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【♯07】こんな運命的な再会、奇跡としか思えない。

――TIPS――

【A.I.M.S ランクマッチ基本ルール③】

・ランクマッチでは階級の変動に伴って、昇格・降格のサインとして『ランクポイント』を用意している。

これは自分が撃破、もしくは味方の撃破のアシストをした回数に応じて加算され、ノルマのポイントに達した際にランクアップされる。


例)〚キルポイント=10pt アシストポイント=5pt〛✕それらを確定した回数

ランキング 1位=100pt 2位=80pt 3位=60pt

4〜10位=50pt 11位〜20位=40pt 21〜30位=30pt

31〜40位=20pt 41〜50位=10pt 51〜60位=5pt


 ――キッドとハリアー、三部隊一斉撃破という快挙を成し遂げ、戦利品である敵のデスボックスのアイテム漁りを終えた頃。


 サルベージ区域『ブルーインパルス』から110m離れた岩壁の高台にて監視する二人のプレイヤーを発見。


「………あっちの様子はどうや? アリスはん」

「んー、ちょっと遅かったかもね。殆どの部隊がやられたか撤退してるわ」


『ブルーインパルス』内の敵をスナイパーライフルの8倍にスコープを覗きながら遠方射撃し、漁夫の利を狙いに構えていた様子の二人組。

 区域内の敵は最大で五部隊程居たが、キッドとハリアーによって三部隊は全滅。


 他の二部隊も別の建物にて戦闘していたが、そちらも短時間で決着が付いて片方の部隊は狙われないうちに戦利品を確保して撤収したようだ。


「多分ワテの予想なんやが、そこにはあんさんの探してる【プレデター】の売人らしいプレイヤーは居らへん。他の射撃ポイント探しに行かな」

「そうね。もう、せっかく良い狙撃ポイントを見つけたと思ったのに……あら?」


 巨漢ボディに重装甲、更にはヘルメットの上に大きなゴーグルを掲げたアバターが“ツッチー”という男。

 そして先程までロングバレル型スナイパーライフル『ファラウェイズ』を構えて、狙撃体制に入っていた水色エプロンドレスのアバター“アリス”がライフルを降ろそうとしたその時。


 前側の防弾シェルターから、スコープ越しに気配を察知したアリスが再び狙撃体制に入る。


「ツッチー! まだ敵が居たわ」

「ありゃ、とすると【プレデター】か?」


「……いいえ、ちょっと違うみたい。でもキルポイント稼ぎに戦いましょうか!」


 彼女らも、チートプログラム【プレデター】に執着しているようだが、相手は誰であれ撃破すればエイムズマネーも武器も手に入る。

 ここは()()()に目に付いたプレイヤーを狙撃する考えのアリス。



 狙われている事など全く知らずに、そそくさとシェルターを後にする二人のプレイヤー。

 その正体が、彼女達の幼馴染であるキッドとハリアーとも知らずに……!!



 〘◇Now Lording◇〙



 ―――しかし、キッドもハリアーも優秀な狙撃者である。故に敵からの奇襲に警戒は怠らず、『ブルーインパルス』と荒地を結ぶブッシュ(茂み)の中を潜りながら、次の目的地へと進む。


「キッド、次はどこへ行く?」

 とハリアーが目的地をキッドに任せる形で促せば、


「端に降りちゃったからな、ちょっと歩くけど中央地点の『マークスマーケット』へ行くか。市場のエリア」

「彼処か……先客にアイテム取られてんじゃねぇか?」


「アイテムは関係無いよ。早いところ陣地決めないと、【ファイアウォール】が迫ってくるからな」



 ここで新たに登場したワード【ファイアウォール】。


 広大なフィールドを舞台に展開するFPSでは、100人全員もしくは生き残りのプレイヤーと勝負するのに、広いと探索する手間を取ってしまいます。

 そこでゲームシステムとして、一定時間の段階毎にフィールド全体を()()()()によって縮小させる【ファイアウォール】の出番。


 陣地の取り決めや、プレイヤー達の安全地帯移動をデスマッチ感覚を味わおうという訳だ。


「まだファイアウォール縮小まで三分くらいあるから、余裕持って真ん中の陣地で構えてようぜ」

「良いけどあんまり派手に動くなよ。敵が狙ってるかもしれないぞ」

「そんな脅かしたって、俺はおろか視聴者だってビビんねぇよ」


 いや、脅かしではない。 実際にアリスとツッチーが、ブッシュに身を隠す二人を狙っている!

