【♯50】東京旅情、トリガーズに安らかな休息を。
――TIPS――
【地底空間・地上進出のルール】
原則、地底空間出身の者は二十歳になるまでは地上進出を許可されていない。
二十歳に満たす者、或いはゲームや地位的に上位に達する等厳正な検査を通過した者のみ、地底と地上の行き来が可能となる。
――キッドが地底空間の天井に設置された丸い出口を抜ければ、そこには鮮やかな青空と太陽が、苦難を耐え忍んだ者に恩恵を受ける。暖かなおもてなしだ。
そして彼が這い上がった地上は何処の辺りかと申しますと、
「――――明治神宮野球場か! シーズンもオフだしイベントも無いときは静かなもんだ」
明治神宮野球場。東京都新宿区の明治神宮外苑に位置する伝統的な球場である。ツバメのマークの野球チームの本拠地として有名ですね。
そもそもキッドが活動していた地底空間の所在地は、この東京・新宿の明治神宮野球場のド真ん中に位置する『イーストエリアTK18』というコードエリアである。
地底に住む人々らは、野球場のラッキーセブン時に鳴り響く東京音頭が、地面を伝って旧都まで届いて人々の耳に残り、いつの間にかその曲が地底空間のソウルソングとなったんだそうな。
それが今や、エレメント◇トリガーズのメイン応援歌となっているのだから面白い話だ。
今の季節は秋。明治神宮のイチョウ並木が黄金の如く葉を実らせ、並木道にはその落葉が辺り一面に広がり、その道は黄金色に染まっている。まさにゴールデンロードか、キッドは黄金並木道の真ん中で佇み歩く。その先には……
「遅かったじゃねーか、キッド!」
「こっちこっち~!」
「やっと四人揃うたな~!」
キッドを手ぐすね引いて待っていた、ハリアー・アリス・ツッチーの幼馴染三人。地底で毎回顔合わせている仲間だが、舞台が念願の地上となると、その出会いは格別に嬉しいものがある。
果てしない青空と太陽の下で、開放感のある地上には“自由”の二文字がよく似合う。
「悪いな皆、ちょっと動画編集してたら遅くなっちゃった。ちゃんと地上用の撮影カメラは持って来てる」
「動画作りも結構だが、今日は遊びに来てんだぜ。気楽に行こうや」
「ねぇねぇ、せっかくだからゲーセンとかカラオケも行ってみない?」
「今日は金のことは気にせんでえぇよ、飯もワテが全部奢ったるわ!」
「「「…………アンタ、ホンマにツッチー???」」」
「何や急に引き顔になりよって……」
「お前ほど人の金で飯食う奴はいないだろ」
「やべーよ、雨通り越して雪降るんじゃね?」
「あたし何のために3万卸してきたと思ってんの!」
「お前らワテの事何や思うとんねん! トリガー・ツール造ってやらへんぞ!」
「じょーだんだって! ……いやマジで!! そんな怖い目しないで何でもするから!!」
「「「ん? 今何でもするって」」」
いやはや、何とまぁ仲の良いトリガーズでしょうか。
茶番はそれくらいにしておいて、キッド達四人は新宿区を中心としてお買い物にゲーセン通いと大満喫。
アリスの洋服選びに付き添ったり、約束通り昼食はツッチーの奢りで寿司屋行ったりと、至れり尽くせりの東京旅。
皆キッドが地上に来ることを楽しみにしていたようで、まるで大学生活をエンジョイする若者のようにはしゃぎ回る四人。……あぁ、想像しただけで青春が蘇ってきます。
〘◇Now Lording◇〙
――新宿区から離れて、いつの間にやら東京23区の中で一位二位を争う裕福な地域と云われる千代田区まで来ていた。
スタ◯でテイクアウトしてきたフラペチーノやブレンドコーヒーを片手に、ドーナツを頬張りながら皇居東御苑で散歩するトリガーズ。
近未来の東京でも、一際“和”と自然の一体した風景が高貴に思えるこの場。遊び疲れて休憩と言った所か。
ある程度キッドの地上満喫の日記動画も取り終えて、御苑の庭で佇む。そんな中でハリアーが、ある話題を持ちかけた。
「なぁキッド、A.I.M.Sもあともーちょいで新シーズンが始まるって話じゃんか。その辺の準備はしてきたのか?」
「まーね。『ファイアーバード』のダメージ修正とか、新エリアの構成とか。公式サイトにプラスしてリーク情報である程度内容は掴めた」
FPSに限らず、様々なオンラインゲームを嗜む者は大型アップデートや、先程の新シーズンによるゲームの大幅な変更点を確認しなければならない。キッドのようなプロゲーマーの場合は、隅々まで研究するのが当たり前な域まで達している。
例えば、キッドが愛用している武器であるマグナムリボルバー『ファイアーバード』も、強力すぎる事からヘッドショットの確率を2倍から1.5倍に引き下げたという情報が新シーズンで明らかになった。これだけでも使い勝手が大きく変化していく。
「あとハリアーが使ってるSMGの『SS-1000』だっけか? あれも一発のダメージが18から16に減少するんだってよ」
「マジか! じゃワンマガでノックダウンしづらくなるな……」
一発の弾で2しか減少しないなら強さは変わらないと思ったそこの貴方、甘いですよ?
