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世話焼き召喚士の便利屋生活  作者: 巴 雪夜
第一章:だらしない系天才召喚士の世話を焼く

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第4話:人は見た目で判断はできないものだ

 幼子の家は森から少し離れた農村にあった。田畑が広がる中にぽつぽつと家が建っている長閑なところだ。


 畑仕事に勤しむ村人ぐらいしか外にいるものはいないが、寂しさというのは感じられない。



「これは確かに高熱病やねぇ」



 ベッドの上で魘されている女性の様子を見てイザベルは頷く。彼女はジークフリートによって連れてこられていた。


 幼子を家まで送ったはジークフリートは父親から話を聞いて薬師であるイザベルを紹介したのだ。幼子に「お母さんを治して」と泣きつかれては放っておけなかったらしい。


 わざわざペガサスを使って超特急でイザベルを連れてきたジークフリートの行動力にヨハンは凄いなと感心してしまったほどだ。


 幼子の父親はイザベルの診断に「医者にもそう言われました」と不安げに答える。幼子は「おかあさんだいじょうぶ?」と今にも泣きそうな顔をみせた。



「風邪自体は大丈夫よぉ。専用のお薬を飲んで安静にしていれば、二、三日で治るけん」



 ふわりふわりと狐の尻尾を揺らして安心させるように微笑むイザベルに、幼子はぱっと表情を明るくさせた。「本当に!」と駆け寄ってくる幼子に彼女は「大丈夫よ」と優しく頭を撫でてやる。



「薬を煎じるのは簡単やのよ。ただ、問題は薬草やねぇ」


「と、言いますと?」


「月夜草っていう解熱効果のある薬草が必要なんよ」



 ヨハンの問いにイザベルが説明する。月夜草という薬草は何処にでも群生できる植物なのだが、珍しい部類に入るのだと。


 彼女は鞄からいくつかの道具と薬草を取り出しながら、「これなんやけど」と見せる。


 白い鈴蘭のような花ではあるが内側が薄紫に染まっている。見たことがないなとヨハンが眺めていると、「これあと二つぐらい足らんのよねぇ」と言われた。



「一般的な風邪なら一つで足りるんやけど、高熱病は三つ必要なんよ」


「あー、要するに取ってこいと」


「そういうことやね」



 にこっと笑みを見せるイザベルにジークフリートははぁと息を吐く。


 がしがしと頭を掻きながら幼子の父親へと目を向けた。彼はどうしたらいいのかと訴えるような視線を向けている。



「これは別途の依頼になるんだが、払えるもんはあるか?」


「お、お金は……」


「金じゃなくてもいい」


「うちは麦と野菜を育てていて……丁度、収穫した野菜なら……」


「なら、それでいい。用意しとけ」



 ジークフリートはそれだけ言ってイザベルから捜索用に月夜草を受け取ると、「イザベルは此処で薬を調合しとけ」と告げて、ヨハンを連れて出ていく。


 さっさと歩いていくジークフリートにヨハンは「いいですか?」と問うた。問いの意図が分からなかったのか、彼は「何がだ?」と首を傾げる。



「依頼料ですよ。いくら薬草探しと言えど、労力に見合っていないじゃないですか」



 薬草探しは比較的に簡単な部類に入るけれど、労力はそれなりにかかる。優秀な召喚獣を使うにも魔力は消費するし、歩き回るので足腰に負担もくるのだ。


 それが少ない野菜だけというのは報酬に見合っていないと感じてしまう。


 ヨハンの意見にジークフリートはなるほどと理解したように頷くと、「別に構わんよ」と返した。



「俺は別に金が欲しくてこの仕事をやってるわけじゃないからな」


「そうなんですか?」


「金が欲しけりゃ王国直属の召喚士になってればいいだろ」



 国に認められた召喚士ならば給与もそれ相応の金額を貰える。金が欲しいならそっちをやったほうが遥かに稼げるとジークフリートは笑った。


 それはそうだなとヨハンも納得してしまうも、ならどうしてこの仕事を選んだのだろうかという疑問が浮かぶ。



「それに金だけがいいってわけじゃないぞ」


「と、いいますと?」


「便利屋やっていくといろんなもんが見れるさ」



 いろんなものとはと首を傾げるヨハンにジークフリートはそれ以上は言わなかった。そんな態度に自分で感じてみろという意味だろうかとヨハンは受け取る。


 ジークフリートは認められた召喚士というのを押し出すようなことはしていなかった。ただのおまけといったふうで、言われなければ召喚士だとは気づかれない。


(寝起きとか、顔の良いだらしない男性って感じなんだけどなぁ)


 人は見かけによらないというのをジークフリートは表しているなとヨハンは思う。



「今、失礼なことを思っただろ、少年」


「寝起きだらしないとしか思ってないですよ」


「誰だって寝起きは酷いものだろ」



 俺だけじゃないぞとジークフリートは不満げだ。誰もが寝起きが酷いということはないですと、突っ込もうとしたけれど止めておく。


 それよりも少年呼びのほうが気になってしまうのだが、彼はやめてくれない。



「私もう二十歳なんですけどー」


「いやぁ、言いやすくてなぁ。ほんっと若く見えるんだよ。俺なんてまだ二十七歳だっていうのに老けて見られるんだぜ?」



 困ったものだよとジークフリートが眉を下げる。二十七歳なんだとヨハンは失礼ながら思ってしまった。青年から壮年の間ぐらいには見えていたが、だいぶ若かったと。


 ヨハンの一瞬の間にジークフリートは「どうせ老け顔だよ」と口を尖らせた。



「いや、老け顔ってわけじゃないですよ。顔は良いですし、顔は」


「その言い方なんだよー。いいよ、別にぃ」



 拗ねたように返事を返してジークフリートは歩いて行ってしまう。彼的には気にしていたようだ。申し訳ないことをしたなと反省しつつ、ヨハンは小さく笑う。


(拗ね方がちょっと子供っぽい)


 思っていた反応と違っていてヨハンは可愛いかもしれないと思ってしまった。少しだけ。


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