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同じ境遇

 

 

 ソーサーに載せた紅茶のカップを、佳音の前に置きながら、真琴が佳音の頬を伝う涙に目を止める。向かい合う古庄は、それを想定していたらしく、その涙を見ても特に驚くことなく、じっと佳音の泣く様を見守っている。

 

「抱いててくれて、ありがとう……」

 

 真琴が声をかけて、佳音の腕から円香を受け取った。そして、古庄もおもむろに口を開く。


「……どうした?なにがあった?なにか助けてほしいことがあって、ここへ来たんだろう?」


 古庄の優しい響きを伴う言葉に、佳音の心が震えて、涙がもっと込み上げてくる。


「また……、『死にたい』なんて思ってるんじゃないだろうな?」


 これまでも、佳音が寂しさや苦しさに挫けそうになって『死んでしまいたい』と思ったとき、古庄はいつでも佳音を励まし、立ち直らせてくれた。

 でも、工房を持ってひとり立ちしたとき、心もきちんと自立して、古庄と真琴に頼るのはもうやめようと思っていたのに……。今はまたこうやって、小さな子どものように泣くことしかできない。

 

「困ったときに、私たちのことを思い出してくれて、本当に嬉しいの。話してくれたら、なにか力になれることがあると思うのよ?」


 真琴からも諭されて、佳音はこの苦しさを吐き出したいと思うけれども、なにからどんなふうに切り出したらいいのか分からなかった。



 古庄と真琴は黙ったまま、ただひたすらに待ってくれた。ダイニングには、円香が時折たてる声と、佳音が鼻をすする音だけが響いていた。

 


「……先生たちが、うらやましい……」

 


 そして、ようやく佳音がポツリとつぶやいた。

 

「うらやましい?」

 

 佳音が発したことの意味を探るように、真琴がその言葉を繰り返す。

 

「だって、愛し合って結婚して、子どももたくさん作って……、こんなに賑やかであたたかい家があって……。私も、そうなりたいって思って、一生懸命生きているのに……、全然うまくいかないの……」

 

 声を途切らせながら、佳音が語るのを聞いて、古庄と真琴も考える。

 二年前に会った佳音は、工房を開いて自分の夢を一つ実現させ、その前途にある大きな希望に顔を輝かせていた。それが、こんなふうになってしまった理由は……?


「……仕事がうまくいってないのか?仕事の依頼がこないとか……?」


 古庄の問いかけに、佳音は首を横に振った。仕事は工房を開いたころに比べたら、ずいぶん順調だった。逆に、この数日間何も手に付かなくなったせいで、しなければならない仕事が滞ってしまっている。

 


「仕事のことじゃなくて。……私、好きな人ができたんです……」

 


 これを聞いて、古庄も真琴もその意外さに息を呑んだ。

 佳音は、高校を卒業した後も、ずっと古庄を慕い続けていた――。それは、真琴だけではなく、古庄自身も感じ取っていたことだった。

 古庄を慕いながらも、自分たちのことを祝福し幸せを願ってくれる佳音のことを、古庄も真琴も本当に可愛いと思い、いつも気にかけていた。


 その佳音に、好きな人ができた。

 自分の殻を破って一歩踏み出せたその事実は、古庄と真琴にとって喜ばしいことだったのだが、目の前にいる佳音は、こんな風に泣いている……。


「……その男に、フラれたのか?」

 

 古庄が発した問いは、状況から考えると当然のものだった。しかし、佳音はまた首を横に振った。


「その人は……、私のことを『愛している』と言ってくれました」

 

 その事実を告白するとき、切ない感情が込み上げてきて、佳音の目には涙がいっそう溢れてくる。


「……だったら?どういうことだ?」


 好きになった人から『愛している』と言われて、どうして泣く必要があるだろうか?古庄は眉根を寄せる。

 真琴は円香を抱いたまま立ち上がり、少し席を外すと、ハンドタオルを持って戻ってきた。


「好きになってはいけない人と、想いが通じ合ってしまったのよね?」


 真琴がそう言いながら、佳音にハンドタオルを差し出すと、佳音はそれを受け取って、目元を押さえて頷いた。

 思いがけないことに、古庄も佳音を凝視する。



「……私にウェディングドレスの依頼をしてきた女性と……、婚約をしている人です」



 絞り出すように、佳音の口から語られたことの深刻さに、古庄も真琴も身につまされるように悲痛な表情を浮かべた。佳音に対して、なんと言って言葉をかけていいのか分からず、沈黙が漂うなか、時間だけが流れていく。


