【♯67】デュオ編成・キッド&アリス! モデルの志は高く。
――A.I.M.Sゲームレポート、報告を続行します。
現在、A.I.M.Sにて話題を掻っ攫っている第三勢力組織【ヘビーメタル・レイダーズ】。
突如プレイヤー達の前に出現し、最先端技術を駆使して造られたレイダーズの兵器によって、ゲームに参加するプレイヤー達が帰還不能。つまりオンラインゲームからログアウト出来ず、肉体の全神経を電脳世界に閉じ込めて、意識不明となった人々が続出しております。
ゲームで心身に危害を与える事態となれば、当然大事に発展するわけですが、どういうわけか。メディアや政府はその事実を公表せずに黙秘しているのです。
何故ならレイダーズは、このA.I.M.Sのみならず、全ての大規模オンラインゲームを総括した地球規模の電脳異世界【ゲームワールドオンライン】の意志で造られた人工知能が創り上げた組織。
そしてこの電脳異世界のゲームを管理する『WGC』の手によって、これらの事件を黙殺している噂もあるんだとか。全世界に熱狂するゲームを提供する管理機関ですが……その闇は触れたら最期、なんて事もあるんだとか。
そして今回の舞台は、プレイヤー達が転送される電脳世界の最果て、転送可能エリアから外れたエラー区域に位置する鉄の機械城。
ヘビーメタル・レイダーズの尖兵や指揮官達が、今宵もまた良からぬ事を企もうと新兵器・武器のグレードを上げての悪巧みです。
そんなレイダーズの総元締め、スチール大将軍は何やら無機質な鋼の手に光り輝くエネルギー物質を、手玉に取っては不気味な笑みを浮かべる。
「ぬはははは……! 順調に集まっておるわい。このエネルギー物質が我々の手の内にある限り、何れはこの世界は皆レイダーズのものとなるのだ」
相変わらず悪役らしい台詞を吐くようで。気付けばスチール大将軍の周囲には無数の光り輝くエネルギー物質が。そもそもこれらが一体何なのかも分からないまま、例の能天気おじいちゃんが大将軍の司令室に入室する。
「お邪魔すっぞぉ、大将ぐ…………なんじゃい、心配せんでもお気楽な事ですなぁ。敗戦したばかりなのにそんなホタルみたいなのを集めちゃって」
「Dr.ナマリか? 馬鹿者、これはホタルではない! このゲームワールドに転送してきたプレイヤー共の生命エネルギーなのだぞ!」
そうなのです。スチール大将軍が手にしているエネルギー物質の正体は、A.I.M.Sのマッチにてレイダーズ達にノックダウンされて消滅したプレイヤー達の生命機能を維持させる為のエネルギー体であった! それを敵軍であるレイダーズの手に渡ったということは、当然良い話であるはずがない。
「我々が開発した『デリートストリーム(以下略)』は、プレイヤー達を骨も残さず消去させる力を持つが、このエネルギー体だけは消滅されずに残る。電脳世界へ転送させる為の生命データは神でなくては消滅出来ないと聞くからな」
A.I.M.Sや様々なゲームを総括する『ゲームワールドオンライン』は地球規模のVRMMO。その下で生まれたレイダーズとて、人々の命を完全に奪う事は出来ない。生殺与奪の権は、ゲームワールドを動かす神様か人間でしかが担う事の出来ない所業なのだ。
「それじゃ、何の為に将軍は生命エネルギーを? そんなの集めてコレクションだなんてニッチな趣味する御方じゃあるまいし」
「んな下らんものを陳列させるか! 謂わばこのエネルギー体らは人質だよ、人質!!」
人の生命エネルギーを下らんと断言するとは流石悪党! いやいや、そんな感心してる場合じゃあない。
現在レイダーズが捕獲したプレイヤーの生命エネルギーは五十数個にも及ぶ。つまりは50人以上の人々が、現実世界で意識不明となっている。その中にはトリガーズのアリスの後輩モデル達も犠牲になっていた。
何とかして生命エネルギーを取り戻さなければ、人々の意識は戻らないまま。奪還させるには唯一つ。A.I.M.Sに挑み、戦うしかない!
