自居。」時人歎為兩得其中。


阮步兵は母を喪じ、裴令公は往きて之を弔す。阮は方に醉い、髮を散じ床に坐し、箕踞して哭かず。裴は至れるに、地に下席し、哭し弔喭せるを畢え、便ち去る。或るもの裴に問うらく:「凡そ弔なるは、主人は哭し、客は乃ち禮を為さん。阮は既にも哭かざるに、君は何ぞにてか哭を為したらんか?」と。裴は曰く:「阮は方外の人なれば、故に禮制を崇えず。我が輩は俗中の人なれば、故に儀軌を以て自ら居す」と。時の人は兩に其の中を得たるを為したるに歎ず。

(任誕11)




見方によっちゃ裴楷の慟哭ポルノに阮籍の態度が消費されてる印象にもなる。インタネッツにおける「意識高いふるまい」にも近しい気がするのだよな。ただ、この辺については「風紀を乱した」ために殺されたケイ康の例を持ち出すと、うかつにマナーを破れば殺される、という危険性もはらんでいたりする。安易に笑うわけにも行かないのか。

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