 でも、ただ黙っていても何も解決はしない。膠着した状態をなんとかしようと、真琴が沈黙を破った。


「その、好きになった彼は、このまま婚約者と結婚しようとしているの?佳音ちゃんのことは、どう考えてるの?」


 真琴の問いに答えるかたちで、佳音もようやく口を開く。


「……彼は、なんとかして、ここに……、私の工房に『戻ってくる』と、言ってくれました」


「そう」


 真琴は安心したように少し息を抜いて、表情を緩ませた。


「だけど私は、二度と来ないでと言いました。あなたは私には必要ないとも、言いました」


「相手は『なんとかする』って言ってるのに、なんでそんなこと言うんだ。相手のことが、そんなに泣くほど好きなんだろう?」


 まるで理解できないといった口調で、古庄は思わず前のめりになる。

 心の中の真実を言い当てられて、佳音の瞳からは涙がとめどなく流れた。

 

「佳音ちゃんは、その人の花嫁になる人のウェディングドレスを作ってたんだから、罪悪感もあったのよね?ドレスには、『幸せになってほしい』っていう佳音ちゃんの真心が込められているんだもの」


 佳音の心を推し量って、真琴がそれを代弁してくれる。


「それに……、花嫁さんは、一緒にいる人を楽しくさせるような、明るくて活発な人で、会社の重役の娘さんなんです。私なんかよりも彼女といた方が、あの人はきっと幸せになれるんです……」


 佳音のこの言葉を聞いて、真琴はますます悲痛な表情を見せた。それから、古庄と目を合わせて、眼差しだけで会話をする。



「……佳音ちゃんの気持ちは、よく分かる。消えてなくなりたいくらい、切なくて辛いのよね?」



 真琴の慰めに対して、佳音はうつむいたまま激しく首を振って、それを拒絶した。

 


「……ううん!賀川先生には分からない。古庄先生にこんなに愛されて、こんなに幸せな毎日を送ってる先生には、私の苦しさなんて分かりっこない!」

 


 かえって自分が惨めに感じられてくるような、生半可な憐みなんてかけてほしくなかった。そう言われてしまうと、真琴もかける言葉が見つけられず、悲しそうに目を伏せる。

 

「……いや。俺たちも同じような経験をしてる。だから、お前の境遇や気持ちは、まるでトレースしたみたいによく分かるんだ」


 投げかけられた古庄の言葉に不意を突かれるように、佳音は思わず顔を上げた。

 

「同じような……って?」


「俺たちが出会ったとき、俺にはすでに婚約者がいたんだ。そしてその人は、真琴の元同僚の親友だったんだよ。もちろんそのときは、真琴がその人の親友なんて俺は知りもしなかったし、真琴も親友の婚約者が俺だったとは知らなかったけどね」

 

 衝撃的な事実を知って、その事実を確かめるように、佳音は涙の溜まった目で古庄と真琴を交互に見やった。


 そういえば、佳音が高校1年生だったころ、古庄が結婚するというような噂を聞いた覚えがある。そのとき、結局古庄は結婚しなかったみたいだが、その裏でそんな出来事があったなんて、当時生徒だった佳音には知る由もなかった。

 

「俺には婚約者がいるのに、俺は真琴のことを一目で好きになった。俺もかなり悩んで苦しかったけど、真琴は俺と親友との間に挟まれて、俺以上にそうとう苦しんだはずだ」


 十年以上も経つ当時のことを思い出したのだろうか。真琴が唇を噛むと、涙がすっとその頬を伝った。

 

「俺は、どんな犠牲を伴っても真琴と生きていきたいと思って、結婚式を直前になってやめた。それで、真琴が納得してくれるまで待った。そして、真琴も苦しさを乗り越えてくれた。だから今、こうやって一緒にいられる。あの時、結婚するはずだった人を傷つけてしまったし、いろんな人に迷惑をかけてしまったけど、後悔はしていないよ」

 

 古庄はそう語りながら、何度も真琴と視線を交わして、想いを通い合わせているようだった。

 真琴もしみじみと噛みしめるように、古庄の言葉を聞いてから、自分の想いを語り始める。


「……誰も傷つけずに幸せになれたら、それが一番だけど。建前を重んじたり義理を通しても、すべてがうまくいくわけじゃないし、それで幸せになれるわけじゃないって、今は思えるの。……親友を裏切って傷つけてまで想いを通じ合わせても、罪の重さに堪えられないと思ってた。後ろ指をさされることも、怖かった。佳音ちゃんの場合は、自分の仕事への信頼性も揺らいでしまうかもしれない。……でも、一番大切なものは、なに?」

 

 佳音は問いかけられて、真琴の目を見つめながら考える。


 今の佳音にとって一番大切なものは、家族と断絶してまで夢を実現させた工房ではなく、愛しい和寿と……、自分の中に息づく和寿がくれた小さな命だった。

 

 じっと佳音を見つめ返して、真琴は佳音の瞳の奥に真実が光ったことを見て取って続ける。

 

