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絹のようにさらさらとした黄金に輝く髪を揺らしながらこの城の王女であるリシアは走っていた。

誰にも見られないように、かつ出来るだけ遠くに逃げれるように。

当然のごとくその姿は侍女たちに見られている。

だが、それについて何かを言う者達はいない。

それどころか気づかぬ振りをし尚且つ危険な場所に行かないように誘導している節もある。

第三者が見れば走っていると言う事を咎めないと言うのはいかがな物かと思うだろうが…。


そんな風にリシアだけが知らない援助を受け走りついた先は王城の最奥である後宮だ。


「どこにかくれよう…?」


庭に出る前に勉強していた自室は近くにある。

だがそこは真っ先に捜しに来るだろう事は子供のリシアにだって分かることである。


「お母さまのお部屋とお姉さまの部屋どっちにしようかなぁ」


自分の居住場所とはいえ知らない部屋も多くある。

まだ幼いリシアは自分の知っている場所にしか行きたくは無い。

そうなれば親である父や母のとこもしくは優しい姉達の部屋に絞られる。

父や兄の部屋という選択肢が無いのは嫌っているわけではなく仕事の邪魔にならない様にする為である。


「お母さまの部屋に決めた!!お姉さまはすぐにお菓子につられるもん」


実際はお菓子に釣られるほど姉は幼くは無いのだがリシアにとってはそんな印象の存在であった。

そんな可愛らしい愚痴を呟き母親の部屋へと向かう。

母の部屋の近く、もっと言えばその区画には一部の人間しか立ち入りを許されておらず侍女の数もぐっと少なくなる。

理由は簡単でリシアの母は病に侵されている。

感染の類はない物のあまり物音などで心労をかけたくないと言う国王の配慮からこういう形となった。

何かあればすぐに人を呼べる魔法道具もある。


そんな部屋を目指す途中、リシアはふと足を止めた。

何度も通った廊下である、間違えるはずも無い。

それに今は追われているため時間にそれほど余裕があるわけでは無い。

それなのに足を止めた理由はそこにあった。


煌びやかな王城とは明らかにかけ離れた無骨で重厚な扉。

その大きさは大人三人は悠々と通ることが出来る。

そんな扉を前に立ち尽くすリシア。


「こんな部屋あったかなぁ?」


疑問に思いながらもその扉を後にしようとしたその時、懐かしいような香りがリシアの鼻腔をくすぐる。

扉のほうに目を向けると閉まっていたはずの扉が少しばかり開いていた。

その香りは中から香る。


「なんだろう…分からない…けど…いかなきゃ…」


香りに誘われるように扉に向かい力を込め自分が通れる隙間を用意する。

本来であればリシアのような子供が開けれるほど軽くは無い扉がズズと音を立て動き出す。


扉の先は地下へと続く階段であった。

石造りの壁に転々と焚かれた松明以外照らすものが無い。

そのため薄暗くそれも階段は螺旋状になっているのか先が見えない。

当然子供が一人で来る様な場所ではない。

しかし何かに誘われるようにゆっくりとその階段を下りていく。


後ろで閉まる扉には気づかずに…。




どのくらいの時間、暗い階段を下っただろうか。

明らかに城の地下へと続く長さである。

松明の灯りがこれほどまでに不安を掻き立てるものだっただろうか。

不気味なほどに静かな階段、リシアの足音のみ響き一人だということを再認識させられる。

リシアの足を動かしているのは下るほど強くなっていく懐かしい香り、ただそれだけである。

使命感にも似た思いを抱きながら前に進む。


しばらく経ち、そろそろ重くなり始めた足をさらに進めると青白い光が壁を照らし始めた。

魔法による光だとは知らないリシアはその光に安堵を覚える。


「お外?」


地下に外とは常識に囚われない子供らしい発想だが下り切った先を見れば誰もがその感想を口にしただろう。

地下とは思えない雄大な草原、あるはずの無い空に太陽。

頬を撫でる風が現実だと思わせた。

草同士が擦れ合う音は行くべき道を教えてくれる。

リシアは先ほどまでの疲労を忘れ、ただその音に従い歩き出した。


「ふん~♪ふんふんふん~♪」


草原を踏みしめ、不安など無かったように鼻歌を歌いながらくるくると回るその姿はまるで大地の妖精を思い出させる。


「たのしいなぁ、そうだ!!お母さまにも教えてあ~げよっと」


入ってきた場所が分からなくなるぐらい広く、綺麗な場所であった。

少しばかり歩いていると丘の上に一軒の家が建っている。

その家は白を基調とし屋根は青く周りの風景に良くあっていた。


「ん~?、甘い匂いがする~」


その匂いは丘の家から香ってくる。

先ほど焼き菓子を食べたばかりだというのに甘い物に目がないリシアは匂いのするほうと歩いていくのだった。

修正します。たぶん・・・いつか

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