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Free City  作者: 七賀ごふん
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7/45

#7



当然ながら、周囲の視線を強く感じた。皆こちらの様子を訝しげに窺っているものの、まじまじと見つめてきたりはしない。それが唯一の救いだ。

しかし、言ってしまえば当たり前。

男同士の揉め事……もとい、痴話喧嘩など珍しくもないのだ。この都市は同性愛者で溢れている。恋に生きる者のためにあると言っても過言じゃない。


“普通”に嫌気がさした人間が集い、自由に生きる為に存在している。それそのまま、Free City(自由都市)と呼ばれていた。下手をすれば一般人のほうが少ない、先鋭的だがアナーキーで危険な街だ。


由貴は就職と共に遠く離れた故郷からこの街へ移ってきた。ここへ来る前は同性愛者が結婚式場を荒らして回ってるとか、役所の戸籍課は暴動が起きるから鉄格子で囲まれてるとか、冗談のような噂を小耳にしていた。実際、それらは全て冗談だった。移住する者が続々と現れ、人口爆発することを恐れたセレブ達の上等なジョークだと。


結婚こそできないが、同性のカップルが生涯寄り添っていくための環境がある。理解がある。嬉しいのは、毎年記念日に特別休暇をもらえること。この地の守り神に祈りを捧げれば好きな人と一生幸せに暮らせるなんて迷信もあった。

少子化問題さえクリアすれば政府も目くじらを立てて同性愛者を追いやったりしない。何よりも価値観を尊重するこの街は、多くの人に愛されていた。この街全体が、愛に取り憑かれている。

だが一方で、住民のアンケートを基に発表される幸福度は低迷していた。


誰もが好きなように遊び回り、好きな人と夜を明かしているのに、幸せと感じている人は少数。それが奇妙でもあった。


噂……噂といえば、もうひとつ。不可解な都市伝説があった。守り神の迷信と関連しているのか、好きな人と結ばれるには何らかの不自由を背負う、という話。


その“不自由”が具体的に何を表すのか、それは知らない。ただ漠然と流布した噂だった。非現実的なものを好む人間達が捏造したものかもしれないが、何となく、そういった負の力も裏で働いてそうな気がした。ひとりひとりの想いは微々たるものでも、重なり合うと国を滅ぼすほどの怨霊になるなんてよく聞く。それはもはや神話に近かった。先人達が災害を嘆き、目に見えない何かを恐れた……いわゆる夢物語だ。




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