#9
「司さんは、心中……したいんですか」
思わず苦笑いで返すと、司は膝を片立て、そこに頬杖をついた。
「飛び降らなきゃいけない時が来たらの話だ。まずは来ないことを祈ろう」
死は最高の終焉だと言う。司はやはり、いつも死ぬことを考えてるんじゃないか。そんな不安ばかり肥大していく。
「何でそんなに俺のことが好きなんですか? ……俺、良いところなんて何もないでしょう。性格悪いし、変わってるし」
「俺も君と一緒。いつも独りで、誰かを求めて、助けを待ってる」
司は依然として、掠れた声で言葉を紡ぐ。
「俺が今まで付き合った人は……確かに皆良い人だった。だからこそ、必要以上に踏み込んでこないんだ。相手の深くまで知ろうとしない。表面の綺麗な部分だけ知ってたいみたいで、むしろこっちが晒そうとすると嫌がったんだ」
「何でなんでしょ」
「そういうものだから。誰だって好きな人の汚い部分は知りたくないからね。綺麗なものだけ見ていたい」
由貴の唇をなぞる指が、口腔内に潜り込む。
閉ざされた扉が開く。外から大量の空気が入っていく感覚がしたが、実際は中から出て行ったのかもしれない。
「でも本当の自分を見せられないって、不幸なことじゃないですか。俺はどっちかって言うと、ぐんぐん踏み込んできてほしいタイプです」