 先陣切ってハリアーが、茂みの林を頭から抜けていったその刹那―――!


 ―――ダァァァァァン!!



「うぁッッ……!!」

「ハリアー!」


 ハリアー、運悪くヘッドショットされた!

 スナイパーライフルは遠距離用武器であるため、攻撃のテンポは悪いが一発のダメージはマグナム銃よりも高い!


 撃たれたハリアーは慌ててブッシュ中に再び身を隠すが、シールドプロテクターは破壊され、それに余って強烈なダメージは基礎体力にも削られていた。


「やべぇぞ、どっからか狙われてる!」

「待ち伏せてたか。そんならこっちはこうだ!【スモーク・エスケープ】!!」


 キッドお得意の煙幕ノーマルスキル。これをブッシュの茂みに充満させてスナイパーに位置を悟られないようにする。そしてその隙にハリアーが繰り出すスキルは緊急回避用のパネルだ。


 ◇――――――――――――――――――――◇

 ・ノーマルスキル【エアロジャンパー】発動

 ◇――――――――――――――――――――◇


「準備出来たぜキッド、飛べっ!!」

「ッしゃ!」


 ビシュュュンンッッッ


 ハリアーが放出した、突風の力によって最大20mのジャンプが可能なトランポリンパッド。

 これによって煙幕の中から飛躍回避を図ったが、高台から覗く二人四つの眼からは逃れられなかった。


「ツッチー! 敵が東の方向に飛んで逃げてる!」

「おっしゃ逃さへんぞ〜、LMG(ライトマシンガン)の連射を受けてみぃや!!」


 ドガガガガガガガガッッッ


 途切れぬ連射に火を吹く弾丸。SMGと対して重量感があるLMGはとにかく連射数に長け、ワンマガジンの弾倉数もSMGの約2倍程。

 発射速度は劣るが、その分敵にリロードの時間も与えない連射時間で確実にノックダウンしていく!


 そんなLMG使いのツッチーの武器は『フレンジーF500』。

 なんとワンマガジン50発の弾倉数を誇るマシンガンで、反動は凄まじいものだが、豪腕なツッチーが持てばリコイル制御も容易いもの。エアロジャンパーで空中回避する二人を相手でもエイムが味方している!


「ハリアー、狙われてるぞ!」

「分かってるって……クソっ!」


 分かってはいても対処が出来ない。完全にマーキングされて反撃もままならないハリアーはシールドプロテクターのエネルギーを回復させたにも関わらず一瞬にして割られ、徐々に生身の体力を削がれて遂には……!


「ぐぁぁああッ!!」


 〔ハリアー ノックダウン!〕


「ハリアーー!!」


 血飛沫を立てながら、尾羽打ち枯らすハリアーは立つことすら出来ない程に負傷した。

 これが俗に“ノックダウン”と呼ばれる戦闘不能状態。這いつくばりながらも岩陰に移動するハリアーは、ダメ押しによる撃破だけは免れた。


「やりやがったな!」


 これに怒ったのがキッド。高台からの狙撃はザラではあるが、今の彼ではこの岩壁の高さに登ることも出来ない。しかしそれを打破するのがノーマルスキル!


 ハリアー同様キッドは岩陰に隠れながら、アリスとツッチーのいる高台目掛けて構える人差し指。


「お前らそこから降りな、同じ地面で俺と勝負しろ!!」


 ◇――――――――――――――――――――◇

 ・ノーマルスキル【ファイアークラック】発動

 ◇――――――――――――――――――――◇


 彼の人差し指から発する高熱エネルギーがスキルの合図。そこからバァン!と破裂にも似た音を立てて凝縮されたエネルギーが高台に着火したと同時に、弾ける火花の打ち上げ花火!