『SS-1000』はSMGの中でも最速の連射力を誇る小型マシンガン。一秒に18発撃てるという事は、敵に全弾当たればシールドを装備してもノックダウンは可能。
つまり、一発一発の被弾ダメージは蓄積されるが、ダメージが低かったり外したりすれば、ノックダウンに手間が掛かる。効率良い撃破が難しくなるのだ。
「じゃ、スナイパーライフルは?」
「ワテの得意なLMGやショットガンはどないやねん」
と、立て続けに質問を飛ばしてくるアリスとツッチー。各々の得意分野を調整されるのは宜しくない。
「いやそれらは特に変わった変更点は無いよ。その代わりまた新武器が20種くらい出るつってたから、そこは射撃訓練場で練習するんだな」
「なんか余計に複雑になってきたわよね、A.I.M.S」
「それだけ凝ったゲームならやり甲斐があるがな。もうプレデターのアホも粛清対象になった所やし、平和で結構なこっちゃ――――」
「ところが、A.I.M.Sは平和主義で運営する気は無いらしい」
「「「……………は???」」」
いきなり突拍子もない事を言うものだから、キッドの発言に全員が目が点になる。
「今回の新シーズン、【ヘビーメタル】は100人一斉のサバイバルバトルが主流じゃないんだと。代わりにこのシーズンの為に用意した『オープンワールド型ミッションゲーム』として俺達にある敵軍と戦わせるらしい」
「オープンワールドって……自由気ままにフィールドを行動できるってあれか!?」
「何かA.I.M.Sらしく無いわ」
「うんにゃ、恐らく基本要素として“ミッション”が大きな要になるんとちゃうか?」
「そう、そこ! ツッチーの言う通り、今回のシーズンの要はミッションだ」
「そんじゃ、プレイヤー同士の殺し合いって物騒なのは無くなるのか?」
「待って、キッドはさっき敵軍って言ってなかった?」
トリガーズの面々は全員冊子が良い。ツッチーに引き続きアリスも、核心迫った思考で答えを導き出した。
「お陰で説明する手間も省けらぁ。A.I.M.Sの運営側が創り出した仮想の軍人集団と、俺達ゲーム戦士が一眼となって戦うってコンセプトさ」
それは即ち――――【人口知能VSプレイヤー】、有機質と無機質の全面勝負。それが新シーズンのテーマ。
そしてキッドは万能スマホ・プレイギアからA.I.M.S公式サイトを開いて、プレイヤーが一致団結して戦う敵軍の名を皆に見せた。
「「「『鋼鉄の襲撃者』……!!?」」」
「そーゆー事! 俺等燃えるハートのゲーム戦士と、冷たく硬ーい部品ハートの敵と、果たしてどっちが強いのか……? 楽しみになってくるだろ!?」
恍惚に震えるキッドの遊戯好奇心。サラマンダーの魂は、再び彼の闘志を着火させるのだった……!!
〘◇To be continued...◇〙
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