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花の魔術師に誘われて  作者: 樹(いつき)
第七章 三本脚の蜘蛛
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それが本筋か


休暇の間、ハルは久しぶりにグラスネスの街の様子を見て回ることにした。


「……なんで私まで」

「いいじゃないですか」


嫌がるファリスを連れ出して、昼間の市場へ乗り出した。

その盛況ぶりを見たことは何度もあるが、買い物をしたことがなかった。


「ファリスさんはこういうところに来たことあるんですか?」

「ない。ブラックロスを出る必要がなかった」

「だったら、お買い物してみましょうよ」

「お前もしたことないのか?」

「実はここに来てからずっと働いたり修行したりしていたので……」


市場で何が売っているのかもよく知らない。


「……私は、食べ物にも装飾品にも疎い。価値のあるものを探せるかわからないぞ」

「私も同じです! きっと楽しいですよ」

「わからないのにか」

「わからないから、じゃないですか」


市場へ足を踏み入れると、他の地域から来たであろう行商人が呼び込みを行ったりしている。

色とりどりの反物や、シルバーのアクセなどこの地域ではなかなか見かけないものがよく並んでいる。

思っているよりも食べ物は少なく、カーペットなどの家具や装飾品などの品物が多いようだった。


「これとか、綺麗じゃないですか?」

「青い鳥の羽根のピアスか。こんなに大きなものを耳にぶら下げていたら敵に掴まれる」

「そういうことじゃないんですよ!」

「それよりもこっちのはどうだ。胸部を覆う鋼鉄のプレートだ」

「それ背中用じゃないですか?」

「…………」


ファリスは手に持った鋼鉄の板を一瞥したあと、行商人へ返す。


「私たちだけではらちが明かないぞ」

「そんなことないですよ。楽しいです」

「お前はな。私はこれなら修行をしていた方がよほど楽しい」

「そういう生活から抜けるために町を出たんじゃないですか? もっと無駄を楽しみましょう」

「はあ……」


欠片も分からないといったような様子でファリスは退屈とも落胆ともとれるため息を吐く。


「グレゴリさんも誘った方がよかったですね」

「あいつはあいつで物の良し悪しがわかるのか?」

「私たちよりはわかるんじゃないですか? グレゴリさん、たぶん一番まともですよ」

「あれをまともとか言うな」


少なくとも、三人の中なら一番普通の人に近い感性をしているとハルは思っている。


「ファリスさんは、私たちが金の冒険者になるための試練を受けに行くって言ったら止めますか?」


歩きながら、ハルは何気なく聞く。


「それが本筋か」

「いえ、与太ですよ。止められても行きますし」

「……正直に言えば、あまり勧められないな。あれも人の所業ではないものだと聞く。魔女との契約とはまた別の意味で命を賭けることになるぞ」

「まあ、なんとなくは覚悟していますよ」

「その言葉に揺らぎがないところを見るに本音なのだろうが、なんとなくの覚悟でどうにかなるものか」

「やるしかないんですから。覚悟とか、関係ないかもしれませんね」


ファリスは理解できないという顔をしていた。

覚悟などなくとも手足は動くことは知っている。


ハルは静かに、金の冒険者プレートを託してくれたイヴの姿を思い浮かべる。

受け取ったからには果たすべき責任がある。

それを思って、少し気を引き締めた。



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