「ただ私は、この人に……古庄先生に幸せになってほしいって、それだけを思ったの。この人は心から私を求めてくれていて、その幸せのためには自分が必要なんだって気づいたとき、自分を縛り付けていたしがらみからスッと解き放たれた気がしたの」


 和寿は……、古庄が真琴を求めているように、佳音のことを求めてくれているだろうか……。美しく溌剌(はつらつ)とした婚約者がいても、社長になることを約束されていても、それらをすべて捨てて、何も持っていない佳音のことを求めてくれるだろうか……。


 心から愛された実感を味わったことのない佳音にとって、それを信じるのはとても難しいことだった。佳音が真琴の言ったように思えるには、とうてい自信が足りなかった。

 

「だけど、あの人はもう姿を見せてくれないし。結婚式も迫ってきてるし。やっぱりこんな私のことなんて、もう忘れてしまってる……」


 佳音は唇を震わせながら、切ない涙をまたこぼす。

 そんな涙を流す佳音を見て、古庄もため息をこぼす。そのとき、手を伸ばしてきた円香に目をやると、気を紛らわせるように真琴の腕から抱き上げた。


「たやすく他人に心を開かないお前が、心から好きになった男だ。そんな薄情でいい加減な男のはずがない。『愛してる』といった言葉も、絶対に嘘じゃない。きっと今ごろ、死ぬような思いをしてでも『なんとかして』いるはずだ」


 古庄の言っていることは何の確証もないものだったが、同じ経験をした者だから言える力強さがあった。

 勇気づけるように佳音に優しく微笑みかけて、古庄は言葉を続ける。


「たとえ、そうすることで世間の信頼を失ってしまっても、その後しっかり地道に誠実に生きていれば、必ず取り戻せるよ。運命は、なるべくしてなってるんだ。どんなかたちであれ、お前がその男と出会えたのは、そうやって想いあって共に生きていくためなんだと、俺は思うよ。」

 

 そう言いながら、古庄が円香をあやすと、円香は嬉しそうに笑い声を立てた。

 まだ何も知らない無垢で屈託のない円香の表情に、佳音の張り詰めていた心も少しほどけていく。そんな佳音の様子を見て取った古庄は、しっかりと佳音に目を合わせてから言った。


「……『誰かのために』と思って、頑張ってきたんだろ?それで、心の底から想える人に出会える幸せが、やっと巡ってきたんだ。だから今、その幸せが通り過ぎてしまわないうちに、しっかりと繋ぎ止めておけ。この時ばかりは、『誰かのため』なんかじゃなく『自分のために』動かなきゃ、一生は他人を羨むばかりで終わってしまうぞ」

 

 そう言ってくれる古庄を、佳音は涙の溜まる瞳で見つめ返した。

『誰かのために』生きることは、かつて古庄が示してくれた幸せになるための生き方だった。そして、佳音はその言葉に望みをつなぐように、生きてきた。

 


「私も、幸せになれるのかな?この苦しさを乗り越えて、先生たちみたいに……」

 


 佳音の表情が穏やかに和いでゆくのを確かめて、真琴もホッと息を抜いた。

 

「私たちと境遇は似てるけど、佳音ちゃんは私たちとは違うわ。また違った幸せのかたちがある。ただ言えることは、本当の辛さや苦しさを経験したことのない人は、本当の幸せを感じることもできないの」

 

 真琴の励ましを噛みしめるように、佳音は黙ったままでうなずいた。


 まるで〝こわれもの〟のように繊細で敏感で、こんなにも純粋な佳音を心から愛したのは、どんな男性なのだろう。きっと同じように、純粋で誠実な人であってほしい……。

 真琴は佳音に微笑みかけながら、ただそれだけを願った。



「……紅茶が冷めちゃったわね。ちょっと淹れなおすわ」


 気を取り直すように真琴が椅子から立つと、古庄もあることに気がついた。


「お!そうだ。今日学校で、生徒からお菓子をもらってたんだよ。車に置きっぱなしだった」


 と、円香を抱いたままその場を離れる。


 しばらくして、佳音の前には香りのいい紅茶と小さなケーキが供された。

 

「今日は調理実習があったみたいで、たくさんもらってしまったから、職場の女の先生にもおすそ分けしたんだけど」

 

 古庄がそう言うのを聞いて、佳音もかすかに表情を緩めた。

 

「相変わらず、先生は女子にモテてるみたいですね」


「こんな既婚のオジサンにあげるより、好きな男の子にあげたらいいのにね」


 少しやきもちを焼いているのだろうか。ほんのりと皮肉を込めて、真琴が佳音に囁きかける。

 

「……オジサンになっても古庄先生は完ぺきだから。先生を見たら、きっとその辺の男子は目に入らなくなるんだと思います」


 実際、佳音がずっと誰にも恋心を抱けなかったのは、この古庄のことを引きずっていたからに他ならなかった。

 

