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第1話:決断の夜
守りたかったのは、壊れかけた日常だった。
「ごめん、今月も厳しいかもしれん」
そう言いながら、夫は缶ビールを開ける。
机の上には空き缶がいくつも並び、部屋には重たい空気が漂っていた。
「……うん」
私は小さく頷く。
昔は違った。
ちゃんと働いて、笑って、私を支えてくれていた。
それなのに今は――
仕事は続かず、酒に逃げる日々。
それでも。
(見捨てられへん…)
その気持ちだけが、私を縛っていた。
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生活は限界だった。
支払いは増え、収入は足りない。
気づけば借金に手を出していた。
そして届く督促状。
「……どうしよう……」
指先が震える。
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夜。
夫はソファで寝ている。
無防備なその姿を見ながら、私はスマホを手に取った。
“援助 高額”
検索してしまった瞬間、胸の奥がざわつく。
「一回だけ……」
言い聞かせるように呟く。
その言葉が、どこか現実感を失っていく。
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画面の中の条件を見ていく。
普通ではない内容。
でも――
(これなら…全部返せる…)
その考えが、頭から離れなかった。
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やがて一つのやり取りに目が止まる。
他よりも高い報酬。
その代わり、条件は異様だった。
画面を見つめる。
しばらく動けない。
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それでも――
私は、連絡を送ってしまった。
この時はまだ、自分が壊れていくなんて思っていなかった。