「いやぁ〜! 何かチクチクするぅ!」

「アカン、テルミット反応やがな! 降りるで〜!!」


 エネルギーの着弾と同時に飛び散る炎が、金属酸化物とアルミニウムの混合物を点火させて起こる“テルミット反応”の如く凄まじい火花となって、ジワジワと蓄積ダメージを与えていく。

 それに耐え兼ねたアリスとツッチーは、高台から平地へと避難。これでキッドとフェアな状況下に引きずり込まれた。


 そして彼女らに対して向けられるは、臆せず戦う意を持つキッドのマグナムリボルバー『ファイアバード』……!


「……何よ、あたし達二人でも逃げない気?」

「随分自信たっぷりの様やが、自惚れ過ぎとちゃうか?」


「チーターをぶっ潰す俺が、お前ら相手に逃げるかよ。覚悟し――――――!!?」



 ❴その二人は撃つな、お前の味方だぞ!!❵


(何………!?)


 ―――本来なら、キッドは躊躇わずにマグナムの銃爪を引いて戦闘に向かうつもりだった。

 だが突如、彼の中に眠る“サラマンダー”の魂の叫びが、キッドの戦意を抑制させる妙な感覚に陥らせた。



 キッドはその意志に応え、彼女らの魂の奥を探る。


 アリスの魂には、水波乙女(ウンディーネ)という水の精霊。

 ツッチーの魂には、樹木小人(ノーム)という土の精霊。


(コイツら……もしかして!!)



 アリスとツッチーの精霊の魂がキッドの魂に共鳴し、彼自身の深い記憶から蘇る感触を湧き上がらせる。終いには構えていた筈の『ファイアバード』を懐にしまい込んだ。


「……な、何よ? 何で撃たないの!?」

「ビビったんかぁ、だったらワテから……!」



「待て! 俺はお前らを撃つ気はねぇよ。―――アリス! ツッチー!」


「「えっ………?」」



 アリスとツッチーは、匿名で知らない筈の敵から自分の名前を称された事に一驚した。

 何しろ彼女らのニックネームを知っているのは、同じ幼馴染であるキッドとハリアーだけなのだから。


「何で貴方があたしの名前を……?」

「……あんさん、何者や?」


 まだキッドである事を二人は疑っているようだ。


「じゃ、これならどうだ?」


 ◇――――――――――――――――――――◇

 ・キッドのPAS『サラマンダー』確認。

 ◇――――――――――――――――――――◇


 キッドは射撃訓練場で魅せていたサラマンダーの異能力を発現させて、火龍精霊の波動をアリスとツッチーに魅せつけた。


「サラマンダーのPAS……!!」

「って事は、ホンマにあんさんか!?」


 二人の問いにキッドは、何も口にはせずとも満面の笑みでコクリと頷いた。


「久しぶりだなぁ、二人共……!!」


「きゃーーーー!!!」

「わ゛ーーーーー!!!」


 ……ゲームでこんな奇跡があったであろうか?

 5年以上顔を合わせられなかった大親友の幼馴染が、不毛なる戦場にてまさかの再会。

 アリスもツッチーも嬉し叫んで武器も捨てて、手を取り合ったり抱擁したりでもみくしゃにされるキッド。


 更には視聴者もなんのこっちゃで〘!?〙やら〘てぇてぇ〙やらで各々のリアクションで補っている。


「キッドお前ッ、今まで何処ほっつき歩いとったんじゃ!」」

「連絡取れなくて心配してたのよ!」

「いや、話は後でするから……今配信中だし」



 あのー御三方。感動の再会で申し訳ないんですけど、誰か一人忘れてませんか?


「「「え?」」」


 ノックダウン中のハリアーさん!!




「…………空って、こんなにアオカッタンダ……………☆」

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