【♯69】アリス・脳天沸騰中! 理不尽に氷の鉄槌を。
――さて。数ヶ月以上更新されず、溜めに溜めた作者の創作欲がようやく湧き上がった所で、A.I.M.Sレポートを報告しよう。
参加するプレイヤー・ゲーム戦士全員が、一斉に銃を携え目標に向かって戦場に挑む『スクランブルモード』。
今回の目的は我らプレイヤーの宿敵、ヘビーメタル・レイダーズによってゲームで意識不明になったプレイヤー達を救出するミッションに挑む。
舞台は三日月型の無機質な半島【スターダスト・エッジ】。東京ドーム約40個分のフィールドに投入された精鋭ら凡そ70人。
A.I.M.Sに挑む戦士達の戦力を蓄える巨大武器倉庫にて、既に静かな水面の清心をも揺るがす、熱い銃撃戦が繰り広――――
KABOOOOM!!!!!
だぁぁああ!!? 何だなんだぁ!? いきなり倉庫の内部が爆破されたぞ!!
倉庫の全体から見て北西、おそらく武器などが積み込まれた格納室辺り。窓や通気口から火柱を上げての爆破からみて相当な爆破とみられる。
彼処にはトリガーズのキッドとアリスが突撃して中に入ったまま。まさか、爆破にやられてしまったのか!?
「――――冗談じゃねぇよ! 更新ブランク空いていきなし自滅じゃ洒落にならないっての!!」
無事の一声、並びにメタいツッコミを上げたのはご存知トリガーズのキッド。格納庫内にてアリスを庇いながら、右手を突き出して発動したるはノーマルスキル。今回は防御の技だ。
◇――――――――――――――――――――◇
・ノーマルスキル
【ボンバープロテクション】発動
◇――――――――――――――――――――◇
PAS・サラマンダーの能力から、レベルアップで習得した紅蓮色の半透明プロテクター。
これは爆弾といった投擲物や地雷などの爆風・爆破ダメージを完全にシャットアウト出来る特殊なバリアを発生させる技である。ただし何故か銃弾は貫通してしまうので、ここはツッチーのプロテクターに任せておくに限る。
そもそも何でキッドとアリスが、特攻転じて間一髪の展開になったのでしょうか?
「いや、まぁ……その……」
あら、アリスさんが急にしどろもどろになっちゃって。まさか戦犯は貴方ですか?
「当たり。いつもクールが売りなお嬢ちゃんが、頭に血が上って機械兵が事前に仕組んでいた罠に気付かなかったんだよ」
キッドが言う”罠“とは、武器や投擲物を収納している格納室付近にて仕組まれていた赤外線センサーの事。
そのセンサーには格納室内にセットした時限爆弾の起爆装置の役割を果たしており、それをアリスが触れてしまった事で起動された。それに気付いたキッドが咄嗟の判断でアリスを庇い、【ボンバープロテクション】で爆破に巻き込まれずに済んだ。というわけである。
格納室に収められた武器はプレイヤー達を罠に誘う為の囮。それらは爆破に巻き込まれて使い物にならなくなった。
〘キッド、ないすぅ〙〘アブねぇ〙〘流石リーダー〙〘アリスちゃん、冷静にいこう〙〘落ち着いて〙
配信にて視聴している視聴者もファインプレーに対する感嘆のコメント、並びに労いと同時に投稿されていく。
しかし、その心配を他所にしてアリスの焦燥は更に増す一方であった。
「ホント、あの連中ムカつく……ッ!」
ギリリと歯軋り、アリスの怒りは配信内でも伝わり、視聴者の中では心配の度合いも増す。配信事故を危惧したキッドは、彼女を落ち着かせようと話し掛けた。
「なぁアリス、今日はどうしちゃったんだよ? モデルの後輩ちゃんを助ける為にも、一番落ち着かなきゃいけないのはお前自身だぞ。頭熱くなってちゃ元も子もないだろうが。ほら深呼吸!」
幼馴染みだからこそ言える立場と距離感。キッドは彼女の背中をポンと叩いて鼓舞していくが、アリスは顔を俯くばかり。
「……キッドさ、あたしや後輩達がどんな想いでモデルをやろうと頑張ってるか分かる?」
アリスは声を強張らせながら呟く。彼女の感情にはやり場のない怒りと、これまで職場で耐え抜いた憂さが入り混じっているように聴こえてくる。
「雨宮さんが立ち上げたモデル事業所は、あたし達地底空間出身の女性の希望なの。『どんなに理不尽に打ちのめされても、磨いた美の心に勝るものはない』とあの人に教えられて、あたし達モデルの卵は歯を食いしばってランウェイを歩けるように努力してる。
……その努力を、身分の弁えだけで差別される筋合いが何処にあるの!?」
それはアリスが地底空間出身である故に、モデルとしての実力を認められない葛藤からの本心であった。
