第一話 はじめまして人生
俺は死ねない奴隷だ。
奴隷と聞いてどんなイメージが頭に浮かぶ?
過酷な労働? 人扱いされない? 自由の喪失?
死ぬまで搾取され、服従を誓わされる?
例外なく、それらの考えは合ってるぜ。
奴隷は何も持ち得ないし、
不幸のみを味わう可哀想な生き物だ。
そこで一つ問いたい。
なんで俺はこんな生き地獄の中で、
″不死″になってしまったんだ?
ーーー
俺は奴隷として生まれ、19年間生きてきた。
その中で何度も奴隷として働く場所は変わってる。
__2006年1月23日。
「ほらほらキビキビ働かんかい!!」
うん、鮮明に覚えてるぜ。
六歳の頃、鉱山で雇われた俺は毎日狂ったように腕を振り上げては、採掘用具で岩を砕いてた。
そこにいたのは2年くらい。
最終的にその鉱山は″邪族″が出現して崩落、
俺はそこで初めて死んだ。
「……あれ」
死ぬほど驚いた。
実際死んだけどな。
邪族ってのは正直なんなのか俺も知らねェ。
だって教育なんて受けてないし……
まあバケモンが働いてる奴ら皆殺しにして、
俺は不死ってわけで唯一の生存者。
しっかし、俺も運が悪い。第一発見者は奴隷商人、
そこの鉱山で俺たちを働かせてたやつと、連絡が取れなくなって見に来たってわけだ。
となると俺はまた奴隷として売り飛ばされる。
__2008年5月12日。
俺は九歳になって貴族の雑用係として働くことになった。そこでの生活はまあまあマシだった。
と言っても、全体的に見ての話だけどよォ……
キツい仕事はほぼなかった。
鉱山経験ありの俺からすりゃァ、肉体労働にもならないくらいの仕事……でも、嫌がらせはひどかった。
飯抜きだったり、金持ちのガキに殴られたり、
風呂なしトイレなし、俺が寝ることの妨げ……
そしてある日──
「我の前で糞を漏らし、醜態を晒してみよ奴隷ィ」
肥えたジジイがニヤニヤしながらそう命令してきやがった。
こういう類に興奮する気狂いとは違い、
俺のその姿を見て、腹抱えて笑いたいんだろ?
「べー」
「ッ貴様!」
一回、反抗したら死ぬまで殴られた。
まあ俺は生憎不死なもので、夜が明けて視線を向けたら腰抜かしてたよ。
その一件でキモがられて俺は奴隷商人に渡され、
また新しいところで働くことになる。
__2009年9月2日。
__2011年11月27日。
__2013年10月1日。
……
まあとりあえず俺はかなりの回数、
奴隷として色んなところで働いてきた。
死にてェなぁ……なんも楽しくねェし、
生きてる意味ってなんだよ……
できることならすぐにでも死にたい。
でも、この身体は死ねねェもんなぁ……
俺の人生の転機ってのはいつだァ〜!
そんなこと思ってると……案外現実になった。
__2018年4月12日。
俺ァこの日、人生に希望を見出した!
ーーー
「小僧、契約通りテメェが最前線だ。
邪族の注意引いてりゃいい」
俺は非公認の邪族狩り組織に雇われた。
見るからに強そうな戦士が何人かいて、
囮役として雇われたってわけだ。
「べつに殺しちゃってもいいんすよねェ」
「……テメェにできんならやってみやがれ」
リーダーで最年長の髭が長いおっさんはそう言ってきた。いいのか? 俺ァまじでやる男だぜ?
「アアアアアアッ!?」
巨大なサソリの尻尾に俺は腹貫かれて死んだ。
「グズが……囮にもなりやしねえ」
「まぁでもおやっさん、一応安い値ですし……」
んだよこのサソリ……
強ェし、くそいてェ……まぁでもよォッ!
「いてェけど……!! いってェことはァア!」
ジジイたちの俺を見る目は丸かった。
そりゃびっくりするよなァ。
俺だってびっくりするぜ。
「おやっさんアイツ……生きてんすか?」
「おいおいマジか……生き物か? あのグズ」
「たっぷりやり返さなきゃなァアア!!」
俺は握りしめた短剣を思い切り尻尾に刺して、
そのまま腹貫かれた状態で刺しまくってやった。
「ピギャァアアアア!!?」
サソリはめっちゃ叫んだぜ。そいつはいてェのか、
尻尾が腹から抜けていって、俺は身体が再生した。
メキメキと音を少し立てる俺の身体。
治る時もめっちゃいてェし、まだ慣れない。
まあでも──
「へへへっェ!」
俺はとりあえず走って思い切り剣を刺しまくってやった。何回死んだかもわからねェけど、俺は勝った。
「……気色ワリィガキだ……でも使えるな」
「しゃアア!! 俺が勝ったァア!!」
ジジイは青い返り血と、俺の赤い血で塗れた俺を見て、すげェ満足そうにしてやがった。
「小僧、テメェ使えるなぁ。
気に入ったぜ。活躍によっちゃあ……
待遇だって良くしてやってもいいぜ?」
「まじっすか!? あざァっす!!」
俺は過去一良いところに来れたぜ!
