不思議な雑貨屋さん
-‐-―――カランカラン―――-‐-
出入り口のドアに付けられたベルが客の存在をつげる。
店に入ると所狭しとテーブルや棚が置かれており
食料品から武器防具まで様々な品物が置いてあった。
どうやら雑貨屋のようだ。
入店者は若い少年だが雰囲気が年相応のそれではなくなにか違うモノを感じる。
「いらっしゃい」
店の店主であろう人物がカウンターから少年に声をかける。
パッと見40~50代前後の店主は椅子に座ったまま少年をじっと見た。
「やっぱりこいつだ、坊主、ちょっと待ってろ」
少年が何か言おうとした瞬間に店主がやや大きな声でそう言い
奥の部屋に消えていった。
仕方なく少年はガサゴソ聞こえる奥の部屋の入口から目をそらし、商品を物色し始めた。
3分ぐらいたったころだろうか。
店主が奥の部屋から出てきた。
手には白磁色の懐中時計らしきものがある。
「お前さんが探しに来たもんはこれだろ?」
少年はすこし驚いた。
自分が探していた物を言い当てられた事に。
「確かに私が探していた物はその懐中時計ですが
なぜそれを知っているのですか?」
「それはな、昔まだこの店が本当に小さかった頃に来た
未来のお前さんから渡してほしいと頼まれたからだ」
店主はさも当たり前かのようにそう言い放った。
「未来の私ですか」
少年はその言葉には動揺することなく確認のために言葉を発する。
「ああそうだ。お前さんと姿がまったく変わらない奴が
店にやってきたときに頼まれたんだ」
『貴方はいずれこのような懐中時計を手に入れるだろう。
それからしばらく時がたった後に私とまったく姿が違わない者が貴方の店に来る』
『そしたら手に入れた懐中時計をその者に渡してくれ。
何か言われたら未来の自分から頼まれたと言えばいい』
『その分の代金は今ここで払う、頼まれてくれるか?』
「とな」
「そんなことがあるかとは思ったが
代金が前払いで額も大きかったからな、引き受けたんだ」
「あれから60年余り、まさか本当に来るとは。驚きたいのはこっちだよ」
店主はそこで言葉を切った。
次に少年が口を開く。
「そうですか。わざわざありがとうございます。」
彼はそれだけを言うと懐中時計を受け取り、店を出ようと出入り口へ向かう。
「ああ、それと未来のお前さんから伝言がある」
店主が彼が店を出る前に言った。
少年の足が止まる。
「面倒を増やしてしまってすまない、との事だ」
それを聞いた少年は「ああ」とだけ言い残し歩みを再開した。
-‐-―――カランカラン―――-‐-
ドアベルが客が去ったことをつげる。
少年は店を一歩出た後にふりかえる。
彼の視線の先にあったのは、ただの廃墟だった。
-‐-―――カランカラン―――-‐-
出入り口のドアに付けられたベルが客の存在をつげる。
店に入ると所狭しとテーブルや棚が置かれてはいるが
テーブルも棚も古びており、おいてある品物も数が少なくまばらだった。
その少数の品物から辛うじてこの店が雑貨屋だとわかる。
入店者は若い少女だが雰囲気が年相応のそれではなくなにか違うモノを感じる。
「いらっしゃい」
店の店主であろう人物の声がカウンターの奥の部屋から聞こえた。
少女は多くはない商品を物色するとカウンターへ向かう。
カウンターの前に少女が着くとちょうど店主らしき人物が奥の部屋から出てきた。
パッと見40~50代前後の店主は奥の部屋の入口に立ったまま少女をじっと見ている。
「やっぱりこいつだ、嬢ちゃん、ちょっと待ってろ」
少女が何か言おうとした瞬間に店主がやや大きな声でそう言い
奥の部屋に消えていった。
仕方なく少女はガサゴソ聞こえる奥の部屋の入口から目をそらし
何をするわけでもなくそこに立ったまま店主を待つ。
5分ぐらいたったころだろうか。
店主が奥の部屋から出てきた。
手には紫紺色の宝石らしきものがついた首飾りがある。
「お前さんが探しに来たもんはこれだろ?」
少女は驚いた。
彼がそれを手に持っていることに。
「確かにそれは私が探していたものですが…………なぜそれがここに?」
「それはな、少し前のまだこの店にいろんなもんがあった頃に来た
異世界のお前さんから渡してほしいと頼まれたからだ」
店主はさも当然かのようにそう言い放った。
「異世界の私から?」
少女はその言葉にもすこし驚きつつも言葉を返す。
「ああそうだ。お前さんより少し背の高い奴が店にやってきたときに頼まれたんだ」
『もうすぐ私より少し背丈の小さな少女が貴方の店に来るはずですが
その少女にこの首飾りを渡してください』
『もし何か言われても異世界の自分に頼まれたと言えば納得すると思います。』
『代金が必要でしたら今ここで払いますので、どうかよろしくお願いします』
「とな」
「すこし変とは思ったが払ってくれた代金の額が大きかったからな、引き受けたんだ」
「あれからちょうど一か月、まさか本当に来るとは。さすがに驚いたわ」
店主はそこで言葉を切った。
次に少女が口を開く。
「そんなことが……わざわざありがとうございます」
彼女はそう言い頭を下げると首飾りを受け取り、店を出ようと出入り口へ向かう。
「ああ、それと異世界のお前さんから伝言がある」
店主が彼女が店を出る前に言った。
少女の足が止まり店主へ振り返る。
「同じようなことがあったらすまない、との事だ」
それを聞いた少女は「分かりました」と言い歩みを再開した。
-‐-―――カランカラン―――-‐-
ドアベルが客が去ったことをつげる。
少女は店を出た後にふりかえる。
彼女の視線の先にあったのは、ただの洞窟だった。