#11
自分は子ども同然だ。大人になりきれない。大人になりたいと思う反面、実は子どものままでいたいのかもしれない。
失敗したら許してほしいし、困っていたら助けてほしい。いつまでもチャイルドシートから離れない幼稚な人間。そんな人間が急に運転席に乗ったら、間違いなく事故って終わりだろう。
人生はブレーキのきかない車だ。止まることができるのは、燃料がなくなった時だけ。……死ぬときだけだ。
楽しかった思い出が、あまりない。大人からは怒られた記憶しかない。そう思うと最初から欠陥品だったのかもしれない。誰もが備えているパーツが自分だけ抜け落ちていた。常にガソリンがダダ漏れの状態で、いつ爆発してもおかしくない心を持っている。それを人にぶつけたことはないが、自分にはよくぶつけていた。
愛されたいという欲求がある。愛されないもどかしさを、自身にぶつける時期があった。高校生のとき、初めて身体を捧げたのは会って間もない中年の男だった。出会い頭好きなものを買ってあげると言われたから、大人しくついていった。治安の悪い街をあえて歩いたのは、誰かと繋がりたいだけじゃなく、“こういう”ことを期待していたのだ。犯罪に巻き込まれる不安より、劇的なドラマに飛び込みたい自分がいた。少々過激な若気の至りだ。
男同士や女同士の恋愛は特別。けど大昔に比べれば珍しいことではない。ある地域ではむしろ歓迎されると授業で習った。
愛と、性。
恐らく自分が属するのは男同士のカテゴリだ。異性に心惹かれたことはない。いつだって自分の心を攫うのは自由奔放な酷い男。
アクション映画やダークヒーロー系のアニメをよく観ていたからかもしれない。何者にも捕らわれない男が好きだった。
『っちに来てごらん』
会ったばかりの人間。ホテルの最上階の一室で、男は自分に手招きした。恐怖や不安は下に埋もれ、好奇心という名の砂が降り注ぐ。
半裸にされ、開放的な窓際に佇んだ。いらないものを全てとっぱらったような、解き放たれた感覚だった。眩く美しいネオンの世界。まるで宝石のような無数の光を見下ろしてると思うと胸がすく。
これは快感だ。
『ほら、遠くに見える赤い光。あの辺りがFree City。今はどの建物も建設途中だから入れないけどね』
彼が指さすそこは、国から見放されたスラム街。遥か昔に同性を愛する人間が虐げられて一箇所に追いやられたらしい。それが段々、同性愛者の方から居場所を求めて向かうようになったとか。
少子化問題を取り上げるも、数年前から政府は性自認に重きを置いた環境づくりに注力していた。




