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世説新語 on なろう  作者: ヘツポツ斎
黄昏時の宰相 謝安

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372/846

謝安43 召伯の仁    

桓玄《かんげん》が謝安《しゃあん》さまの邸宅を

自身の公務を行う府営として改築、

運用しよう、と考えた。


そこにすすっとこぼすのが、謝混《しゃこん》。

謝安さまの、孫である。


「周《しゅう》の時代が未だ盛んであった頃、

 周の王子、召伯《しょうはく》は自らの執務のために

 役所を造営するなどとんでもない、と

 梨の木の下で民草の訴えを聞きました。


 その仁徳に深く感じ入った民草は、

 いかにその木になる梨が甘かろうと、

 召伯の役所を損ねる真似はすまい、

 と切ろうとしなかったと言います。


 しかるに我が祖父、文靖《ぶんせい》公の徳は、

 五畝ほどの広さの小さな家をすら

 満たすことができぬのですね」


オメーうちのじっちゃんの

徳を損ねる気なんだな、

オッケーオッケー止めねえよ。


けどじいちゃんの

徳がしょぼいと証されるのは悲しいぜ、

俺はすっげー悲しいぜ、泣くぜ?


そんな感じの訴えである。


さすがの桓玄も自分の行いが

任徳に悖ると気づくと、計画を

取りやめにせざるを得ないのだった。




桓玄欲以謝太傅宅為營,謝混曰:「召伯之仁,猶惠及甘棠;文靖之德,更不保五畝之宅。」玄慚而止。


桓玄の謝太傅が宅を以て營と為さんと欲せるに、謝混は曰く:「召伯の仁は猶お惠みが甘棠に及べるも、文靖の德は更に五畝の宅も保んぜず」と。玄は慚じて止む。


(規箴27)




謝混


謝安の孫だから、当然ながらかなりの名声を博している。ついでに言うとトップクラスの詩人としても名を馳せている。当時の形而上学的、概念的な詩風に山水の明媚なるを歌う気風を持ち込み、当時の潮流に革命を起こしたのだ。


そんな彼は、晋の末期、晋の主導権を巡って劉裕《りゅうゆう》と劉毅《りゅうき》が争ったときには劉毅サイドについた。そして劉裕は謝混がトップ名士であると知りながら、いや、名士であったからこそ、「劉毅に属する者は許さない」と、彼を投獄、殺した。


後に劉裕が皇帝になった時、親族の謝晦《しゃかい》は「この場に謝混がいないのが、恨めしく思えて仕方ありません」と劉裕に言いつのっている。


かなり危ない発言なのだが、劉裕は劉裕で「そうだな、俺も寂しいよ」と返している。


このやり取り、めっちゃひやひやする感じがあって好き。

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