【♯63】悪役は極悪でも憎めないのが丁度いい。
「『デリートストリーム・レーザー』! 我輩の機械ボディ内に貯蔵された粒子分解エネルギーを武器にして、半径150メートル先の敵にも直撃される遠距離砲。これに当たったゲーム戦士は、電脳に転移する際に起こる粒子化現象を起こし、ミクロン以下の分子となって消滅したも同然となるのだ!!」
「……あのさ、状況把握する前に武器説明してくれるの止めてくれる?」
そうですよ、キッドさんの言う通り。何のために三人称役の語りがいると思ってるんですか!(プンプン)
「ほら、三人称怒ってるぞ」
三人称語り部の私、Mr.Fの状況説明が遅れた事で御冠になった所で、改めて説明を。
フルムーン・メガロポリスにレイダーズの御大将・スチール大将軍自らが出陣仕った。キッドとルシファー達に散々おちょくられ、キッドの腕を買って勧誘しようにも当然『NO』と言われる始末。
だが伊達に『ヘビーメタル・レイダーズ』、鋼鉄の襲撃者の長を語ってはいない。それに相応しきカリスマの将軍は力を持ってして黙らせる。
その方法は将軍の機械の左腕から変形したレーザー砲による見せしめ、通りかかったプレイヤーを一瞬のうちに消滅させてしまったのだ。
「こんなものはほんの手始めだ。我輩の身体には無数の武器が仕組まれておる。無闇に我輩を殺そうなどと思わないことだ、逆らえば貴様らの生意気な口も頭ごと消してやる」
「ぐっ……」
これを見せられては、強者の代表キッドとルシファー共々手出しが出来ない。雑兵アンドロイドだけなら軽く捻れるが、それを指揮する将軍がいる事で便乗効果で機能がグレードアップしているようにも見える。
そんな中で、ルシファーが手にした反機械転送装置『システムオーバーZZ』の起動パーツを将軍は見てしまった。
「おや、何かなその機械は?」
「ッ……!」
「言わなくても我輩には分かるぞ。この摩天楼の人間共が創り出した反機械転送装置の起動パーツであろう? それを貴様らゲーム戦士に手伝わすとは、大したボランティアだな!!」
既にスチール大将軍にバレていた。それどころかキッドらだけでなく、全地域にて15個の起動パーツを集めていることが全て将軍の耳に筒抜けであった。だがそれ以上に良からぬ展開が……
RRRRR……!
(アリスから……!!)
キッドとルシファー以外のチームには、この地獄を知る由もない。キッドの万能スマホ『プレイギア』から鳴る仲間からの着信。
「どうしたのだね、電話には直ぐに出るのが最低限のマナーであろう?」
「チッ……!」
権力を握るスチール大将軍を前にしては、変な考えは起こせない。潔く着信に出る。
「もしもし……?」
『あ、キッド? そっちはパーツ見つかった?』
「あぁ、一つだけどな」
『えぇ〜まだ一つぅ? こっちはナカターさん達と手伝って貰って六つも集まったもんね!』
二人が揉め合ってる中で、アリス達は既に半数ものパーツを確保していた。しかも誰一人とてノックダウンしてない順調ぶり。
『でね、ハリアーもツッチーもある程度集まったらしいから、今から皆で集まろうと思ってるの。キッドの所のEエリアに行くね!』
「はっ!? ちょっと待て、アリ……………最悪だ」
キッドの有無も言わさずに一方的に話してアリスは着信を切ってしまった。長年の縁から出た不覚である。
「これは傑作だ! 貴様らの仲間もそこに向かうのか。何人いるのだ?」
「……俺抜いて三人と、外部のヤツ三人」
「六人も来るのか。よし、この反逆者どもを連行しろ。人質にして反機械転送装置を破壊させるのだ」
〘◇Now Lording◇〙
――数分後、キッド率いるトリガーズと、配信ゲーム戦士三名が合流。その直後に目の当たりにした途端、先ず反応したリアクションは“絶句”。視聴者陣のみならず、外部で応援している天ちゃん琴ちゃんも同様。
再会した仲間の前で、キッドから一言あるようで。
「……アリス、着信するときは俺の話とか状況とか先ず察しような」
「…………反省してます」
「キッドはまだしもスゲェおまけも付いてるな」
「要はルシファーと喧嘩してるうちに、ショッ◯ーもどきに会ってこうなってもうた、と」
「ちょっ、ヤバいじゃ~ん! 典型的な悪役じゃん」
