第四話 子供で大人
前回のあらすじ──
粛清団の征西部隊へと入隊したスクラヴェ。
自身の相棒としてルテマという女性に出会い、
初対面が最悪ながらも意気投合。
そんな二人は翌日にて、初任務へと向かうのであった。
粛清団には団員の居住区がある。
俺は一部屋貸してもらってそこで暮らすことになった。案外これでも一人暮らしはできるんだぜ?
奴隷時代も貴族の家に仕えた時は、
自分で何もかもやんなきゃいけなかったからなァ。
だからこういうのは慣れてる。
なにより、快適な一人暮らしってのは最高だぜ。
ロタナさんから貰った金で食べ物買って、
風呂入ってあったけェ布団で寝る。
人生初めての快適な睡眠を経て、
俺は初任務の日を迎えた。
部屋にはカレンダーがあって、日付が書かれてた。
『枯天2018年4月13日』
枯天、読み方は知ってる。
雇われ先でいろんなやつが言ってたしな。
「ぁぁぁあ〜」
あくびをこんなに大きくしたのも初めてだ。
いつもじゃそんな余裕はねェし、怒られるからな。
顔洗って朝飯食って、体操も忘れねェ。
清々しい良い一日の始まり……全てをこなした後、
ピンポンと音が部屋に響いた。
扉を開けるとロタナさんがいた。
「あぁロタナさんじゃないっすかァ〜」
手を軽く振って笑顔を見せるロタナさん。
「おはようスクラヴェ君、今日は初任務だよね?
君とルテマちゃん──そこに先輩が来るんだ。
これからルテマちゃんを迎えて会いに行くよ」
先輩かァ……そいつァは良い人なんかな。
悪い人ってこともねェだろうけどよォ……
ーーー
「ロタナさん。この二人が新人の?」
「この二人には″カーザ″君が最適じゃないかな」
わしゃわしゃとした髪……眼鏡に両耳ピアス……
それに落ち着いた喋り方に猫背……
見た目じゃ良い人かわかんねェ〜
「俺がスクラヴェっす」
「わっちはルテマじゃ!」
俺たち二人がそう言うと、カーザ?
まあ合ってるかわかんねェけどその人は、
結構ラフな感じで両手を差し出してきた。
「まずは名前と握手だ。俺はカーザ・ドンマルド。
話は色々ロタナさんから聞いてるぞ。
オマエたちどっちも癖強いんだってなぁ……
俺のことはカーザ先輩と呼んでくれ」
カーザ先輩は焦茶色の髪の隙間から、
真っ赤な瞳で俺たちを見つめてきた。
結構良い人そうで安心したぜ!
俺は手を握り、カーザ先輩と握手した。
ブビィルルルルルル──
そんな音が俺の手から鳴った。
「んだこれ!?」
「おいおい〜スクラヴェ初対面で屁はナシだろ」
「はァ!? 俺してねェっす!」
ルテマは嫌そうな顔で俺を見て、
カーザ先輩はケラケラと笑っていやがった。
「冗談冗談、俺のおもちゃがやっただけだ」
「なーんじゃ、おもちゃだったんじゃな」
ブベェルルルルルル──
ルテマがカーザ先輩と握手すると、
その手からも屁の音が聞こえた。
「っ……っは……ふっ」
「騙しおったなぁああ!!」
カーザ先輩は必死に笑いを堪えてる。
ルテマは恥ずかしそうにカーザ先輩にそう叫んだ。
この人、悪戯好きの子供みてェな人だぜ。
「はいはい。新人さんを悪戯するのはやめ、
私が軽くカーザ君を紹介するね」
ロタナさんが慣れたようにそう言うと、
カーザ先輩がどんな人か聞けた。
まず、カーザ先輩は粛清団6年目のベテランで、
副隊長の一番弟子だって話だ。
カーザ先輩はロタナさんが言う限り、
征西部隊の中でもかなり強ェらしい。
じゃあ副隊長ってのはもっと強ェのか。
「カーザ君は下帥級の魔法使い。
近接もできる魔法使いだったよね?」
「俺は近接戦闘だってできる魔法使い、
まあ、積極的にしたいわけじゃないんですけどね」
微笑むカーザ先輩。俺はそんなことより、下帥級っていう言葉が気になった。
「ロタナさん下帥級ってなんすか?」
俺は一般常識がねェから聞いてかないとな。
「ちょうどよかった。今日教えておこうと思って、
紙に詳しく書いてきたんだ。渡しておくね」
俺はロタナさんから紙を貰った。
「それを見たら大体わかるんじゃないかな?
