庾亮21 庾翼出征
庾亮さまの弟、庾翼は中原を奪回したい、
という意欲に燃えていた。
のだが、庾亮さまが宰相であった頃には
そんな大権をふるえるような
立場でもなかった。
後に庾亮さまと庾翼の間の兄、庾冰が
中央の取り仕切り役につくと、
庾冰は庾冰でやはり
「ヘイハフショウノウツワー」
とか老子みてえなことほざきやがる。
兄と喧々囂々《けんけんごうごう》にやり合った末、
何とか北伐の為の軍権を手に入れる庾翼。
荊州や漢中の士卒、軍資。
かき集められるだけの船や車。
そう言ったものを
荊州の前線基地、襄陽にかき集める。
ちなみにその中には、
若き日の桓温さまもいたりした。
数万規模の軍容を一堂に会させる。
はためく晋の旗、煌めく兵士たちの甲冑。
庾翼は一本の矢を手にし、宣言する。
「こたびの我が出征、
射放たる矢の如し!」
この動作を庾翼、三度繰り返す。
そのたびに兵士たちのテンションは上がり、
そのボルテージは十倍にもなるのだった。
庾稚恭既常有中原之志,文康時權重,未在己。及季堅作相,忌兵畏禍,與稚恭歷同異者久之,乃果行。傾荊、漢之力,窮舟車之勢,師次于襄陽。大會參佐,陳其旌甲,親授弧矢曰:「我之此行,若此射矣!」遂三起三疊,徒眾屬目,其氣十倍。
庾稚恭は既に常に中原の志を有す。文康の時にては權の重き、未だ己に在らず。季堅の相に作さるに及び、兵を忌み禍を畏れ、稚恭と歷を同異せる者は之に久しく、乃ち果たして行く。荊、漢を傾かしむ力、舟車を窮む勢、師は襄陽に次す。參佐の大いに會せるに、其の旌甲を陳ね、親しく弧矢を授けて曰く:「我の此の行、此の射の若しなり!」と。遂に三起三疊し、徒眾は屬目し、其の氣は十倍たり。
(豪爽7)
三度繰り返したら茶番にもなっちゃいそうではあるが、単純な動作の繰り返しってのはボルテージを上げるためにも重要な気もしますしねえ。
まぁ、後世人は結果を知っているのでしらける所はありますね。失敗って言うか、そもそもうまく動かせなかったしね、庾翼さん。