「あたしだけじゃない。他の後輩達はあたし以上に酷い陰険ないじめや偏見もされてる。だからギャラもロクに入らないで、こうしてA.I.M.SやRMT要素のあるゲームで生計立ててる人も多いわ。そんな中で後輩達はレイダーズの意識不明事件に巻き込まれた。理不尽にも程があるわ!」
喋れば喋るほど、彼女の籠められた怒りのボルテージは上がる一方。普段こういった憂さを仲間の前でしなかったアリスは、この場で我慢の限界が来ていたのだ。
しかし今は戦場の炎に包まれたゲームの中。激情に駆られて怒りに身を任せる暇は無い。キッドは彼女の痛みや苦しみを魂に受け止めつつ、厳しい眼で彼女を叱咤する。
「その理不尽をぶっ潰す為に、アリスは俺とペア組んで戦場に来てんだろ。その怒りはここじゃなくて、敵に向かって弾と共に籠めてけ! 怒って震えた手で敵は撃ち落とせねぇぞ!!」
理不尽の標的にされているのはアリスだけではない。キッドも屈辱と堕落の数年を送った経験から、怒りの矛先を何処に向けるべきか、彼女に再確認させていく。
キッドは叱咤する前から、何かの気配に気付いていたようで。俯いていたアリスの顔を前に向けて、今置かれている立場も認識させていった。何しろ彼らの眼先には――――
爆破によって他所から引き寄せられたレイダーズの機械兵の大群が、二人を既に包囲されていたのだから……!!
〘ヤバい〙〘あんだけの爆破だ、敵も野次馬も来てもおかしくない〙〘武器的に戦えるか……?〙
キッド・アリスだけではなく、視聴者達のコメントからも緊張感が伝わる。
何故なら彼らの装備武器の殆どがスナイパー・マークスマンライフルといった長距離型武器。
近距離で囲んだ機械兵相手に全滅させるという展開は、決して容易に達する事は出来ない。
「……ゴメン、キッド。あたしが不甲斐ないばかりに」
「謝るなら生き残ってからにしとけ。クールになってりゃ自ずと光明が見えてくらぁ」
「今は見えてるの?」
「……………丑三つ時並みに暗いね」
窮地に皮肉も交えた冗談が行き交う二人。
そんな気の抜けたジョークが通じる訳もない機械兵は、非情にも四方八方に有鉄砲、SF特有のレイガンを彼らに構える。
しかもこのレイガン、あのプレイヤーを消滅させるという『デリートストリーム・レーザー』の量産型というオマケ付き。下手すれば主人公・ヒロイン消滅という悲報ものに。
(万事休す、か……?)
爆破によって膨れ上がる熱気と、修羅場を突破出来るかという不安による額の汗がしとどに流れ落ちる。
(―――――? 何か、冷たい……??)
……ところが。真夏以上の熱を帯びている筈の倉庫内に、微かな冷気を肌で感じ取ったキッド。それは極限状態によって血の気が引いたものとは訳が違う。肌を刺すような氷点下の冷気が、次第に身体全てに伝わった時。
―――――パリッッッ
空気をも氷ついたような、硬く冷ややかな音が倉庫を木霊する。このような刹那な展開が続く中で、更に彼らはその目を疑った。
「な………?! 機械兵が――――」
「凍結されてる!?」
キッド達を囲んだ機械兵団が、全身氷に帯びた状態で全員凍結状態に。集積回路は超低温によりその機能は停止されている。
倉庫の鉄骨をも瞬間冷凍されたにも関わらず、キッドとアリスは全くの無傷。九死に一生を得たとはご都合の良すぎる加護か奇跡か。
それを呼び起こしたのは他ならぬ、本邦初公開・新たなゲーム戦士の力によるものだった!!
『貴方の水の力、怒りで沸騰してるわね――――――私が冷やして差し上げましょうか?』
キッド達の前に現れた新たなゲーム戦士。白の和服姿に長銀髪を靡かせる雪女のようなアバターキャラ。
彼女を目の当たりにした二人のPAS、炎と水の精霊がその力に微かな共鳴を感じたのだった……!
――雪女アバター・新ゲーム戦士の正体は、次回のA.I.M.Sレポートにて報告します!
〘◇To be continued...◇〙
小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも下の「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を何卒お願い致します!
更には後書きと広告より下の評価ボタンでちょちょいと『★★★★★』の5つ星を付けて、作者やこの物語を盛り上げて下さいませ!
A.I.M.Sで登場させたい実物の名銃も、感想欄で募集します! 次回も宜しく!!