 その固く凍り付いた佳音の心を、温かく解かし出してくれたのは和寿。

 目の前に出された小さなケーキは、いつか和寿が作って持ってきてくれたケーキとよく似ていた。あの時、和寿は、幼いころから抱いていた夢を語ってくれた。

 

 ――あの夢をかなえるためにも、私と一緒に生きていってください……。

 

 そんな言葉が、佳音の心の中に浮かんだ。

 本当にこの言葉が現実になってくれたら、どんなに幸せなことだろうと思う。


 けれども、和寿は幸世と結婚して、社長になる道を選ぶ決心をしているかもしれない。せっかく思い出した夢を、これからも胸に秘めたままで、生き続けていくつもりなのかもしれない……。


 ケーキを見つめたまま、考え込んでしまった佳音を、真琴は心配そうに見守る。

 そして、小さなため息をついてケーキを口に含んだ瞬間、顔色が変わった。


「………これ!!」


 思わず口に入っていたものを手のひらに吐き出して、シンクまで行って水道の水で流す。


「佳音ちゃん、食べちゃダメよ!これ、とんでもない味!!」


「ええっ?!」


 真琴の大げさな反応を見て、古庄も半信半疑で、ケーキの一片を口へ放り込む。


「○☆□×♨︎▲〜〜!!」


 顔を赤くして青くして、古庄は辛うじてそれを飲み込んだ。


「……あいつら!!砂糖と塩を間違えて作りやがったな!」


 佳音は悶絶する二人の反応を見て、それからケーキに再び目を落とした。


「こんなに美味しそうなのに……、食べられないなんて」


 思わず口から出てきた佳音のつぶやきに、真琴がおかしそうに笑いをもらす。紅茶を飲んで口を直した古庄も、朗らかに笑った。つられて、腕にいた円香もキャッキャと笑い始める。


 楽しそうな家族の様子を見て、佳音もほんのりと笑った。苦しさを乗り越えたからこそ、こうやって笑うことができるのなら、今の自分の苦しさも意味のあることなのかもしれない……。

 そんなふうに思いながら、佳音は温かい紅茶のカップを両手で持ち上げて、ゆっくりと口に運んだ。



 それから、佳音の工房の様子や生活の様子などの話を少しして、佳音は寝床へと案内された。

 真琴がリビングへ戻ってくると、古庄は明かりを消してカーテンを開け、窓辺で秋の夜空に輝く月を眺めていた。

 

「あら?円香は?」


「抱っこしてたら、コロッと寝たよ」


 真琴の問いかけに、古庄はベビーベッドを指し示しながら答える。真琴が我が子に歩み寄って、その安らかな寝息を確かめていると、今度は古庄の方が声をかけた。


「……真琴。……おいで」


 二人きりの時にしか聞けない深い声色に、真琴が目を上げる。すると、古庄は両手を広げて待っていた。

 

 まるで吸い寄せられるように、真琴は古庄の腕の中に納まり、その胸に頬をつけ体を預けながら、清かに光を放つ月を見上げた。

 こうやっていると、まるで初めて結ばれた夜に戻ってしまったようだった。

 

「君を抱きしめられる幸せを思うと、……あの時、勇気を出して、芳本さんに切り出していて……、今は本当によかったと思うよ」


『芳本さん』というのは、かつて古庄が婚約をしていた真琴の親友だ。

 先ほど佳音の話を聞いて、自分たちが出会った時のことを思い出したのだろうか。真琴の体がキュッとしなるほど、古庄はその腕に力を込めた。真琴にとっても、そんなふうに抱きしめられるのは本当に久しぶりだった。

 

「静香さんは、もう『芳本』じゃないんですよ。去年結婚してくれたから、私もやっと気持ちが楽になりました……」

 

 あの時、静香に辛い思いをさせてしまった重さは、ずっと真琴と古庄にのしかかっていた。でも、静香が心を犠牲にしてくれたおかげで、真琴と古庄はこうやって愛しい人を抱きしめることもできるし、四人のかけがえのない子どもたちも、この世に生を受けることができた。

 

「佳音ちゃんも……、今は本当につらいでしょうね……」


 自分たちが歩んできた道と同じような境遇にいる佳音の心を想像して、真琴がその目に涙をためた。


「大丈夫。相手の男は、きっと森園のところに戻って来るよ。婚約者がいるのに他の人への想いを自覚することは、もう自分が止められないっていうことだ。それは俺が誰よりも知っているから」


 古庄が確信を持ってそう言っても、佳音の状況を考えると、真琴はなかなか不安を拭えなかった。そんな真琴の髪を撫でながら、古庄は微笑んでみせる。


「『大丈夫』っていうのは、君の決まり文句だろ?森園もきっと、俺たちみたいに幸せになれるよ」

 

 古庄が耳元で囁いたそれは、まるで祈りのように真琴の心にいつまでも響いていた。







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