〘◇Now Lording◇〙
――当然、この非常事態に何も動かないA.I.M.Sの運営ではない。
スクランブルモードの緊急ミッションとして、レイダーズを捜索し、奪われた生命エネルギーを奪還する為に全プレイヤーの協力イベントが行われていた。
当然、我らがエレメント◇トリガーズも参加しない訳にはいかない。何しろアリスさんの後輩ちゃんの命にも関わる事ですからね。
時刻は午後6時。配信準備と予告も事前に済ませ、A.I.M.Sの射撃訓練場にて練習しているのはキッドとアリス。今回は二人編成の『デュオ』でスクランブルモードに挑む意気込みだ。
『……ねぇ、キッド?』
「何だ?」
『今日はハリアーとツッチーは来ないの?』
薄々感じてはいたが、キッド達並みに濃い個性の残りのメンバーの姿は何処にもない。
「なんか二人共、大事な用があるつって来れないんだと。それもあって今日はデュオで戦うって予告出したんだよ」
『何でこんな大事な時に……』
「アイツらにもアイツらなりの事情があるんだ。あまり恨まないであげなよ」
等とアリスを宥めるキッド。彼の手にはお得意のリボルバー拳銃が片手一丁で火を吹く。
しかし今回は十八番のオリジナルマグナム銃『ファイアーバード』ではなく、4インチの銃口の.357マグナムリボルバー【コルト・パイソン】であった。
「……ファイアーバードで慣れちゃってるな。独特の反動力があるから弾道がブレやすい」
普段使用している武器で感覚を覚えていたキッド。銃の種類によっては反動や照準適性もバラバラな為、慣らすのも容易じゃない。とはいえ、6発中4発ヒットするだけエイムは十分な気がするが。
「装填数6発、ヒットすれば60ダメージの高威力。使いこなせりゃ戦力になるな。後は……」
キッドは一旦コルト・パイソンを収納し、もう片方の装備武器を中距離のダミーロボットに撃ち放つ。
1秒28発の高速連射が可能なSMG『SS−1000』を9割ヒットさせてのノックダウン。
「アリス。俺今日は中距離感覚で攻めるから、そっちはお得意のスナイパーで遠距離援護の形で頼むわ。デュオならこれで上等――――」
――――キュンッッ
「っっと!!?」
〘240〙〘DEFEATED!!〙
飛距離からして約300メートル。遠距離弾道がキッドの顔の横スレスレに飛び交い、その先にある複製されたばかりのダミーロボットの頭を貫通する。ヘッドショットによる大ダメージで再びノックダウンされた。
『……キッド、いつも思ってたんだけどさ。いつもあたし貴方のフォロー回ってるじゃない? 偶には前線出てみたいって思うのよねー。後輩助けたい気持ちもあるし』
「え? だってスナイパーなんだから前は苦手なんじゃ」
〘240〙〘DEFEATED!!〙
(……………え、何? 故意で俺狙ってる???)
2発連続のダミーロボット・ヘッドショット。アリスの発言と行動から、何処かしら鬱憤らしき気も感じたキッド。
所属事務所の雨宮所長の事や、自分を慕ってくれる同じ地底空間出身の後輩モデルを助けたい。そんな思いがスナイパー・アリスを前へ突きだす原動力となっていた。
『今日はあたしメインでやらせて! 事務所の皆を泣かせるアイツらを絶対許さないんだから!!』
「ちょ、待て! いきなり前線でやるつったって無謀な―――」
――――ピカッ
その時、キッドのアバターの頭部から水色のレーザーライトが差す。振り向いて目を凝らせば、数百メートル先にスナイパーライフルを構えて殺気立ったアリスの怖い目つき。
「…………ワカリマシタ。オマカセシマスオジョーサマ」
怒り心頭のモデルスナイパー、取扱い注意!
あと一時間後には、キッドとアリスのデュオ前線のゲーム配信が始まるが……果たして、如何なる闘いが待ち構えているのでしょうか?
――本日のA.I.M.Sゲームレポート、報告は次回に続きます!
〘◇To be continued...◇〙
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