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世説新語 on なろう  作者: ヘツポツ斎
英雄にして姦雄 桓温

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桓温59 優柔不断のひと 

范汪《はんおう》は、いわゆるいたずら坊主である。

いろんな企みをしては

相手をひっかけるのだが、

策謀が多くなりすぎて

失敗することもちょくちょくあった。



ある時などは簡文《かんぶん》さまが開いた

清談サロンで盛大に大ゴケした。


なので范汪、王濛《おうもう》に助けを乞う。


「お、王濛殿! たすけてくれ!」


この時の王濛のコメントが、

また辛辣である。


「無理。私には山を

 引っこ抜けるだけの力などない」


まぁ、やらかす人だったようである。



そんなことをしているうちに免職され、

都から離れた地、東陽《とうよう》に隠居。


さてこの頃、桓温《かんおん》さまが姑孰《こじゅく》にいた。

なので范汪、桓温さまの元に出向く。


朝廷に対し不満を抱いている者たちを

集め、朝廷を転覆させる。

そのような野望を抱いていた

桓温さまである。


范汪が建康で有名であったことを受け、


「すげえ! あんな有望株が

 俺の元に来てくれた!」


と狂喜乱舞。范汪がやってくると、

窓から身を乗り出し、周りの連中と、

すげえ奴が来たぜ、と話し、笑いあう。


「おい袁宏《えんこう》、范汪には

 九卿クラスの待遇がふさわしいよな?」


どんだけ嬉しいんですかアンタ、

そう言う袁宏さんのツッコミが

聞こえてきそうである。


ともあれ范汪、桓温さまらが

居並ぶ部屋に招かれる。


「遠路はるばる、よく来てくれた」


にこやかに対応する桓温さまを見て、

さて、と范汪は考えるのだった。


確かに、桓温さまの元に

投じようとは思っていた。


のだが、時の権力者におもねった、

尻尾を振った、などと思われてしまえば、

自分の名誉も傷つくのではないか、

そう恐れ、迷った。


なので、思わず心にもないことを

口走ってしまった。


「いやあ、わたくし、陛下への忠誠を

 誓っているのですけれどもね。


 亡き息子の墓が、

 ここ姑孰にございまして。


 かれのことを偲びたいと思って、

 今回はやって参ったのですよ」


えー、そういうこと抜かすかよ。


優柔不断なふるまいの范汪に、

桓温さま、一瞬にして失望。


さっきまでのあの喜びようは、

どこぞに飛び去ってしまうのだった。




范玄平在簡文坐,談欲屈,引王長史曰:「卿助我。」王曰:「此非拔山力所能助!」

范玄平は簡文が坐に在りて、談じて屈さんと欲せど、王長史を引きて曰く:「卿、我を助くべし」と。王は曰く:「此れ山を拔きたる力すべき所なれば、助くるを能うに非ず!」と。

(排調34)



範玄平為人,好用智數,而有時以多數失會。嘗失官居東陽,桓大司馬在南州,故往投之。桓時方欲招起屈滯,以傾朝廷;且玄平在京,素亦有譽,桓謂遠來投己,喜躍非常。比入至庭,傾身引望,語笑歡甚。顧謂袁虎曰:「範公且可作太常卿。」範裁坐,桓便謝其遠來意。範雖實投桓,而恐以趨時損名,乃曰:「雖懷朝宗,會有亡兒瘞在此,故來省視。」桓悵然失望,向之虛佇,一時都盡。

范玄平の人の為りは、智數を用うを好む。有る時、數の多きを以て會を失す。嘗て官を失し、東陽に居せるに、桓大司馬は南州に在す。故に往き、之に投ず。桓は時に方に屈滯をして起たしめて招き、以て朝廷を傾けんと欲す。且つ玄平は京に在りて素より亦た譽有り。桓は謂えらく「遠きより來たりて己に投ぜんか」と。喜び躍りたること非常なり。入りて庭に至りたるに比し、傾身し引きて望みたるれば語りて笑歡せること甚し。袁虎を顧みて謂いて曰く「范公は且しく太常卿を作さるべし」と。范は裁きて坐す。桓は便ち其の遠來の意を謝す。范は實に桓に投じたりと雖も、趨せるを以てて時に名を損ぬるを恐る。乃ち曰わく「朝宗に會せるを懷きたると雖も、亡兒の瘞めたる有り。此には故より來たりて省視せるに在り」と。桓は悵然として失望し向の虛佇は一時にして都く盡く。

(假譎13)




范汪さんは、あの范曄さんの曽祖父に当たります。うーん、この曽祖父にしてあのひ孫あり、という感じで美しいですね☆

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