第三話 うるさめマシマシ
前回のあらすじ──
粛清団で働くことが決まった奴隷の男。
移動する最中、自身を拾ってくれた女性の名を知る。
名は、ロタナ・マライトア・レルード。
そして奴隷の男は彼女から名を貰った。
″スクラヴェ″それが彼の名である。
粛清団本部にてロタナに呼び出されたスクラヴェは、
自身の同僚であり相棒となる者と出会うのであった。
「それじゃあ自己紹介をスクラヴェ君から」
ロタナさんが手を向けてくる。
自己紹介とか慣れてねェけど……言うだけだ。
「スクラヴェっす。よろしく──」
「ロタナ殿!! こ、こやつが……わっちの相棒なのじゃ!?」
はァ!? なんだよその反応!
俺だってお前みたいなうるさい女は嫌いだね。
「まあまあ……ほら、君も名前を言ってあげて」
ロタナさんに促されて、
そいつはちょっと黙った後……
渋々って感じで名乗りやがった。
「わ、わっちは……ルテマ・ヴァルサレット。
……お主が本当に、わっちの相棒なのじゃ……?」
やっぱ嫌そうだなコイツ。
なんでそんなに嫌がってんだよ……
まあそいつはルテマっていうらしい。
真っ赤な髪に橙の瞳で、
見た目は意外と整ってるのに──
性格がガキっぽくて全然可愛くねェ。
「そんなに俺が嫌かよ」
「わっちは女の子同士で組むと思っておったんじゃ!
見知らぬ男と組むなど聞いておらん……!」
あー……なるほどな……そういう理由かよ。
少し納得したけど、それでも言い方あるだろ。
「ふふっ、最初は仲が悪いくらいが丁度いいんだよ」
ロタナさんが俺たちを見て笑ってた。
笑い事じゃないっすよ……こんな奴が相棒……?
「さて……自己紹介も終えた君たちには、
これから征西部隊で働いてもらうよ」
「ロタナ殿! わっち、遠征部隊じゃないのか?」
ルテマは驚きと悲しみ混じりの表情で、
ロタナさんに向けてそう言った。
仕事貰えてんだから文句言うなよ……
「遠征部隊に行きたいなら征西部隊で頑張ってね。
成果を出したら遠征部隊には入れるよ」
なるほど……遠征部隊ってのはやっぱり、
成果をある程度出した優秀なやつが入るんだな。
ルテマはロタナさんのその言葉を聞くと、
頷きながらも黙った。納得したみたいだぜ。
「部隊は何個かの″小隊″として分かれてます。
君たちには征西部隊の第六小隊に入ってもらうよ」
ってことは……やっぱ結構大規模な組織なのか?
「ロタナさァん。その小隊って何人いるんすか?」
「第六小隊は三十七名。
基本的に一つの小隊には最大四十名で、
征西部隊は総勢二百名以上の部隊だよ」
じゃあ俺たちが六ってことは──
めっちゃいるじゃねェか、すげェな!
「君たちは明日から任務が始まる。
先輩も同行してくれるから安心して大丈夫だよ。
今日はゆっくり休んで明日に備えてね」
ロタナさんはそう言ってくれたけどよォ……
正直先が不安だぜ……こいつと仲良くなれんのか?
ーーー
「なぁ」
「……」
「なぁって」
「なんじゃ……」
俺とルテマはロタナさんの部屋から出た後、
廊下を歩く中で仲良くなろうと頑張ってみた。
「お前ってよォそんなに俺が嫌なのか?」
そんなこと言ったらルテマはいきなりキレた。
「嫌に決まっとる! そもそもわっちはお主みたいなツンツン頭の男と相棒になるなんて不本意じゃ!」
「はァ!? 俺だってお前みたいな髪の毛二対に結んだやつなんかとはごめんだね!」
ダメかもしれねェ。
まじで仲良くなれなそうだぜこりゃァ……
「……でも、過ぎたことはそれきりじゃからの。
聞こう。お主はなんで粛清団に入ったんじゃ?」
「変に切り替え癖はついてるんだなお前……
俺はべつに入った理由とかねェよ。
奴隷だった俺をロタナさんが拾ってくれたんだ」
俺が奴隷って言ったらルテマは驚いた。
この時代に奴隷は確かに珍しいかもなァ。
「お主……奴隷じゃったのか?」
「変に気遣うんじゃねェぞ。俺はもう奴隷じゃねェし、
俺もお前と同じ過ぎたことは考えねェタイプだ」
気遣われる方が俺は嫌だぜ。
まあ……こいつがどう反応するかは楽しみ……だ?