死なねえなら無敵だ! 俺サイキョーじゃね!?
これならここで成り上がれる!!
「ケホっ……君たち……ここでなにしてるのかな?」
身体から熱が消えた。
俺……今、息してるのかわかんねェ……
「……なんでいんだよ」
ジジイはすげェ嫌そうな顔してた。
目線の先には紺色のスーツを着た奴らがいた。
八人? まあそんくらいがいたんだ。
「非公認の邪族狩りは犯罪ってこと知ってる?」
「知らねえと言って誤魔化せる内容じゃねえな」
八人の真ん中に立つ艶のある黒髪を持っていて、
黒い眼帯を左目につける顔の整った女……
てか、めっちゃ身長が小せェ。
大体肩に届かないくらいだぜ。
まあ本能的にわかることってのは多いんだぜ?
俺はあの女から目が離せなかった。
まじで強いやつってのは、立ってるだけでヤバい。
溢れ出してたんだよ……オーラみてェのが。
「おやっさん……」
「俺たちゃお終いだ。″君級″を相手に戦わねェよ」
ジジイは鼻で笑ってそう言った。
……君級ってなんだ?
「話が早くて助かるね。
みんな、彼らを拘束して」
八人のうち、その女を除いて全員が俺たちに杖を向けて、ツタみてェなので手を縛ってきた。
そして、俺たちは女以外に連れられて、
少し先に見える″魔法車″っつーものに向けて歩かされる。
「君……血だらけで服もボロボロだね」
その女は俺を見てゆっくりと近づいてくると、
俺より身長が低いせいで見上げてきた。
「そいつぁ奴隷だ。
俺たちが雇った奴隷……好きにしろ」
ジジイは連れていかれる中、そう吐き捨てた。
「君奴隷なんだ。その血ってあのサソリの?」
女は俺が殺したサソリに指を向ける。
「そうだぜ」
「ケホっ……傷はないように見えるけど……
なんで赤い血がこんなについてるのかな?」
「そりゃァ俺は不死だからだぜ。
死にたくても死ねねえんだ」
そう言ってやると女は目を見開いたあとに、
目を瞑ってクスッと笑いやがった。
「ふふっ面白いね。冗談なんかじゃなさそうだし、
正直、今真偽はどうでもいいんだ。
さて、そんな不死の君に選択肢をあげましょう」
女は二つの人生の選択肢を提示してきた。
「犯罪を起こした邪族として捕まるか、
私の下で奴隷ではなく人として扱われ、
これから共に働いて生きるか……
どちらを選ぶかはお任せしま──」
「飯はあるんすか!? 俺は飯食えるんすか!?」
俺はその時まじで目が輝いてたと思うぜ。
「言ってるでしょ? 人として扱うって。
暖かいご飯を一日三食、暖かいお風呂に、
暖かいお布団……お金も稼げて娯楽もある。
君は普通になれますよ。さてどうしま──」
「働きまァす!!
いや、働かせてくださァい!」
なんだその好条件はッ!
ただの天国行き確定じゃァないすか!
こんなん最高すぎるぜ!
奴隷なんて戻れねェなァ!
「……そうと決まれば、君お腹空いてるでしょ?
職場も見てもらわなきゃだし、色々今日中にできることはしちゃおっか」
俺の手を拘束するツタが消えた。
なんだか解放感がすげェぜ……
「……あの、俺まじで、奴隷じゃないんすよね?」
思わず手が震えて声も震えた。
信じられないような現実ってのがここにある。
「これは現実。君はもうちゃんとした人だよ」
この日、俺は人生を新しくスタートした。
奴隷とかいうクソみてェな思いばっかしてたけど、
今回ばかりは良い思いできそうだぜ……
ふふっ……へへへっ
やべ……笑いが声に出ちまう。
こんな幸せ初めてだ!
俺は決めたぜ。この生活を絶対に続ける。
そのためならなんだってしてやる。
やっとこれから俺は人生を楽しめんだ!
「ケホっ、どうしたの? 少し跳ねてるけど」
「嬉しいだけっす!」
「そ、嬉しいなら良かったね」
ー不死の奴隷はこの日、幸せの蜜を味わい、
その味に深く魅了されるのであったー
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挿絵の方は友人作です。




