【♯71】スクープ・ハリアーが巨大基地を見た!?
――A.I.M.Sの緊急ミッションに失敗してしまったキッドとアリス。その日のライブ配信は散々たる結果を出してしまった。
何せアリスは所属するモデル事業所の後輩を救うのに夢中でいつもの冷静沈着が保てず、レイダーズに返り討ちにされるは、奪われたプレイヤーの生命エネルギーの行方も分からず撤退してしまう始末。
活躍の場など魅せる余裕もなく、天ちゃん琴ちゃんのチアタイムも無しになった。
更には彼らの前に現れた『グラシエ』と名乗る雪女アバターのゲーム戦士に助けられた。
彼女は、キッド達同様に地底空間出身である事をカミングアウトすると同時に、アリスのプレイの浅はかさに視聴者の前で叱咤した。
こんなものを生で見せられては、流石のトリガーズファンも今回だけは興醒め状態。スーパーチャットの恩恵も乏しく、空気を読むが如く同情のコメントだけが残り、若干数名のチャンネル登録者数が減ったという地味に凹む結果を残したのだった。
――しかし、地底空間の底力を魅せるトリガーズのファン・推しの力を侮ること無かれ。
全盛期よりゲーム配信のブームは去りつつあっても、作者の大好きな球団が12連敗という屈辱にあっても、真のファンは落ち目の時こそ全力で応援するものだと何処ぞの駄メガネが仰っていました。
チャンネル登録約130万人の殆どは地底空間のユーザー達。配信後にキッドやアリスへのエールコメントが多数寄せられ、次のミッションまでの健闘を祈る視聴者の姿に感銘を受けた。
早速に配信から翌日。地底空間・B1層にて、キッドは既にチャンネル人気回復へのプランを絶賛施行中だ!
〘◇Now Lording◇〙
「やっぱA.I.M.Sのプレイ配信だけじゃ厳しいかな……? てかこれだけで需要得られたのも奇跡みたいなもんだし、そろそろ雑談とか趣味話とか入れてみるかな〜。担当はツッチーとかハリアーのどっちか……」
デスクトップのパソコンを開いてブツブツと独り言を述べながら動画編集をするキッド。ゲーム戦士であり、エンターテイナー兼ゲーム配信者でもある彼は謂わば”二足の草鞋“を履いて夢を追いかける男。時間がいくつあっても物足りない。
一方でアリスは、モデル事業所の所長・雨宮文子に後輩の救出を約束すると同時に、スナイパーの技術を高めるべくA.I.M.Sの射撃訓練所にて特訓している。あのグラシエの叱咤が強烈な活力となったのだろう。
こうしている間にも、憎き敵・ヘビーメタルレイダーズの連中はプレイヤー達の生命エネルギーを奪い、我らゲーム戦士達の人質の量を増やしている。
トリガーズ達に一刻の猶予も許されない中で、今は彼らにしか出来ない事を全力で尽くすしか法はない。
そんな中でキッドは動画編集しつつ、これまで身近に起きた事を脳内で振り返っていった。
(そーいや、新シーズンになってから地底空間と地上の差別があまり見られなくなったな。プレデターの件が解決して、地底空間のプレイヤーが評価しつつあるのか。俺等の他に地底のゲーム戦士が表に出られる機会が増えたからか)
これまで“ゲームの敗北者”として幾多の人々を追放していった地底空間・アンダーグラウンドエリア。
ゲームによる実力社会を形成してから五十数年が経って、地底空間の認知が変化しつつあるこの時代。
キッド達トリガーズや、グラシエといった強者がA.I.M.Sで参戦するようになり、改めてプレイヤーの一員として認められていくようになった地底空間出身のゲーム戦士達。
何れはトリガーズの四人も、他の地底空間のゲーム戦士と手を組み、苦難を乗り越える展開が来るのだろう。グラシエがアリスと再びの対峙を約束した時のように。
(……待てよ。何かそれ、前にも似たような展開があったような……?)
