第五話 無限残機
前回のあらすじ──
初任務当日、スクラヴェとルテマは先輩を紹介された。
カーザ・ドンマルド、ベテランの団員で魔法使い。
彼の性格は悪戯好きの子供のようなものだが、
人柄は悪いわけではなく、良い先輩という印象。
そんなカーザを加えた三人で任務へ向かうのであった。
「カーザさんと新人さんたちはどうでしたぁ?
仲悪くなりそうな雰囲気でしたかねぇ」
「ううん、むしろ逆だね。
雰囲気も良いし、二人の先輩としては適任だよ」
私はスクラヴェ君たちが任務に行ったあと、
第六小隊の隊長さんと話していた。
「ロタナさんがそう言うなら正しいですねぇ。
アテシも顔を合わせておかないとぉ」
「ふふ、確かに隊長なんだから会わないとね。
多分一人も欠けずに帰ってくるよ。
今年の新人さんは有望だからね」
ーーー
「地下水路はな、人があまり立ち入らねえ関係から、
こうやって邪族が潜んだりしてるんだ」
ルテマと俺はそんなことを言うカーザ先輩の背中の後ろを歩きながら、辺りを見渡していた。
照明が暗闇を照らしてるけど、それでも暗い。
「潜めるって言っても、穴とかないぞ?
こんなところに本当におるのか?」
ルテマが一見、綺麗に整備された壁を見ながらそう言うと──
「火球」
カーザ先輩は足元に魔法陣を展開して、
小さい魔法の杖を取り出した後に魔法を唱えた。
そしたらよ。杖から火球が出てきて、
少し離れたところにある壁をぶっ壊した。
「な、なにしとるんじゃ!? 壊して良いのか!?」
「んなことより敵だぞ。ほーら力を見せてみろ」
壁が崩れて二人の人影が現れた。
見えた瞬間に確信できるくらいには、
明らかに邪族ですって身なりだったぜ。
「あいつの魔力探知強すぎだろッ!」
「もうやるしかねぇぞ!」
焦ってる二人は短剣を手に持ってた。
やる気みてェだし、いっちょやりますかァ!
「わっちの魔法で倒してや──」
「殺さなきゃいいんすよねェ!」
「あぁ!? スクラヴェ待つんじゃぁ!」
ルテマが止めてきたけど関係ねェ!
俺は一直線に走って二人のうち、
髪が長ェ方に殴りかかった!
「ゴファッ……」
「なんだこいつ、めちゃくちゃ弱ぇぞ!」
俺は思い切り短剣で刺された。
「スクラヴェッ!!」
ルテマが咄嗟に俺の名を呼んでくれた。
カーザ先輩が動く雰囲気はなさそうだぜ。
やっぱりロタナさんが話してくれてたんだなァ……
「おいそいつから離れろッ!」
「はぁ? だってこいつ胸を刺されて……!?」
「残念! それが動けちまうんだなァ!」
俺はそいつの首を掴んで思いっきり頭突きした。
その頭突きがよっぽど効いたのか一発でKO。
もう片方のやつはめっちゃ驚いてて、
口を開けながら動きが止まってた。
「雷球!」
その隙にルテマの雷魔法がそいつを貫いて、
感電させたらその場に呆気なく倒れた。
「イェーイ、楽勝だぜ」
「なにが楽勝じゃ! スクラヴェ、お主思いっきり胸を刺され……て? あれ、傷はどうしたんじゃ?」
俺はルテマに不死のことを話すことにした。
「じゃーん。俺ァ不死なんだ。
だからなに喰らっても再生するぜ」
「お主──」
なんて反応が来るんだ?
気持ち悪いとか言ってきそうだなァ。
「めちゃくちゃすごいのうっ!!
不死って無敵じゃな!!」
あれ、意外な反応……
なんだ? ルテマって案外性格悪くねェのか?
「ははっ、まじで治ってんじゃん。
オマエすげぇなぁ。話は聞いてたが、
いざ刺された時は不安だったぞ?」
「へへっ、刺されないようにした方がいいっすか?」
カーザ先輩は倒れてる二人の近くでしゃがんで、
一つの紙を取り出した。
「まあ刺されねぇ方が色々得だしな。
不死でも痛えもんは痛えだろ?」
カーザ先輩は手錠で邪族を拘束して立ち上がると、
俺たちに対して笑顔を見せてくれた。
「それにしてもオマエら初任務にしては良いな。
ルテマの方は魔法を撃つまでの判断が良い、
スクラヴェは頭のネジがぶっ飛んでて強え。
オマエらが成長した時が楽しみになってきた」
カーザ先輩は褒めてくれた。
俺ァ褒められて伸びるタイプだから、
こういうことは嬉しくてたまらねェぜ。
「よし、ほんじゃ帰るか」
「この二人が標的だったんじゃ?」
「そうだぞ。案外余裕だったろ?」
前戦ったサソリが一級だろ?