「……案外、お主ってわっちと気が合うのか?」
「いきなりどうしたんだお前……」
なんだこいつ……真剣な顔してそんなこと言うな。
「お主好きな飯はなんじゃ!」
「え? まあ……出来立ての米」
「じゃあ剣と魔法どっちが好きじゃ!」
「魔法だぜ。派手で見てておもしれェ」
「旅行するならどういうところが良いんじゃ!」
「旅行? 快適なところだったらどこでもいいぜ」
ルテマはニコニコとして俺の手を握った。
力任せにブンブンと上下に振られる俺の手。
なんだよ、いきなりなんなんだこいつァ……!
「わっちと気が合うの〜!!
米が好きじゃ! 魔法も好きじゃ!
旅行も好きじゃ! お主わっちみたいじゃな!」
「旅行は好きって言ってねェぞ……」
ルテマにそう言っても聞こえてねェみたいで、
少ししたら落ち着きやがった。
「なーんじゃこんな気が合うなら相棒で良い!
今日からよろしくのう、スクラヴェ!」
わけわかんねェ……勢いのまま勝手に好かれたぞ。
こんな意味不明な奴がいるなんて予想外だぜ……
「てかよォ……お前はなんで粛清団に入ったんだ?」
長ェ廊下を歩く中、俺はそう聞いてみた。
「わっちはな、合法的に快適な旅行がしたいから!
この粛清団に入ったんじゃ!」
「……は?」
「遠征部隊は各大陸に散らばる部隊……
金銭面も全部粛清団が負担してくれるし、
任務をこなせば実質無料の旅行じゃ!
だったら行くしかないじゃろう!」
「ぶははははは! マジかよお前ェ〜!
最高におもしれェ理由じゃねェか!」
ルテマは「旅行がしたいから」なんて理由で、
この仕事に命を賭けるらしい。
なんだよ。めちゃくちゃおもしれェやつだぜ。
「そうじゃろ! 最高な理由じゃろ!!」
「あァ、最ッ高にイカれててイカしてる理由だぜ。
俺ァお前のこと気に入った!」
俺とルテマは手と手を互いに勢いよく合わせ、
人生初めてのハイタッチをしてみた。
「俺とお前で最高な仕事しようぜ」
「いいのう! 楽しくなきゃ仕事は最悪じゃからな!」
ロタナさん、俺ァ初めて友達ができたぜ。
やっぱりあんたには感謝しねェとな……
こんなイカしてるやつを俺の相棒にしてくれんなら、こっから先が楽しそうで仕方ねェ!
ーーー
「おいうるせぇよ! 廊下は静かに歩けバカ野郎!」
俺たちは廊下で騒ぎすぎた。
横の扉がいきなり開けられて、怖ェ人がキレてきた。怒られるのは嫌いだから二人で走って逃げたぜ。
「お前ら廊下を走るなって習ってねぇのかよ!!」
用語解説『粛清団』──
この世界には六つの大陸があり、
粛清団が在するのは、西黎大陸という二番目に大きな面積を持つ大陸だ。
粛清団は邪族の捕縛と討伐を行う集団で、
団員は剣士や魔法使いと皆が戦闘技術を持っている。
西黎大陸の重要な治安維持組織であり、西黎大陸の国々からは厚い信頼と共に、多くの支援などを受けている。
ーーー
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