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世話焼き召喚士の便利屋生活  作者: 巴 雪夜
第三章:動揺と困惑でそれどころじゃない

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第11話:本日の依頼―配送―

「あー、この前はえらい目に合った」



 召喚士予備生の不始末のことを思い出してか、ジークフリートは愚痴る。


 ヨハンがレッドシーフドラゴンと契約を終えた後、予備生たちに囲まれて夜まで拘束されてしまった。


 そのせいでアリィーを送り届けるのが遅くなってしまい、母親を心配させてしまったのだ。


 謝罪と訳を説明して納得してもらったが、極力はこういったことは避けたい。


 信用にかかわるというのもあるが、依頼主を不安に思わせたくはないのだ。ヨハンもそれには同意して、「気を付けましょうね」と頷いた。


 朝から店舗部分の室内を掃除をしているわけだが、数日間続けた甲斐あってだいぶ綺麗になった。それでもこのまま続ければ、店舗部分は片付きそうだ。


 ヨハンはゴミを纏めながらジークフリートに「本を纏めてくださいよ」と、サボるとする彼の尻を叩いた。



「人使いが荒いぞ、少年は」


「世話されている身なんですからこれぐらいやってください」


「今日はこれぐらいにしよう、少年」


「嫌ですよ。ちゃんとやらないとご飯作りませんよ」


「それは困る。お前の作る飯は美味しいからな」



 しぶしぶといったふうに本を纏めだすジークフリートに呆れていれば、からんからんと鈴の音がする。


 誰か来たなとヨハンが本棚の角から顔を覗かせると体格の良い犬の獣人が入り口の前に立っていた。


 少し長めの灰髪を一つに結い、犬耳をぴんと伸ばしている男にヨハンが「依頼ですか?」と声を掛けながら近寄れば、「配達を頼みたい」と依頼内容を聞かされた。


 男がこの近くで畜産を生業にしているらしく、出荷する肉などの配送の手伝いをしてほしいのだという。



「他所の村にも卸さなきゃならねぇんだよ。王都のほうのレストランやら肉屋にも運ばねぇといけないから人手が欲しいんだ」


「と、いうことらしいですよ」


「構わんぞ。依頼料はきっちりとるがな」



 ジークフリートは本を放るとヨハンの隣に立つ。男は配達物のある自身の仕事場へと案内することになった。


   ***


 牛が放牧されている牧場にやってきたジークフリートとヨハンは男から、「これを頼む」と二頭の牛を連れてやってきた。どうやらこの牛を近くの村まで運んでほしいようだ。


 生きた牛を運ぶのかとヨハンが見れば、「まー、これぐらなら」とジークフリートはその配達を受けることを了承した。



「どうやって運ぶんですか? 連れていく感じで?」


「グリフォンに運ばせる」


「はぁ?」



 グリフォンは鷲のような爪を持っているので牛を持ちながら飛行するのは簡単なのだという。牛を傷つけないだろうかと思ったけれど、意外といけるらしい。


 ジークフリートが言うなら問題はないのだろうとヨハンは納得しておく。



「村の近くで降ろしてあとは歩きで連れてく。流石に村にグリフォン連れてったら驚かれるからな」


「驚くどころじゃないですよ」


「俺が二頭召喚するから一頭はお前が使役しろ」


「できますかね?」


「ドラゴンと契約できてんだから大丈夫だ」



 ジークフリートはそう言って牛を連れていくと詠唱を始めた。指をぱちんと鳴らすと地面に浮かぶ魔法陣から二頭のグリフォンが飛び出してくる。


 上半身は鷲、下半身は獅子の姿をしてるグリフォンは鷲の翼をはためかせながらジークフリートの前に降り立つ。


 二頭は大人しく彼の指示を待っていて、その様子にしっかりと使役できているのだと感じた。


 ジークフリートが一頭をヨハンの前に持ってきて「ほれ」と言ってきた。それは使役してみせろということのようで、ヨハンは大丈夫だろうかと思いながらもグリフォンと向き合った。


 グリフォンはヨハンを見極めるようにじっと見つめている。


 その瞳から目を逸らすことなく見つめ返すこと数分、肩に乗っていたリューリアが「アオン」と鳴いた。それを合図にしてか、グリフォンは姿勢を低くし頭を下げる。


 これはヨハンを認めたという証だ。使役することを許されたヨハンは牛を殺さずに掴み上げることを支持してからその背に跨った。


 ゆっくりと空を飛ぶグリフォンは指示通りに牛を掴んでいる。上手くいくものだなとヨハンが観察していれば、ジークフリートに「できるもんだろ」と笑われた。



「まぁ、そうですね。器用ですね、グリフォン」


「意外とな。まー、グリフォンを使役するぐらい簡単なもんだろう」


「どうでしょう。ぎりぎりだった気もしますが」


「そんなことはないさ。あと、お前はもう少し召喚獣を増やした方がいい」



 ジークフリートは「グリフォンを一頭やろうか」と提案してきたが、ヨハンは「裏がありそうなんで嫌です」と断った。


 それに「疑うなよ」と彼は眉を下げたが、何も言われずにくれると提案されても何かありそうではないかと思わなくもないのだ。


 そう言われてはジークフリートは言い返せず、「親切心だったんだがなぁ」と口を尖らせていた。



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