二級と一級じゃこんなに差があんだな……
まあ俺ァ深く考える必要はねェ。
どんなに敵が強くても不死だから無敵だぜ。
ーーー
初任務は大成功。
カーザ先輩が帰りに言ってたけど、
初任務で失敗なんてほぼないらしい。
初っ端から死んじまったら最悪だしなァ。
粛清団に帰ったらロタナさんが本部前で待ってた。
「おかえり、無事大成功ってさっき電話で聞いたよ」
ロタナさんはニコニコとして嬉しそうだった。
「そりゃァ余裕っすよ」
「にしては少し血だらけだね。
一回だけ死んじゃったかな?」
一回なら良い方だぜ。
てことで楽勝だ楽勝!
「ロタナさん。まさかまじで不死だなんて驚きましたよ。こいつ戦いじゃ最強じゃないすか?」
いいねェカーザ先輩。
俺を褒めてくれる人は好きだぜ。
「そうだぜ! 俺ァ死なねェから無限に戦えるし、
みんな俺に驚く。要するに絶対に負けないんすよ!
俺ァ、もっとロタナさんの役に立ちてェっす。
なんかしてほしいこととかないすか!」
ロタナさんは顎に手を当てて悩み始めた。
相変わらず身長はちっせェのに、誰よりも威圧感がある。
「……現存する君級邪族の数は知ってるよね」
「知ってますよォ。四体いるんすよね」
「正解。私の役に立ちたいと言うなら、
四体の邪族を全て討伐してほしいの」
君級邪族を全員……?
俺ァ確かに最強だけどよォ……
「なーんてね。今のスクラヴェ君じゃ非効率すぎる。
特に中でも最強と呼ばれる邪族には、粛清団が束になって勝てるかどうかの敵……」
ロタナさんは俺に近づいてきて、
胸に人差し指を当ててきた。
「でもね。その不死の力なら理論上誰にでも勝てる。
何千何万と死んでも生き返るなら、
どんなに強い敵も倒せる」
ロタナさんの緑色の右目が俺をじっと見つめる。
「私はスクラヴェ君に期待してるよ。
いずれ君級邪族を倒す可能性があると思ってる。
だから、一つスクラヴェ君に目標を与えるね」
ロタナさんの話は自然とスッと頭に入ってくる。
目標……どういう目標なんだ?
「実戦で死なないようにすること。
死が前提の戦いじゃいつまでも弱いまま、
強くて不死が一番脅威的だよ」
「死なねェように……できっかな」
正直自信はない。
だって死なねェようにするっても、
意識したことねェし、周りの奴らみたいに戦闘に備えて鍛えてきたわけじゃねェ。
確かに死にたくねェよ。
めちゃクソいてェし、服も毎回汚れやがる。
「ロ、ロタナ殿! わっちも目標とかないのじゃ?」
「ルテマちゃんは遠征部隊を目指すんでしょ?
じゃあ成果を上げれば良いの。
いっぱい任務をこなせばいいんだよ」
ルテマはそう言われるとあっさり受け入れた。
「なんじゃシンプルじゃな!」
ロタナさんは俺から一歩退がって話を再開した。
「スクラヴェ君は近接が得意だろうから、
カーザ君やルテマちゃんから得られることは少ない。それでね──私から紹介したい人がいるんだ」
そりゃァ誰なんだ?
そもそも魔法全盛のこの時代に、
剣士で強ェやつなんているのか?
「征西部隊、″第六小隊の隊長さん″
屋内で待ってるからみんなで会いに行こうか」
隊長……その人が俺に色々教えてくれるってことだな? そりゃァいいぜ。強ェ人から教えてもらえるなら、俺だって少しは強くなれるかもしれねェ!
用語解説『魔法 ①』──
魔法とは、魔力使用して超常的な現象を行うもの。
長い間この世界は魔法全盛の時代であり、
剣士でさえ魔法を扱わずとも魔力を扱う時代。
魔法の発動方法は四つ。
呼称・魔法陣・代力・詠唱。
呼称と魔法陣を除く二つは強化発動という扱いであり、
普通に魔法を放つ上では扱わない発動法である。
魔法使いは魔法陣で回路を作り、
呼称で魔力を流して魔法を完成させ、
杖や魔法球、魔導書から魔法を放つ。
発動を短縮した技もあるがそれはまたの機会に──
ーーー
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