先程の私の報告に、キッドの記憶からデジャヴを感じたのか長い更新ブランクをも乗り越えて思いだす。
そこで思い浮かんだのは、レイダーズとの初陣で共戦した”ナカター“というゲーム実況者。彼も同じく地底空間出身で、キッドと似た元素のPASを持つ者が会いたいと言っていた。
(じゃナカターとグラシエって何か関係が……? いやまさか、あのブサイクとクールビューティに関連があるとは思えねぇな……)
多少の偏見は口にしてないだけ御容赦願いたい。
しかし彼らが同じ志で、トリガーズの皆と交流を望む事は願ってもない機会。
いつかキッドも、ナカターの言っていた”類似する元素のPASを持つ者“と出逢いたいと思っているが……果たしてその日は何時になるのだろうか?
――ガチャッ
すると突然キッド家の玄関の扉が、インターホンも無しに開く音を、隣の自室にて彼は耳にした。
慌てて部屋から駆け出せば、親の顔よりも良く見る友人の姿あり。
「……お前さ、俺の家入るならノックくらいしろよ」
「じゃ鍵くらい掛けろ。地底空間だからって不用心過ぎるだろ」
あー言えばこ―言う。ニヒルにも当たり前の如く友人の家に入り込むのはトリガーズメンバーのハリアー。
「あ、そうだ丁度良かった。ハリアー、お前さ次の配信の企画でさ……」
「その前にキッドに見せたいものがある。配信なんかより重要なヤツ」
「配信より重要だぁ? だったら是非見せて貰いたいもんだね」
せっかくの配信企画プランの交渉に乗り出すも、ハリアーに話をへし折られて不貞腐れるキッド。渋々と彼のプレイギアからフォト写真を拝見すると。
「……これ何処の基地だ? 地球連邦軍のM◯とか積んでそうだな」
ご想像に任せたとしても自主規制、待ったなしですな。
「ゲームワールドオンラインを探索してたら偶然見つけたんだよ。工場や機械都市のエリアに巨大格納基地。しかもコイツはA.I.M.Sの戦場エリアにも採用されてる場所らしい」
「それと俺等と何が関係があるってんだよ。お前の趣味曝け出すなら企画作ってやるからそれで喋りな」
「バカ、この写真を良く見てみろ。基地の窓ガラス付近を拡大して……」
ハリアーに言われるがままに、キッドは二本指で写真を拡大させて目を凝らして確認する。そして彼は一驚した。
基地の窓の奥に、かつてキッドとルシファーを潰そうと仕掛けた10式戦車を彷彿させる長い砲台が映っていたのだ。
「……嘘だと思いたいよ。『ハッタリの染谷』が罠に投入した10式戦車そっくりの砲台じゃねーか」
「しかも基地が戦車20台は入るほどの広さだ。おそらくA.I.M.Sで導入される事になる兵器を格納してるんだろう」
「だけどもまだゲームで導入されてないんだろ?」
するとハリアー、今度は窓から反対側で基地の外にて屯する人影が映っていた事をキッドに確認させ、それを拡大して見てみると……
「レイダーズの機械兵じゃないか!!」
「そう。撮られてるのも知らずに熱心に倉庫を監視してた機械兵だ。血眼で欲しがってんだろーな」
ここまで来れば話の辻褄が合っていく。ハリアーがキッドに伝えたかった事が、ツーカーを通り越して一瞬で理解した。
「ハリアー、良い配信企画が浮かんだぜ。【ミッションイン◯◯】な感覚でやってるか!」
「普通に諜報活動って言えよ!」
ネタが浮かんだら一生懸命。キッドのエンタメ精神をハリアーが巻き込んで、新たなA.I.M.Sバトルを繰り広げていくのですが、それはまた後ほど!
――本日のA.I.M.Sゲームレポート、報告は次回に続きます!
〘◇To be continued...◇〙
小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも下の「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を何卒お願い致します!
更には後書きと広告より下の評価ボタンでちょちょいと『★★★★★』の5つ星を付けて、作者やこの物語を盛り上げて下さいませ!
A.I.M.Sで登場させたい実物の名銃も、感想欄で募集します! 次回も宜しく!!




