#4
親切心で詳しく教えてくれる男性達から話を聞いてみると、正直反吐が出そうだった。それは由貴自身が「美人」という形容詞と縁遠いからかもしれない。
身長は平均より下で、高身長の女性には見下ろされる。容姿も平凡で、むしろ超がつくほど童顔だ。「可愛い」と異性に持て囃されることはあれど、同性愛者に声を掛けられた経験は皆無。バーでは未成年と間違えられることもしばしば、実年齢よりずっと若く見られてる自覚がある。
……と、自覚してる僻みはさておき、その美青年が稔と親しげに酒を飲んでいたという話を多くの客から聞き出すことができた。なんなら、一緒にホテル街へ消えていったことも。
これだけの目撃情報があるなら間違いない。
ほんのちょっとでいい。彼らに、自分を裏切ったことを後悔させてやりたい。
もちろん司の方が稔に迫られた可能性もある。ただ彼はプレイボーイとして有名で、街中のゲイから睨まれているらしい。
少なからず敵もいるようだ。一晩寝たらハイさようなら、というタイプかもしれない。
司が原因と仮定して、まずは自分が司に接近し、彼と関係を持つ。稔には敗北感を味わわせ、最後には司をこっぴどく振る。この間に二人の弱みになりそうなネタを掴めれば上出来、という寸法だ。
うん。……復讐というか、中々陳腐な茶番劇になる気がする。でも多少は仕方ない。
難点を上げるなら、完璧な司が自分のような凡人に好意を抱いてくれるか。それだけ不安だったが、案ずるより産むが易し、彼は会ったその日に連絡先を教えてくれた。
同業者ということもあり、仕事の話もよく弾む。司は話し上手で聞き上手の為、親しくなるのに時間はかからなかった。それから毎日猛アタックして、付き合ってほしいと告白した。彼はいつもの優しい笑顔で……いつもの受け答えのように、「喜んで」と言った。
その後の努力といったらお涙頂戴のレベルだ。ろくにやったこともない凝った料理を練習して、最低週二で弁当を届けたし、毎日おやすみメッセージを送った(今思うとあれは完全に引かれた)。
それ以外にも些細なミスはあったが、全体的に、確実に稔より尽くしていた。日々の気苦労を考えると本末転倒のような気がしたし、いつも優しい司と会うと最後の良心がきりきり痛んだ。しかし全ては復讐の為。心を鬼にし、偽りの恋人を演じた。
「はあ……」
なにかおかしい。焦る必要はないが、証拠を掴めるところまでいかない。
そうだ……ひとつ、どうしても抑えられない不安がある。
司と付き合ってもう二ヶ月が経つのに、稔どころか、他の男の気配をまるで感じない。




