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第4話:戻れない一歩
もう、戻る理由よりも進む理由の方が大きくなっていた。
約束の日。
ホテルの前で立ち止まる。
心臓がうるさいほど鳴っている。
「……やめたい」
そう思うのに。
足は動かない。
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中に入ると、あの男が待っていた。
「来てくれたんですね」
静かな声。
「……はい」
視線を合わせられない。
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差し出される飲み物。
「少し苦いですが」
その言葉に、一瞬ためらう。
でも――
飲み干す。
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苦味が広がる。
そのあと、じわじわと体の奥に広がっていく違和感。
熱のような感覚。
「……なんか……変……」
自分でも分からない。
不安と、戸惑い。
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時間が進むにつれて、感覚が変わっていく。
緊張がほどけていくような、
意識がぼやけていくような。
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(なんで……)
理解できない。
でも――
どこかで、逃げたい気持ちよりも別の感覚が強くなる。
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終わった後。
静かな部屋。
呼吸が乱れている。
体の奥に残る、消えない余韻。
「……こんなの……」
否定したい。
でも――
確かにそこにあった。
今まで感じたことのない快楽の感覚が。
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それを思い出してしまう自分に、ゾッとする。
「……最低……」
そう呟きながらも、完全には否定できなかった。
その感覚は、確実に心に残ってしまった。