読み書きとかは確かできるよね」
「それくらいはできるっすよ。
俺でもわかる書き方で嬉しいっす!」
ロタナさんは「なら良かった」と言って、
ニコニコとして安心したようにそう言ってきた。
「スクラヴェ君がこの前戦ったサソリは、
多分一級くらいの邪族だったんじゃないかな?」
あれで一級!? おいおい……じゃあ先輩、
あんたまじでめちゃくちゃ強ェじゃねえかよ……
「ロタナ殿、わっちとスクラヴェは初任務じゃが、
何級のやつを倒しに行くんじゃ?」
ルテマがそう聞くと、ロタナさんは覚えている内容をスラスラと話し始めた。
「等級は二級、人族の邪族だから気をつけてね。
人族は級が低くても知恵で戦ってくる。まあ、そこらへんはカーザ君がどうにかしてくれるよ」
話を聞き続けると色々と任務のことがわかったぜ。
まず街の地下水路に入って、
そこで籠城してる邪族を捕まえる。
その捕まえたやつらを外で待ってる人らに渡せば、
俺たちの初任務は無事大成功ってわけらしい。
「初任務が日の下じゃないのか……わっちは薄暗いところより明るいところが好きじゃ!」
ルテマは相変わらずわがままだぜ。
まあ気持ちはわかるけど、俺は元々薄暗いとこは慣れてっから、こんな任務よゆーだな。
「ほんじゃあロタナさん。俺が安全第一で任務終わらせてきます。よしオマエら、俺の車に行くぞ」
そうしてカーザ先輩に連れられて、
俺とルテマは任務先へと移動を始めた。
ーーー
粛清団の団員同士の初対面は大体、
なんで粛清団に入ったかという話題になるらしい。
確かにルテマも聞いてきたぜ。
その話題はカーザ先輩の口からも聞こえてきた。
「オマエらはなんで粛清団に?
べつに金稼ぎに来たってわけじゃないんだろ?」
「わっちは遠征部隊に入って、
合法的に旅行がしたいからじゃ!」
「俺ァ特にないっすね。
ロタナさんに拾われただけなんで」
カーザ先輩は俺たちの言葉を聞くと、
車のハンドルを指でコツコツと叩きながら、
よそ見運転せずに話しかけてきた。
「オマエらそういうのはな〜
もうちょっと立派な理由にしとけよ。
粛清団ってのは結構覚悟決めてるやつが多いから、
その理由を聞いたらキレるやつだっているかもしれないぞ」
立派な理由……理由なしじゃなんかダメだよな。
こう言うのは目標がねェと怠けちまう。
俺はロタナさんに拾われて働くことになって、
前よりもめちゃくちゃいい環境になった。
でもよォ……俺は一体なんのためにこれから生きてくんだ? なんだか望んでたものが全部手に入っちまって、いきなりゴールしちまった。
もちろんこの生活はずっと続けてェ。
最高な生活……でも俺には目標がない。
待てよ……考えろ俺。
……俺の人生はロタナさんが拾ってくれたから、
こうして今、俺はァ楽しく生きてんだろ?
なら決めたぜ──
「俺、理由できたっすよ」
「お、ないよりはマシだな。言ってみろよ」
やられたことはなんでもやり返す派なんだ。
ちゃんと恩もたっぷり返さねェとなァ!
「俺ァロタナさんに恩返ししてェ。
あの人の役に立ちたいぜ」
「なんだよスクラヴェ、いい理由じゃねぇか。
そう言う理由のやつもたくさんいるぜ?
ロタナさんは色んなやつの人生を救ってるからな」
カーザ先輩の声色はよくなった。
顔は見えねェけど、笑ってるのがわかる。
「わっちも考えんとな……
面倒じゃから帰ったら考えるんじゃ!」
ルテマの旅行したいから入ったってのは、
まあさすがにキレられるだろうな。
俺は好きな理由だけどよォ。
その話題以降、任務先に着くまでの間、
俺たちの会話は止まんなかったぜ。
カーザ先輩は結構おしゃべりでよ。
この先輩とならやってける気がする。
30分くらいか? そんくらいで任務先に着いた。
地下水路、意外にも綺麗なところで嬉しいぜ。
用語解説『種族』──
この世界には大きく分けて種族が四つ存在する。
人族・霊族・魔族・獣族。
これら四つの種族は四大種族と呼ばれている。
魔族や獣族は細分化すると大量の種族がおり、
人族や霊族は派生種族などがいない。
また四大種族に伴い、四大言語が存在している。
◯族語という感じであり、世界で標準語に指定されているのは人族語である。
また、最も数の多い種族は人族であり、
魔族や獣族は年々数を減らし始めているそうだ。
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そして本日18時に第五話が投稿されます!