「よりにもよってキッドと“黒い稲妻”が人質とは……」
「おぉぉおおぉ麗しのキッドよぉぉおお〜〜!!」
それぞれが個性を出し、零れ落ちるは衝撃のリアクション。
こうして善玉戦士が揃いに揃ったが、集まった所で形勢は変わらず。群がるアンドロイド兵の中央には誇張していくスチール大将軍。そして彼の左腕には例の『デリートストリーム・レーザー』。
「野郎……!」
「おおっと動くな、ゲーム戦士共。変な動きをすれば此奴の命は無いぞ」
「典型的なワルモンやな」
「待って、だったらあたしが……」
と、アリスが傍らに仕組んでいたグレネードボムを取り出そうとするが、
『ヤ・メ・ロ、マ・ジ・デ・オ・レ・ラ・ガ・シ・ヌ!!』
「!!」
キッドが声を出さず、口の動きでアリスに必死に事の重大さを伝え、彼女の投擲物をしまわせた。そして彼女も皆に呼びかける。
「皆武器をしまって! キッドがマジでヤバい状況になってる!!」
「……アイツが言うなら、マジだな」
「くそったれぇ」
ハリアーのSMG、ツッチーのショットガンが降ろされ、それに連れて他のゲーム戦士も同様に武器を降ろす。土壇場で危険な状況に気付けた事で、一時は安堵するキッド。突きつけるレーザーガンは変わらず。
「フフフフ……聞き分けが良いゲーム戦士のようだな、貴様らの仲間とやらは」
「分かったらいい加減レーザー砲を突き付けるの止めてくれます? 鉄が冷えてて、ちべたい」
生と死の間に佇むキッド、この期に及んでも冗談にポーカーフェイスのセット定食。だが目は熱き眼差し、決して魂は死んでいない。
「そのちべたさも感じなくなるだろう。いい加減その減らず口も飽きた所だ。―――――――死ね」
レーザー砲の砲口から、粒子分解エネルギーが蓄積される……!!
「キッド!!!!」
万事休すか、せめて懐に隠したマグナムリボルバーで風穴でも開けてやろうか。死の瀬戸際に爪痕を残す覚悟で撃鉄に指を掛けた――――――その時。
「――――キャンキャンキャン!!」
「はぅわッッ!!?」
何と、突如修羅場にアンドロイド兵の包囲網を掻い潜って現れたのは野良犬。
それも小さな体で甲高い声で吠え立てる雑種の子犬にただならぬ反応を示したのが、スチール大将軍。鉄の身体を持つ男が、顔さえも鉄のように血の気を無くして震えてるではないか。
「ウヮヮヮヮヮ……ひ゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
「将軍様!!?」
子犬一匹に、まるで死神にでも取り憑かれたかのように怯え、乱心するスチール大将軍。
雑兵をも蹴散らし、あれよあれよと言う間にキッドとルシファーの拘束状態を解き、移動に使っていた巨大要塞のエンジンを起動する始末。
『兵士共! さっさとそのゲーム戦士共と………神の使いを殺してしまえ!! 我輩はお家帰るううううううう!!!』
「「「「ええええええええ!!!??」」」」
ガキ大将が中学生にメンチ切られた際の捨てゼリフを置いて、一人だけ撤退してしまったスチール大将軍。彼が操縦する要塞の舵が震える程に、自ら『神の使い』と称する子犬相手に血眼で逃げていったのだ。
「…………なんか知らんけど、助かっちゃった」
「何だったのだ? あのバカは」
キッドもルシファーも訳が分からずきょとんの表情。
そして残されるは、大将軍に置き去りにされたアンドロイド兵軍団。
「ほんじゃま、―――――今年1発目のハイライト、魅せてやりましょうか!!」
新年おめでとう、2023年! 初バトルはA.I.M.S、次回のスクランブルモード決着で飾りましょう!!
〘◇To be continued...◇〙
小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも下の「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を何卒お願い致します!
更には後書きと広告より下の評価ボタンでちょちょいと『★★★★★』の5つ星を付けて、作者やこの物語を盛り上げて下さいませ!
A.I.M.Sで登場させたい実物の名銃も、感想欄で募集します! 次回も宜しく!!




