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世話焼き召喚士の便利屋生活  作者: 巴 雪夜
第一章:だらしない系天才召喚士の世話を焼く

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第3話:ギャップ

 王都から西に行くと夜渡りの森と呼ばれている場所がある。大型の魔物は居ないけれど、小型のものは生息している森なので戦えない人間は迂闊に入るべきではない。


 周囲に人気は無くて鬱蒼と茂る木々が風に吹かれるたびにざわざわと鳴いていた。薄暗く見渡しが良いとは言えない森の中を少し歩いてからジークフリートは詠唱する。


 ふわりふわりと魔力がジークフリートの身体を包み込み、ぱちんと指を鳴らすと地面に魔法陣が浮かび上がって一頭の魔物が姿を現した。


 白く艶のある長い毛に覆われた少し大きい狼の姿をした魔物はジークフリートを前に座った。額には水晶のような角が一本生えている狼は尻尾を振っている。



「クリスタルウルフは嗅覚に優れてますね、なるほど」


「こういうのにはぴったりだろ? ほら、匂いを辿れ」



 クリスタルウルフはゆっくりと立ち上がりジークフリートから差し出された薬草の匂いを嗅ぐと、地面にふんふんと鼻をつけてから探し始めた。


 杖などの媒体無しでよく召喚できるなと思いながらヨハンもリューリアに指示を出す。


 リューリアはぽんっと身体を狼ほどの大きさに変えると、薬草の匂いを嗅いで辿るように歩き出した。


 リューリアに着いていくこと数分、薬草が群生している場所にたどり着く。思ったより早く見つけられて運が良いとヨハンは必要数を摘んで籠に入れる。


 これならそう時間もかからないだろう。帰った昼過ぎぐらいかなとヨハンが魔物の気配がないが確認した時だった。



「ウガオウォォォォォォ!」



 唸るような雄叫びが響いた。それにリューリアが驚き飛び跳ねながらヨハンの足元に駆け寄り、警戒するように耳をぴんっと立てて耳を澄ませる。


 ヨハンは鳴き声がどこからしたのか、聞き耳を立てるとまた雄叫びがした。


 近くに魔物がいることを把握したヨハンは此処から離れるべきだろうと、リューリアに指示を出そうとして別の鳴き声が耳に入る。それは狼のような声音だった。



「この鳴き声は……クリスタルウルフでは……」



 クリスタルウルフが魔物と交戦しているのであれば、ジークフリートもその場にいるはずだ。ヨハンは彼を一人にするのはいけないのではと考えて、声がしたほうへと向かった。


 場所はそれほど離れてはいなくて、すぐに彼らの姿を見つけることができたのだが、ヨハンは暫しその光景を眺めてしまう。


 黒い狼がクリスタルウルフに噛みつこうと牙を向けるが、全く歯が立っていない。むしろ、軽く受け流されて弄ばれている。遊んでいるかのようにクリスタルウルフは狼の魔物へと噛みつく。



「……何やってるんですか」


「遊んでいるわけじゃないぞ」



 じとりと見られてジークフリートは心外だといったふうに自分の足元を指さした。彼の足元には腰を抜かしたように足に縋りつく幼子が一人。


 泣いていたのだろう瞳からは涙が伝っているその姿にヨハンは首を傾げる。


 こんな森にどうして幼子が一人でいるのだろうか。その疑問を察してか、ジークフリートが「この少年、母親のために森に入ったらしい」と話した。


 幼子の母は風邪をこじらせてしまい寝込んでいるらしく、早く治ってほしいからと薬草を探すために一人でこの森に入ってしまったらしい。


 話を聞いてヨハンは眉を下げながら「なんと、危険な事を」と息を吐いた。


 子供は時として突拍子もない行動をすると聞くが、これはいくらなんでも危険だろうとヨハンは思った。母親のためとはいえ、入るのは褒められたことではない。


 母親の身からしたら肝が冷えるどころではないだろう。といはいえ、やってしまったものはしょうがないのでヨハンは幼子と視線を合わせるようにしゃがみ込む。



「怪我はないですか?」


「ない……」


「だめですよ、一人で森に入っては」



 魔物に襲われては母親を悲しませてしまうでしょうとヨハンが優しく諭すように言えば、幼子は理解したようで何度も頷いていた。


 魔物に襲われて初めて自分が危険な事をしていたのだとわかったようだ。


 ごめんなさいと何度も謝っている幼子の頭を撫でてヨハンは立ち上がる。


 丁度、狼の魔物がクリスタルウルフから離れてひゅんひゅん鳴きながら茂みのほうへと飛び込んで逃げていった。



「この子を家まで送るぞ、少年」


「まって、お母さんのためにおかぜにきくやくそうがまだとれてない!」


「お前さんじゃどの薬草が母親の風邪に効くものか分からないだろう?」



 別の薬草を持って行っても意味はないのだとジークフリートが優しく、けれどはっきりと伝えると幼子はしょんぼりとしたふうに俯いた。


 言われて気づいたようで、「どうしよう」とまた泣きそうに顔を歪めている。



「まずは家に帰ろう」


「でも、お母さんが……」


「ちゃんと話はお兄さんが聞くから安心しろ」



 ジークフリートに「だから一旦、帰ろうな」と頭を撫でられて幼子は大人しく頷いた。よっと幼子を抱きかかえて歩く彼の姿に「優しいよな」とヨハンは呟く。


(こういうことをさりげなくできる男性って女性に人気だよなぁ)


 だらしないところもあるのだけれど、こういうのをギャップというのかもしれない。ヨハンは幼子をあやすジークフリートの姿に思った。



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