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花の魔術師に誘われて  作者: 樹(いつき)
第五章 Something Great
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だから隠している

グレゴリはハルを背負って、アルヴィンたちの後ろをついて歩いた。

魔法学校に特殊な隠し部屋があることは知っていた。

壁に這う魔力のパズルが鍵となって隠し部屋へ通じているとは思いもしなかったが。


グレゴリは生まれた時からすでに魔力が視えていた。

放たれる色や形は人間によって違うが、それが魔力であることは本能的に理解していた。


アルヴィンからは灰色の硬い魔力が視えるし、少女からは茶色の細長い根のような魔力が視える。

その違いは本人の性質によるのだろう。


工房の中は霧のような薄くて広い魔力が絶えず流れていた。

空気のようにこの部屋の中には密度の濃い魔力が充満している。


ハルを適当なところへ寝かせ、グレゴリはスピカの行く末を見守った。

奥の壁がさらに開き、そこには結晶に包まれた石の魔女ガーネットがいた。

胸にはあの大矢が突き刺さったままで、眠っていた。


スピカはその隣りに、並べられた。

その空間だけはさらに濃い魔力が満ちているようで、彼女の身体が重力の影響を受けていないかのようにふわふわと浮かんでいる。


壁を閉じて、ヘルメスがグレゴリの方を見た。


「魔女のことはこれでいい。それよりもお前だ。その防具と武器。どこで手に入れた?」

「これは……」


隠そうと思ったが、すでにその段階にない。

ここは正直に話そうと決め、グレゴリは大きく息を吸う。


「受け継いだものだ。俺を育ててくれた竜狩りたちからの選別だ。俺が人間の中で生きていくために必要なものだと言われた」

「それは俺が作ったものだ。竜狩りたちが竜を狩れるようにな。だが、強力すぎたから、竜を狩り終えたら消滅するように作っていた。それがなぜ残っているんだ?」

「それは、俺が竜だからだ」


アルヴィンの目が丸くなるのが分かった。

しかし、ヘルメスの表情は変わらなかった。


「お前が竜なのは予想できていた。竜が竜狩りの装備を着ても本来の力を出せないことくらいはわかるだろう? 今ならお前に合う武器と防具を作れるぞ。どうする?」

「無論。俺はこのままでいい。性能の問題ではないことも、お前には理解できるだろう?」

「だろうな。俺は道具を大切にするやつは好きだ。特に、俺が作った道具はな。あのクソガキは折りやがったが」


きっとハルのことだろう。


「もっと話してしまえば、俺は今後も竜としての力を使うつもりもない。あくまで人間として生きていくのが竜狩りたちの願いだった。それは大切にしたいと思う」

「それがいい。竜が生きていると分かると、竜狩りたちの功績も無に帰す。それはお前にとってもいいことじゃないだろ」

「その通りだ。だから隠している」

「それだけ分かっているなら俺から言うことはもうないな。ただひとつ言っておくが、もしも装備が壊れることがあっても、もう直すことはできないぞ。それは魔女殺しよりも特殊なものだ。二度と作れん」

「竜の鱗か」

「惜しいな。竜の魂だ。鱗の欠片はあっても魂だけはもうこの世に存在しない。だから、もう作れない」

「そうか。これが壊れる時は俺が死ぬ時だ。修復の依頼をすることはないから安心してほしい」

「本当に惜しい男だ。お前と魔女を合わせればもっと特別な道具を作ることもできるのだが」

「それは断る。この身はもう誰にも預ける気はない」


誇りだ。

竜狩りたちから守られ、育ててもらったこの身体を、他人に好きにさせるのは死よりも重い屈辱となるだろう。


「ところで、俺の師のことだが」

「イヴの遺体ならもうアルヴィンが片づけに行ったぞ」


いつの間にかアルヴィンが姿を消していた。


「俺も行く。少しの時間とはいえ、世話になったからな」

「そうしてやれ。あいつも喜ぶ」

「あいつ?」

「イヴには友人と呼べる人間がいない。最後にお前らに慕われて楽しそうだった」

「そうか……」


人間の死生観についてはかなり学んだつもりだが、すでに死んだ生物が生者の世界に何らかの感情を持つという感覚だけは未だに理解ができていない。

しかし、それもいずれ理解できるだろうとグレゴリは確信めいたものを持っていた。

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