#12
その象徴とも言えるのが、遠くで赤色に輝いている自由都市だ。きっともうすぐ多くの同性愛者がパートナーを求めてあの地へ赴くだろう。本来の自分を取り戻し、心安らぐ楽園に永住するつもりで。
……いつか、自分もあそこへ行きたい。
ひんやりとした窓ガラスに触れた。裸の自分が映し出されている。顔は知ってるけど、知らない男だ。花岡由貴という十七歳の無知な男。未熟な肉体。これから、男に抱かれる。
何が普通なのかも理解できないけど、なるべく窓の外を眺めようと努めた。
七色の光を散りばめた夜の街。それと重なる、半透明に映る自分の姿。けど何かが変わった気がした。誰にも言えない秘密ができたのだと高揚した。
周りの友人と一線を画した。自分だけ一足先に大人になったような妄想をしたんだ。セックスをしたら大人だなんて、今なら失笑してしまう。思い返せば、あの頃には友人達も皆隠れて誰かと身体を繋げていた。自分だけが特別ではなかった。
事後、痛みのせいかようやくわずかな後悔と罪悪感がやってきた。
ここでの反省は親からもらった身体を傷付けた、というより、もう少し勉強してから取り掛かれば良かったという類のもの。あまりに何も理解してないから、自分はただシーツに転がされるだけで終わった気がする。
ホテルを出て、男に買ってもらったのは最新のタブレット。本当はパソコンが欲しかったけど、そんな大きな物を買ったら親にバレる。インターネットさえあれば何でもできる世の中だから、これでも充分有難い。
男とはその後数回会って、いつしか自然と連絡をとらなくなった。ある意味後腐れがなくて最高の相手だったと思う。それでも愚かな行為だった。大変なことをしていたんだとゆっくり振り返って、反省した。
異常なことをしていたんだ。だからもう絶対、好きな人以外とセックスしない。




